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『地球』という言葉が禁句の異世界宙域で秘密の禁書を追う話。  作者: 綾坂真文
第四章:禁止惑星『グリムジャガー』編

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第40話 大海原へ(前編)

第四章:禁止惑星 『グリムジャガー』編

 「もういいのか?」

 ミルトが、まだ赤く充血した目をしている青年に優しく声をかけた。


 白骨化した“じいちゃん”を丁寧に埋葬し、洞窟の一角に静かに手を合わせた青年は、深く息をつきながらゆっくりと立ち上がった。


「……そりゃあ、自分が人造人間で、目が覚めたら二千年も経っていたなんて、簡単には受け入れられないさ。けどよ……」


 青年は拳を握りしめ、苦笑するように目を伏せた。

「同時に、あまりにも突拍子もなさすぎて……意外と冷静に受け入れてる自分もいる」


 ナコが不安げに口を開きかけたが、青年は先を続けた。


「それに、今のこの星……グリムジャガーがどうなってるのか、確認したい」


 ミルトは少し躊躇したが、頷き、今までの経緯をかいつまんで説明した。墜落してきたこと、結晶体の存在、そしてジャコウと銀河政府の事。


 話を聞き終えた青年は、静かに目を閉じてから口を開いた。


「なるほどな。……いいだろう。俺も結晶体がどうなっているのか知りたい。あんたらの目的もそこにあるのなら、案内してやる」

「場所がわかるのか?」ミルトが訊く。

「あぁ。燃やし尽くされた首都の跡地だ。変わってなければ……奴らがそこに神殿を作ってるはずだ」


 言葉を区切った青年は、ふとナコに視線を向ける。


「それと……ねぇちゃん」

「え、わ、わたし?」

「さっきの魔杖銃、ちょっと貸してくれないか」


 ナコが戸惑いながらも魔杖銃を手渡すと、青年はそれをしっかりと持ち、じっと観察する。やがて持ち手の近くに埋め込まれた小さな球を指で押し、取り外した。


「やっぱりだ。じいちゃんが研究してたものに近い……待ってな」


 そう言って、朽ちた研究所の隅へ歩き、瓦礫をかき分ける。やがて、不思議な光を放つ丸い鉱石を手に戻ってきた。

「これだ……ここに、よっと」


 取り外した穴へその鉱石をはめ込むと、青年は魔杖銃をナコに差し出した。

「ほいよ。人のいない方向に向かって、振ってみな」


 ナコは恐る恐る両手で構え、大きく横に振った。

 その瞬間、周囲の風が一気に吸い寄せられ、鋭い刃のような突風が空間を切り裂く。


「きゃっ……な、なにこれ! すごい!」


「カマイタチだ」青年は満足そうに頷いた。

「力の使い方に慣れれば、もっと強い風を起こせるようになる。さっき言ったろ、じいちゃんは自然エネルギーを増幅して、誰でも使えるようにするデバイスを研究してた。今はめ込んだのは風の力の鉱石だ。他にも、自然の力が集まる場所があれば……水とか炎とか、いろんな鉱石が作れる」


「……すごい」ナコは感嘆の声を漏らした。


「やつらとやり合うなら戦いは避けられない。その力、役立ててくれ」

「……ありがとう」ナコは強く握りしめた。


「っと、それとは別に……首都の跡地まで行くなら、船がいるな。ついてこい」


 青年が歩き出し、一行はさらに洞窟の奥へ進む。やがて湿った岩肌の先に光が差し込み、波の音が近づいた。そこは海へと繋がる広間で、小型の船が静かに浮かんでいた。


「これ……」ナコが目を丸くする。


「動力型の小型船だ。じいちゃんのお手製だぜ。動けばいいけど……」

 青年は軽やかに乗り込み、慣れた手つきで操作盤を叩いた。しばしの沈黙の後、機関部が低く唸りをあげる。

「……お、動いた。うん、何の問題もなさそうだ。さすがじいちゃん」


 ミルトは船体を見回しながら呟いた。

「動力式の小型船か……やはりグリムジャガーは、もとは文明も発展していたいい星だったんだな」


 青年はミルトたちを手招きし、ナコとハリーも次々に船へ乗り込む。


「一旦このまま海に出る。あんたらの仲間は浜辺だろ? まずは合流だ」

「あぁ、助かる」


「……っと、そういやまだ名乗ってなかったな」


 青年は振り返り、静かに言った。

「俺の名前はイクサ」

「俺はミルトだ。……そして」

「ハリーだ」

「ナコです」


 小さな自己紹介が交わされると、青年は口元をわずかに緩めた。

「よし、それじゃあ行こうか」


 小型船は白いしぶきを上げ、ゆっくりと洞窟を抜けて、広大な海原へ滑り出していった。

第41話『大海原へ(中編)』に続く。


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