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『地球』という言葉が禁句の異世界宙域で秘密の禁書を追う話。  作者: 綾坂真文
第三章:禁止惑星『リムスタング』編

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第30話 交錯する思惑(中編)

第三章:禁止惑星 『リムスタング』編

 巨獣が地鳴りのような咆哮を上げ、六十階の床を震わせた。

「来るぞッ!」コルトの声と同時に、六本の腕が嵐のように振り下ろされる。


 コルトは電磁銃を連射し、アゲハは床を転がりながら二丁のブーメラン型銃を撃ち込んだ。光弾が巨獣の胸や腕に炸裂し、黒煙を散らす。しかし、巨獣の進撃を止めるには至らない。


「効いてねぇのかよ……!」コルトが舌打ちした瞬間、鋭い牙がヒョウガへ襲いかかる。

「クソがッ!」咄嗟にガンブレードを逆手に構え、巨獣の牙を受け止めた。火花が散り、刹那ごとに押し込まれる。ほんの一瞬でも気を抜けば、喉笛を食い千切られる。


「こんのバケモンがぁぁッ!」

 コルトが最大出力でテーラー銃を撃ち込んだ。轟音と共に光束が巨獣の胴を貫き、一瞬怯んだ隙に、ヒョウガが左手の小型銃を抜いて至近距離から眼球へ撃ち込む。血しぶきが飛び、続けざまにガンブレードを横薙ぎに振り抜いた。巨獣の肉が裂け、鮮血が床を染める。


「続くわッ!」

 アゲハが裂け目を狙い、二丁の銃を連射。光弾が傷口を抉り、巨獣の巨体を後退させた。


「……ほう」

 ドギガイズの目に、わずかに愉悦の色が浮かぶ。面白い玩具を見つけたとでも言いたげな表情だ。


 だが巨獣は倒れない。逆に傷を負った怒りに奮え立ち、咆哮を轟かせると、六本の腕が風を裂き、鋭い爪が三人を狙った。


「くそッ……マジかよ! 俺たちの攻撃をもろともしてねぇ……!」


 コルトが身を翻しながら歯噛みする。

「散れッ!」叫ぶや否や、三人は再び四方に飛び退いた。巨獣の爪が床を引き裂き、石片が弾丸のように飛び散る。


「どうする……くッ、このままじゃ全滅だ! 考えろ……何か方法があるはずだ……!」

 巨獣の攻撃を避けつつ、コルトは必死に頭を働かせた。その時――腰のポーチの中で、赤色の結晶体が鈍く光った。


「まさか……!」


 結晶体を取り出すと、失われていたはずの光がわずかに戻っていた。同時に、部屋中央の黄色の結晶体が呼応するように輝きを増す。

「同じエネルギー体に反応してる……のか? なら、切り札になってくれよ!」


 コルトは息を整え、叫んだ。

「一瞬でいいッ! 巨獣の動きを止めてくれ!」


 その声に応じ、ヒョウガが巨獣の足へ斬り込み、アゲハは跳躍しながら弾丸を再び巨獣の眼に連射する。

「グガァァァッ!」怯んだ!


「くたばりやがれぇぇぇ!」

 コルトは光を帯びた赤色の結晶体を巨獣めがけて投げ込んだ。


 結晶が触れた瞬間、赤い輝きは爆炎へと変貌した。地獄の業火が巨獣を包み込み、咆哮は断末魔へと変わる。巨体がのたうち、六十階の床が震える。


 やがて巨獣は灰となり、炎に呑まれて消えた。床に転がる赤色の結晶体は、再び光を失っていた。


「バ、バカな……!」

 余裕の笑みを浮かべていたドギガイズの顔に、初めて焦りの色が走った。


「次はお前だぁぁッ!」

 ヒョウガが吼え、ガンブレードを振りかざして駆ける。


「バ、バカめ! 無駄だ! 私の前にはエネルギー障壁が――」


「さようならっと」

 突如、場違いなほど明るい少年の声が響いた。次の瞬間、後方から飛来したダーツが障壁に突き刺さる。触れた途端、障壁はガラスのように粉々に砕け散った。


「うぉぉぉぉッ!」

 ヒョウガのガンブレードがドギガイズへと迫る。だが――。


 金属がぶつかる衝撃音。ドギガイズは腰の鞘から希少鉱物(レアメタル)の剣を抜き放ち、ガンブレードを弾き返した。

第31話『交錯する思惑(後編)』に続く。

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