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『地球』という言葉が禁句の異世界宙域で秘密の禁書を追う話。  作者: 綾坂真文
第三章:禁止惑星『リムスタング』編

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第25話 リムスタングの狂気(後編)

第三章:禁止惑星 『リムスタング』編

 コルトは腕を組み、静かに問いかけた。

「それで……リムスタングは今、どうなってる?」


 ヒョウガは背もたれに深く腰を沈め、鋭い眼差しを向けてきた。

「現在のリムスタングはノワリクト政府の管理下にある。だが実際の支配者は『執政官』と呼ばれるドギガイズだ。あの街の真ん中に聳え立つ、悪趣味なまでに光り輝く巨大なドグマタワーを根城としている」


「ドグマタワー……」ナコが小さくつぶやく。


「もともとあの場所は、神聖な地とされてきた不可侵の領域……地底大空洞の真上だった。十年ほど前だ、突然、空から多数の飛行物体が現れてね。人々は恐怖したよ。今までこの星の人間がそんなものを目にしたことはなかったからな」


「禁止惑星への干渉は名の通り重罪だ。本来なら、宇宙からの接触などあってはならないだろう」ミルトが頷きながら声を出した。


 ヒョウガは低く吐き出すように続ける。

「あぁ……だが奴らは躊躇なく街の一部を焼き尽くし、人々を跪かせた。そして不可侵の大空洞の前でこう宣言したのさ――『今からこの星は私の管理下となる。全ての法は私だ。逆らうものは粛清する』とな」


 アゲハは拳を握りしめた。

「なんてことを……」


「それからだ。住人たちは強制的に連行され、タワー建設のために奴隷のように酷使された。無茶な労働で何百人もが命を落とした。だが、やつらはおかまいなしだ。まるで虫けらを扱うように人々を苦しめ、そして七年前、あの悪趣味なタワーは完成した」


 ヒョウガの声は怒りを抑え込むように震えていた。

「完成してからも圧政は続いた。奴に忠誠を示さなければ粛清。街の屋台や露店の賑わいは見せかけにすぎない。裏では密告が飛び交い、誰もが誰かを売ることで生き延びようとしている。忠誠を誓わぬ者を売れば報奨金が与えられ、そして奴の認可を得た“忠誠者”と見なされる。異様なまでの狂信……あれは恐怖によって形づくられた洗脳だ」


「重税、強制労働、そして連れていかれた人間の一部は、非人道の人体実験の被検体とされているとも言われている」


 ハリーが口を開いた。


「ちっ、むごいことを……銀河政府はなぜ黙ってる? いくら奴が銀河政府筆頭四人衆のひとりだからとて、ここまでの圧政が許されるのか?」


「もともと大空洞には希少鉱物(レアメタル)が多く生成されるんだ。地下にはとてつもないエネルギーが渦巻いていて、そのエネルギーは無尽蔵とも言われている。ノワリクト政府にとっては格好の供給地だ。禁止惑星とされているならなおさら、秘密裏に搾取するにはうってつけの地なんだろう」


 ナコが目を見開いた。

「とてつもないエネルギー……あの、ストラトバティスでの赤い結晶体に近いもの、なのかな……」


「なるほどな」コルトは唸るように言った。「だから銀河政府も黙認しているってわけか」


 ヒョウガは一瞬、目を伏せ、それから強い声で言った。

「ここにいる『蒸気の狼煙(じょうきののろし)』の連中は、ほとんどが家族や大切な人をドギガイズに奪われた者たちだ。俺も例外ではない。十年前、あの兵隊どもに親父を殺された。最後まで抗おうとした親父だった……それ以来、俺は機をうかがいながら仲間を集め、奴らから武器を奪い、潜伏を続けてきた」


 コルトは黙って聞きながら、重く頷く。

「お前たちの目的は?」


「決まってる。タワーに囚われている人々を解放することだ。そのためにずっと準備を重ねてきた。そして機は――今、熟している」


 その言葉に、空気がぴんと張り詰めた。


 コルトは口の端を上げる。

「なるほど、だが、助け出したあとはどうする? ドギガイズをどうにかしねぇ限り、また同じことが繰り返されるだけだろ」


 ヒョウガは短く答えた。

「ドギガイズの首も獲るさ」


「できるのか?」コルトの視線が鋭さを増す。


「やるしかないだろう」


 数秒の沈黙。やがてコルトは鼻を鳴らした。

「……オーケーだ。どっちにしろ俺たちの目的も、タワーにありそうだ。地下大空洞のエネルギーの塊、ね。きな臭いったらねぇな。色々と準備、できてるんだろ?」


 ヒョウガの口元がわずかにほころんだ。

「……作戦はこうだ」

第26話『ドグマタワーの交戦(前編)』に続く。

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