第38話 取り残された青年(前編)
第四章:禁止惑星 『グリムジャガー』編
ネイビーブルーの髪をした青年は、鋭い視線でミルトを見据えた。
「おおかた、じいちゃんの研究資料を狙ってきたんだろ。絶対に渡さない! 特にお前らシャクイガの仲間たちにはな」
「シャクイガだとっ……!」ミルトが思わず声を荒げた瞬間、青年の拳が閃光のように飛んできた。
速い。拳ひとつひとつが鉄塊のように重い。
ミルトは強化手甲で拳を弾き、回転しながら足技をかわす。続けざま、裏拳を振るうが、青年は受け流し、間断なく次の攻撃を畳み掛けてくる。
わずかな隙を突かれ、青年の拳がミルトの腹を打ち抜いた。衝撃が内臓を揺らし、ミルトは岩壁に叩きつけられる。
「くっ……!」
咄嗟にハリーが銃を抜き、連射を浴びせた。だが青年は弾丸を目にも止まらぬ速さでかわし、一直線にハリーへと走り込む。
その横からナコが魔杖銃を構え、引き金を引いた。
光弾が洞窟を照らし、青年の動きが一瞬止まる。完全には避けきれず、青年は両腕を交差させてそれを防御した。
「……魔杖銃……なんで」
言葉が漏れた瞬間、背後からミルトが飛びかかり、青年の両腕を羽交い絞めにした。
「ぐっ……!」青年の動きが止まる。
ハリーが銃を構え、距離を詰める。
「勝負ありだな」
青年はなおも暴れようとしたが、そこにミルトが低く問い掛ける。
「シャクイガと言っていたな。なぜその名前を知っている?」
シャクイガ。その名は、かつてストラトバティスの映像で目にした二千年前の科学者の名前。
「あんたらは違うのか?」青年が荒い息のまま口を開いた。
「我々の知っているシャクイガは、二千年前の科学者だ」ミルトが応じる。
「二千年前っ!? ……んだよ、どういうことだ」青年の声に動揺が滲む。
「できれば俺たちは情報交換がしたい」ミルトが言葉を重ねた瞬間、青年は力を振り絞り、ミルトの腕を振りほどいた。
「じいちゃん! じいちゃん!」
青年は叫びながら、洞窟の奥の扉へ駆け込む。
三人も追うように走り出す。扉を開け放った先には、朽ち果てた研究施設のような光景が広がっていた。壁はひび割れ、機器は錆びつき、床には古い紙片や破損した器具が散乱している。
青年は奥の部屋へ飛び込み、膝をついて立ちすくんだ。
「じ……じいちゃ、じいちゃん……」
その視線の先、大きな机と背後の書棚の前には、白骨化した亡骸が座っていた。
「どういうこと……」ナコが小さく呟く。
「どういうことだって……こっちが聞きたい! おい、お前ら、どうなってる。今はいつだ? この星の状況は? シャクイガはどうなった!」
青年の声は嗚咽を混じえ、必死に縋るように響いた。
ハリーが静かに歩み寄り、青年の肩に手を置いた。
「落ち着け。まずは目の前の亡骸に……手を合わせてやれ」
青年は震える手で顔を覆い、涙をこぼしながら、亡骸の前で深く頭を垂れた。
第39話『取り残された青年(後編)』に続く。




