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『地球』という言葉が禁句の異世界宙域で秘密の禁書を追う話。  作者: 綾坂真文
第四章:禁止惑星『グリムジャガー』編

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第43話 蒼黒の神殿と動く巨象(前編)

第四章:禁止惑星 『グリムジャガー』編

 小型船は波しぶきを抑えながら、静かな海を切り進んでいった。夜を越え、やがて遠くの水平線に小さな影が浮かび上がる。青く澄んだ海の中、見えてくる島、さらにその中央には不気味にそびえ立つ建造物が見えた。


「……あそこか」ミルトが呟く。


「あぁ、変わっちゃいないな。二千年前、シャクイガたちが首都の跡地に建てた神殿――『蒼黒(そうこく)の神殿』だ。くそ、まだ残ってやがったか……」イクサの声には憤りが滲む。

「ここからは注意して近付く。スピードを落とすぞ」


 アゲハが目を細め、首を傾げた。


「ねぇ……あそこって首都の跡地だったんでしょ? それにしては、神殿が建ってるだけで島の大きさは、さっきの孤島と大して変わらないように見えるけど……」

「沈んだんだよ。神殿の場所だけを残してな。もともとはもっと大きな島だった」

「……っ」アゲハの肩が落ちる。

「だから、暗い顔すんなって。今となっちゃ、海から直接神殿に近付けるんだ。だだっ広い陸を歩く必要もない。むしろ都合がいいくらいさ」イクサが軽く笑ってみせた。


 動力エンジンを抑え、船はゆっくりと島へ近付いていく。波は静かで、海鳥の声だけが響いた。


「……気配が感じられないな」ハリーが小さく言う。

「あぁ。最重要拠点として機能してるなら、見張りや兵がいて当然だが……見たところそういった類もいなさそうだ」ミルトの目が鋭く光る。

「砲台とかもねぇな。迎撃用の設備すら見当たらねぇ」コルトが腕を組む。

「やっぱり、もうこの場所からは撤退してるのかな……」ナコが不安そうに呟いた。

「どうだか。ジャコウが先に来て、もう片をつけちまってる可能性はあるがな」コルトの声は低い。

「イクサ。二千年前はどうだった?」ミルトが問いかける。

「兵隊がうじゃうじゃいやがったはずだ……。ちっ、とにかく岸に船をつける。上陸して確かめるしかないな」


 神殿の裏手の岸に船を寄せ、彼らは足を踏み入れた。潮風が頬を撫で、鳥の鳴き声だけが響く。


「本当に……誰もいないんだね」アゲハが小声で言った。

「表にまわってみよう」イクサが先頭を歩く。


 道中、邪魔立てするものは何もなかった。やがて正面に出た神殿は、巨大な石の門を構えながらも荒れ果て、門番らしき姿も影もなかった。


「もう、青色の結晶体はジャコウの手に渡ったのか……?」ミルトの言葉に、ハリーが眉を寄せる。

「さあな。確かに俺たちは遅れをとってる。その可能性もあるが……それにしては人が踏み込んだ痕跡がねぇ。銀河政府が誰かを送りこんでりゃ、戦闘が発生していてもおかしくはないはずだろ」コルトが答える。

「入ってみれば……わかる、か」


 彼らは神殿の奥へと足を踏み入れた。風が抜け、壁には長年の潮風で削られた跡が残る。まるで時が止まったかのように、人の気配は皆無だった。


 しばらく進むと、大きな広間へと出た。広く、何もない空間。

「きゃっ!」ナコが小さく悲鳴をあげる。


 皆の視線が一点に集まった。そこには――全長十五メートルはあろうかという石の巨象が鎮座していた。あぐらをかき、悠然と座るその姿は、ただの石像とは思えない威圧感を放っている。


「なんだ……こりゃ……ばかでけぇな」コルトが唸る。

「……こんなもの、俺は知らないぞ。いつ作りやがった」イクサの声には困惑が混じっていた。


 ナコが指差す。「あれ……顔、見て!」


 巨象の額、その中央には青く光り輝く結晶体が埋め込まれていた。


「おいおい……青色の結晶体じゃないか!」ミルトの声が響く。

「まだ光を失っていない……エネルギーは奪われてねぇってことか」

「ってことは、ジャコウはまだ来てないのか……?」ハリーが鋭く言葉を重ねる。


 その瞬間、地響きが広間を震わせた。石の床が鳴動し、島全体が揺れる。「うぉ、地震か!」

「大丈夫だ。海に飲まれてから、残った陸地は時折揺れる。おそらくその類だろう」イクサの説明どおり、揺れはすぐに収まった。


「ふぅ……とにかく、青色の結晶体を回収しちまおう」イクサが巨象に近付こうとする。


 だが、ナコが不思議そうに声を上げた。

「ねぇ……あの巨象……右手って、上がってたっけ?」


 皆の視線が集中する。巨象は右肘を持ち上げ、掌をこちらに向けていた。

「……どうだったかな? 最初からそうだったような……」ハリーが眉をひそめる。


 再び地鳴り。島が揺れ、またすぐに収まる。

「うぉっ、またか! こりゃさっさとここからは退散した方が良さそうだな――」コルトが言いかけたその時。


「……ねぇ! あの巨象……さっきまで座ってた、よね……」ナコの声が震える。


 目の前の巨象は――あぐらをかいていたはずの姿から変わり、仁王立ちしていた。

 その石の目が、蒼く妖しく光り輝く。


「待て……待て待て待て待て! 嘘だろ!」


 次の瞬間、巨象は轟音とともに拳を振り下ろした。石とは思えぬ速度で。

 広間に衝撃が走り、ナコたちは咄嗟に散開する!


 石の拳が床を砕き、破片と砂塵が弾け飛んだ――!

第44話『蒼黒の神殿と動く巨象(中編)』に続く。

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