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『地球』という言葉が禁句の異世界宙域で秘密の禁書を追う話。  作者: 綾坂真文
第三章:禁止惑星『リムスタング』編

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第27話 ドグマタワーの交戦(中編)

第三章:禁止惑星 『リムスタング』編

 ワイヤーフックを伝い、ドグマタワー裏手の外階段に滑り込んだナコたちは、音を殺して足を運んだ。外階段は非常時にのみ使用されるため、もともと警備兵の数は少ない。蒸気機関車庫の爆破によって周囲の警備も手薄になっており、残っていた兵をハリーの気配察知と俊敏な動きで一人ずつ気絶させながら、ナコたちは静かに下層へと降りていった。


 幸い大きな問題もなく、囚われた人たちが収監されていると言われている地下二階区画に辿り着く。扉をゆっくりと開けると、三人の視界に広がった光景は、想像を超えたものだった。

「……これは」ナコが息を呑む。


 そこに広がっていたのは、無限に続くかのような荒れ果てた砂地だった。地面には掘削工具やブルーシートが散乱し、壁も削り取られた痕跡が生々しく残っている。人の手で整備された区画というより、何かを発掘するための現場そのもの。


 そして、その中心に口を開ける大穴。

 大穴の周囲は、特殊金属製の円柱がドーム状に取り囲んでおり、その柱は天を突くように伸び、タワーの最上階へと繋がっているかのようだった。


「不可侵の領域……地底大空洞。無尽蔵のエネルギーが渦巻く……希少鉱物(レアメタル)

 ヒョウガから聞いた言葉が、ナコの脳裏に甦る。


「まさか……この円柱を通して、地底大空洞のエネルギーを汲み上げているのか」

 ハリーの低い声が響いた。


「そして……そのエネルギーが生み出す希少鉱物(レアメタル)を、連れ去ったリムスタングの人たちを使って、ひたすら掘らせているということか……」ミルトが苦々しげに呟いた。


 視線の先、奥には鉄格子の牢屋がいくつも並んでいた。十数人ずつが押し込められた牢屋の中で、人々は痩せ細り、荒れた砂地に直接身を横たえている。彼らは朝になれば強制的に掘削に駆り出されるのだろう。その劣悪な環境が、目の前の光景すべてから滲み出ていた。


「なんてことだ……この星の人間を、なんだと思ってやがる」

 ハリーの拳がわななく。


「助けよう!」

 ナコが駆け出そうとした、その時だった。


「こんな夜中に客人たぁ……礼儀の知らねぇ連中だなぁ。これだから下等惑星の人間どもは。大人しく虫けらみてぇに俺様たちに使われてりゃいいんだよ」


 牢屋の前に、二人の巨漢が立ちはだかっていた。醜悪な肉を喰らいながら、不遜に笑うその姿。牢屋の中のやせ細った人たちと対照的に、異様なまでに膨れ上がった肉体は、この場の惨状をさらに際立たせていた。


「俺様たちの飯の邪魔をしたんだ。誰だか知らねぇがぶち殺してやる!」

 ひとりが傍らに立てかけていた巨大な斧を振り上げ、襲い掛かってきた。


「速い……!」

 巨漢の質量からは考えられない速度。間一髪でナコたちは身を翻す。


 だがもう一人が、奇声を上げながら巨大なハンマーを振り下ろしてきた。「ウガァァァァ! グギィィ!」

 その動きは獣そのもの。


 ナコの脳裏に、ストラトバティスで対峙した“鬼”の姿が閃く。

「これ……この巨漢、スピード……鬼!?」


「ストラトバティスのものとは違うが、人体実験を施されているのは確実だな。この巨体でこの速さ、尋常じゃない!」ハリーが叫ぶ。


「二千年前の鬼とは別だろう。だがこいつらは……より進化した実験の産物なのかもしれん!」ミルトの声は怒気を孕んでいた。


 ハリーは愛用の銃を放ち、ミルトは「蒸気の狼煙(じょうきののろし)」から譲り受けたノワリクト製強化手甲で、巨漢の足へ打撃を加える。確かに効き目はある。しかし巨漢たちは斧とハンマーで銃弾を弾き、縦横無尽に襲い掛かってくる。


 ナコは同じく「蒸気の狼煙(じょうきののろし)」から譲り受けた魔杖銃(まじょうじゅう)を構え、後方から援護する。だが撃ち込む弾は、すべて弾かれ、返す斧の一撃をかわすだけで精いっぱいだった。


 撃ち込んでは、身体を捻り、相手の攻撃をかわす、隙を突こうにも巨漢のスピードが速く、避けるのが精一杯だ。瞬間、ナコは足下の荒れ地に転がる工具に足を取られた。


「くっ……!」

 態勢を崩したナコへ、巨漢のハンマーが振り下ろされる。


 ――その瞬間!

第28話『ドグマタワーの交戦(後編)』に続く。

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