第31話 交錯する思惑(後編)
第三章:禁止惑星 『リムスタング』編
ギィン、と火花を散らし、ドギガイズの希少鉱物の剣がヒョウガのガンブレードを弾き返す。
「ふん!」と鼻を鳴らすや、机の横にある隠しボタンを叩いた。
次の瞬間、ドグマタワー全域にけたたましい警報音が鳴り響き、階下から無数の足音が一斉に駆け上がってくる。
「ふん、面白い! ならば私自らが貴様らを血祭りにしてやるわぁぁッ!」
異様なまでの威圧感。ドギガイズの目は据わり、剣にはドーム中央の黄色結晶体から吸い上げたかのようなエネルギーが奔流のように流れ込んでいく。
「まさか……結晶体からエネルギーを吸収してるのか!」コルトが叫ぶ。
地を割るような衝撃と共に振り抜かれた剣閃が、ヒョウガの胸元を直撃した。
「ぐはッ!」
血飛沫を散らし、ヒョウガの身体は壁際まで吹き飛ばされた。
「ヒョウガ!」援護に走ろうとするコルトとアゲハ。しかし、その前に雪崩れ込むように警備兵が部屋へ突入し、無言のまま刃を振るって襲いかかる。
「くそッ!」コルトは兵の剣を払い、至近距離から電磁銃を撃ち込む。アゲハも二丁拳銃を回転させ、兵の剣筋をかい潜りながら応戦するが、数は増えるばかり。
一方その頃、ヒョウガの目前に迫るのは異様なエネルギーを纏ったドギガイズ。
「死ねェェェッ!」
振り下ろされた剣に咄嗟にガンブレードを合わせたが、力の差は歴然。火花とともに弾き飛ばされ、ガンブレードは床を滑った。
「ぐッ……!」必死に身を捻るが、容赦なく繰り出される斬撃がヒョウガの肩や脇腹を切り刻んでいく。
致命傷を覚悟した瞬間――。
ガキィン、と金属音。ドギガイズの剣筋が、横合いから弾かれた。
怯んだドギガイズの腹部へ、黒光りする銃口が突きつけられる。「っ……!」
轟音。パイレーツピストルの弾丸が撃ち込まれ、ドギガイズの巨体がわずかに後退する。しかし、その装甲のような肉体には浅い傷しか刻めていない。
ヒョウガの前に立ちはだかる海賊帽の男。
「何者だ……貴様」ドギガイズが唸る。
「何者だ、ね……そりゃ覚えてねぇだろうな。貴様らはぁぁっ」
ヒューベルトはそれ以上言葉を費やさず、踏み込みざまにカットラスを閃かせた。目にも止まらぬ剣閃が幾度も繰り出され、ドギガイズもそれを受け止め、金属音が連続する。
その壮絶な攻防を、傷だらけの身体で見上げるヒョウガ。その側に、ひとりの少年が膝をついた。
「お、お前……ルクスか……なぜここに……」
「今は喋らない方がいいよ。応急処置をするから、我慢して」
ルクスの手際は鮮やかだった。止血と薬剤の注入。ヒョウガは呻きながらも、少年の言葉に従った。
一方、前線で兵と刃を交えるコルトとアゲハ。
「くそッ……無限に湧いてくる!」アゲハの頬には汗と血が混じっていた。
一瞬の隙を突かれ、兵の剣がアゲハへ迫る。
「危ねぇッ!」コルトが叫んだが、間に合わない。
次の瞬間、その兵は壁際まで蹴り飛ばされていた。
「またせたなッ!」
ミルト、ハリー、ナコが最上階に飛び込んできた。続いて『蒸気の狼煙』の若き精鋭たちも雪崩れ込み、次々と兵を薙ぎ倒す。
「へ、おせぇぞお前ら! よっしゃ、もうひと踏ん張りだ! 兵は殺すな、気絶させろ! いくぞ、みんなッ!」
叫びとともに仲間たちが戦列に加わり、膨れ上がる兵の波を押し返していった。
その奥では、なおも激闘が続いていた。
ヒューベルトはドギガイズの剣戟を正確に弾き、身体を捻り、カットラスで逆襲する。鋭い一撃がドギガイズの肩を裂き、続けざまに撃ち放ったパイレーツピストルの弾丸が腕を撃ち抜いた。
「ぐッ……!」剣が床に転がる。
ヒューベルトのカットラスが一閃し、ドギガイズの胴を深々と抉る。血飛沫が宙に舞った。
そして、そのまま首を斬り落とそうと振り下ろした瞬間――。
「ぬぅぅぅッ!」
瀕死のドギガイズが渾身の力で横にある制御装置を叩き割った。
ドーム状の円柱が軋みを上げ、黄色の結晶体から膨大なエネルギーが漏れ出す。
「アイツ……何しやがった!」コルトが絶叫した。
床に転がっていた剣を掴み上げ、ドギガイズは溢れ出すエネルギーを際限なく取り込み始める。筋肉が異様に膨張し、肌は裂け、光が滲み出る。「ち、この……バケモノがぁ!」
圧倒的な風圧。ヒューベルトでさえ踏み込めず、歯噛みする。
そして、ドギガイズが完全に怪物へと変貌を遂げようとしたその瞬間――。
シュバァッ、と空気を裂く音。
黒い鎌のようなものが一直線に飛来し、ドギガイズの首を刎ね飛ばした。
第32話『灰色装束の男(前編)』に続く。




