第26話 ドグマタワーの交戦(前編)
第三章:禁止惑星 『リムスタング』編
夜の帳が街を覆い、人工灯の下にきらめくドグマタワーは、なお一層異様な輝きを放っていた。
ヒョウガ率いる『蒸気の狼煙』の精鋭とコルトたちは、闇に紛れ、静かに決行の時を迎えていた。
三手に分かれた作戦。
タワー横の蒸気機関車庫に潜入した『蒸気の狼煙』の若者たちは、緊張に汗ばむ手で爆薬を設置し、最後の導線を確認する。
「……行け」ヒョウガの通信が小さく響く。
次の瞬間、轟音とともに炎が弾け、車庫の鉄骨が揺れ、黒煙が空を覆った。
「おい! なんだ、爆発かっ」
「蒸気機関車庫方向だ! 燃えてるぞ!」
「急げ! 消防班を呼んでこい」
夜の闇に燃え盛る炎と爆音がドグマタワーの警備班に一時の混乱をもたらす。
その爆音を合図に、ナコ、ハリー、ミルトは建物の屋上からワイヤーフックを飛ばし、火花を散らしながらドグマタワー裏手の外階段へ滑り込む。影のように身を低くして二階部分へ侵入すると、三人は即座に地下へと続くルートを探し出し、下層区域の囚われた人々の救出へと動き出した。
一方、ヒョウガ、コルト、アゲハの三人は、『蒸気の狼煙』が調達したドギガイズの部隊の制服を身にまとい、正面玄関から悠然と足を踏み入れる。爆破による混乱で騒然とする兵たちの視線をかいくぐり、まるで当然のように内部へ進むと、最初の目的地であるセキュリティ管制室へと到達した。
中にいた二名の兵士は、不意を突かれて沈黙する。
「よし、探すぞ」ヒョウガの短い指示に、アゲハは引き出しを漁り、ヒョウガは気絶した兵士のポケットを探る。
その横でコルトは端末を素早く操作し、防犯カメラの映像をダミーに切り替えていく。
「へっ、銀河軌道線システム技師をなめんなよ こんなの朝飯前だ」
順調に事は進んでいる。そう思った矢先、管制室の扉が勢いよく開き、鋭い声が飛んだ。
「貴様ら、何をしている 誰の命令だ」
制服の階級章が照らされる――一等兵、名はゲルグ。管制室の責任者だ。
「管制室の責任者か……ならば持っているな、エレベーターの認証キーを!」
ヒョウガが叫ぶや否や、懐のシャープネス小型銃を抜き、迷いなく引き金を引いた。
だが放たれた弾丸は、ゲルグの構えたシールド型大型銃に火花を散らして弾かれる。
「甘いッ!」怒号とともに、ゲルグの銃口がヒョウガに向けられる。
至近距離から放たれた弾丸が、ヒョウガの胸を撃ち抜かんと迫った――
その瞬間、甲高い金属音。
飛来したブーメラン型の銃が弾丸を逸らし、火花を散らした。
続けざまに別の銃口から閃光が走り、ゲルグの肩を撃ち抜く。
「アゲハ……!」
両手にブーメラン型の二丁拳銃を握ったアゲハが、鋭い眼差しでゲルグを見据えていた。
作戦前、ドグマタワーでの交戦を見越して、コルト達は全員『蒸気の狼煙』が長年かけてドギガイズの兵隊から奪ったノワリクト製の武器を選んでいた。
自身に一番しっくりくるもの、扱いやすい武器を選び、懐に収める。
戦闘未経験だったナコとアゲハは、それぞれが色々と試し、ヒョウガが適性を見極めたうえで、手に取った武器の簡単な手ほどきを受けていた。
「やるじゃねぇか、小娘……!」
ゲルグは歯を食いしばり、銃口を向け直す。
だがヒョウガが一歩踏み込み、ガンブレードを閃かせてシールドごと弾き飛ばす。
壁に叩きつけられ、怯んだゲルグの額に、すかさずコルトの電磁銃が突き付けられた。
「……動くな」
引き金を引くと同時に、もう片手のテーザー銃を撃ち込む。
ゲルグは白目を剥き、その場に崩れ落ちた。
「時間がねぇ……!」ヒョウガが声を荒げる。
コルトはゲルグのポケットを探り、冷たい金属片を引き抜いた。
「……認証キー、確保だ!」
三人は迷わず管制室を飛び出し、奥のエレベーターへと走った。
その行く先には、ドギガイズが待つ最上階がある。
――そして、同じ頃。
タワー裏手の地下へと続く暗い通路を、ナコ、ハリー、ミルトの三人もまた、囚われた人たちの元へと向かっていた。
第27話『ドグマタワーの交戦(中編)』に続く。




