第22話 リムスタングと白キ戦艦
第三章:禁止惑星 『リムスタング』編
リムスタングへの航行も終盤に差し掛かり、車内には微かな緊張と倦怠の入り混じった空気が漂っていた。宇宙食を食べるもの、銃を手入れしているもの、仮眠をとっているもの。
それぞれが自由に過ごし、リムスタングへの到着を待っている。
窓の外には、幻想的な風景を作り出す流れ星が輝いていたが、その光に混じって一瞬、遠くで大きな白い光の筋が見えたような気がした。
その時だった。
ッ――――!
急激な振動と爆発音が銀河鉄道を大きく揺らした。鉄の車体が悲鳴をあげ、各車両で警告音が一斉に鳴り響く。
「何だっ!」
睡眠を取っていたコルトが飛び起き、先頭車両の動力運転室へ駆け込む。
続けてナコ、アゲハ、ハリー、ミルトらも息を切らしながらすぐに先頭車両の扉を開けた。
赤い警報ランプが車内を断続的に照らし出し、不安を煽っている。
「映像出力だ!」コルトが叫ぶと同時に、ミルトが即座に端末を操作する。外界の様子がホログラムとして投影され、遠くの宙域で、凄まじい閃光が連続して走り、幾筋もの光が交錯している映像が映し出された。
「映像を最大まで近付けろ!」
映し出されたのは――リムスタングの周辺宙域で繰り広げられる、複数の宇宙戦艦同士の熾烈な交戦だった。
「何だってんだ……なんで交戦してやがる」
コルトが唸ると、ハリーが映像内の戦艦の装甲を指差した。
「おい、あの刻印っ!」
「拡大しろ!」コルトが目を凝らす。
「ノワリクト銀河政府宙域軍事治安維持部隊……銀河政府中央政権筆頭四人衆の一人、銀河治安主席執政官・ドギガイズの部隊だ」ミルトが呟いた。
「おいおい……リムスタングは禁止惑星じゃなかったのかよ! どうなってやがる。相手は誰だ?」
次の瞬間、視界の端に映り込んだ真白の影に全員が息を呑む。
戦場の只中を圧倒的な存在感で切り裂く、真っ白の巨大戦艦――その質量感は遠距離からの映像でさえ異様なまでの威圧感を放っていた。
「ありゃ……まさか、白キ戦艦……か!」ハリーがかすれた声を漏らす。
「白キ戦艦だと! エストリプス銀河の宇宙を漂う移動式巨大戦艦。独自の信念を持ち、戦艦の中には街までが形成されているって噂の……あれか?」
「あぁ、間違いないだろう。あの規模で、真っ白な装甲の戦艦。まさか本当に存在しているなんて……!」
「でも、何でそいつらがドギガイズの部隊と交戦してる? しかも禁止惑星の周囲で!」コルトが叫ぶ。
「わからん……だが単なる遭遇戦じゃ、なさそうだな。何か理由がありそうだ」ミルトが低く呟いた。
轟音と閃光が激しく映像を覆い尽くす。
「どうする。このままリムスタングへ向かえば、確実に巻き込まれるぞ」
「ステルス機能は?」ナコが問いかける。
「宇宙空間じゃ無理だ。あれはあくまで星内環境に合わせて擬態するだけのものだ」ミルトが即答する。
「くそっ……どうなってやがる!」コルトが奥歯を噛み締める。
「一旦、別の進路に変えて身を隠すか?」ハリーが言う。
コルトは一瞬だけ思考を巡らせたのち、鋭く言い放った。
「……いや、このままリムスタングへ向かおう。やつらが交戦しているスキをついて上陸する」
「危険だぞ!」
「後方から向かえば問題ねぇ! 白キ戦艦は巨大だ、その船影に紛れて進めば……。軌道線は続いている。ルートは無数にあるんでな」
その瞬間、さらなる閃光が宙域を切り裂き、銀河鉄道を揺らす。車体の外壁をかすめる弾道の光跡が、窓外を焼き尽くすように走り抜けた。
「全員、掴まってろ!」
コルトの声と同時に、銀河鉄道は弾道の隙間を縫いながら猛然とリムスタングへ突入する。
宙域を轟かす砲撃音。閃光の雨。衝撃波に震える車体。
その中を、あたかも綱渡りのようにすり抜け、銀河鉄道はリムスタングの大気圏へと吸い込まれていった。
――
真白の戦艦の奥深く、闇に包まれたメインルーム。
前方スクリーンの一部には、銀河鉄道がリムスタングへ降り立つ様子が鮮明に映し出されていた。
「……面白いピースが増えたようだな」
「どうされますか……?」手下のような男が膝をつきながら問いかける。
「……一旦、戦線を引くぞ。全員に通達しろ」
キャプテンズシートに腰掛けるひとりの男が、不敵な笑みを浮かべていた。その瞳は深い闇の底から光を放つように、鋭く細く――。
第23話『リムスタングの狂気(前編)』に続く。




