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『地球』という言葉が禁句の異世界宙域で秘密の禁書を追う話。  作者: 綾坂真文
第二章:禁止惑星『ストラトバティス』編

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第15話 ストラトバティスの鬼(中編)

第二章:禁止惑星 『ストラトバティス』編

 轟音とともに大地がうねり、穴倉全体が大きく揺れた。天井の土壁がばらばらと崩れ落ち、か細い悲鳴があちこちから上がる。

「こっちだ! 走れ!」ソギ―が声を張り上げ、十数人の仲間を手振りで誘導する。


「女子供は先に行け!」


 混乱の中、幼子を抱きかかえた女が必死に通路へ駆け込む。老人や若者も続く。しかし、その矢先――。


 轟、と耳を裂く音とともに天井の一角が崩れ落ちた。土煙の中から、二本足の巨影が現れる。赤黒い皮膚、牙を剥き出しにした口。あの“鬼”だ。


「男ども、武器を取れ! やるしかない!」ソギ―が絶叫する。


 槍や石斧を手にした男たちが前へ出る。だがその様子を見て、コルトが吐き捨てた。

「おいおい、そんな槍でこいつらと戦うなんて無茶苦茶だろ! ハリーの銃弾でさえ歯が立たなかったんだぞ!」


 思い出す。砂漠での追跡戦――ハリーが放った弾丸は、鬼の皮膚をかすめるだけで傷一つつけられなかった。


「来るぞ!」


 咆哮とともに鬼が飛びかかり、集落の男衆が次々と血飛沫を上げて倒れていく。槍がへし折れ、腕がもがれ、肉が噛み千切られる。地獄絵図だった。


 ハリーが叫び声とともに銃を撃つ。しかし無慈悲に弾丸は弾かれ、鬼の前進は止まらない。さらに二体目、三体目が穴からずるずると降りてきた。


「ナコ、アゲハ! お前たちも先に行け!」ミルトが背を押すように叫ぶ。


「でも、みんなが!」ナコの瞳に涙が浮かぶ。


「いいから行け!」ハリーが振り返りざまに怒鳴った。


 押されるようにして、ナコとアゲハは通路へ駆け出す。心臓が喉を突き破りそうなほど脈打つ。背後からは怒号と咆哮、そして肉が裂ける音が追ってきた。


 その地獄のただ中で、コルトが吼えた。

「俺様を誰だと思ってやがる! おい、生き残ってるやつら、全員今すぐ目をつぶれ!」


 一瞬の躊躇。だがソギ―の怒声が重なった。

「従え! 全員だ!」


 男たちが一斉に目を閉じた瞬間――。


「おらよっ!」コルトは腰の工具バッグから三つの球体を抜きざま鬼へと投げつけた。


 空中を回転する球体。次の瞬間、ハリーが狙撃するように三発の弾丸を撃ち込む。


 ――閃光。


 穴倉を白で埋め尽くす眩光が爆ぜ、空気そのものが弾けたかのように熱を帯びた。鬼たちが耳を裂く絶叫を上げ、巨体をのたうたせる。目を覆っていなかった鬼の視界は完全に焼かれたのだ。


「ソギ―! 俺たちも撤退するぞ! 案内しろ!」コルトの声が響く。


「こっちだ!」ソギ―が叫び、残された者たちは一斉に通路へと駆け込んだ。背後で鬼の咆哮が木霊する。


 走る。走る。暗闇の通路を、必死に。足音と荒い呼吸が混じり合い、恐怖に押されるように全員が前へ前へ進んだ。


 十分ほど進んだ頃、コルトが振り返る。口元には狂気めいた笑みが浮かんでいた。

「ダメ押しだ!」


 再び球体を一つ取り出し、走ってきた通路の奥へと放り投げる。地面に落ちた瞬間、轟音とともに爆発。土塊が吹き飛び、通路全体を塞ぐ瓦礫の壁が築かれた。


「ここまですりゃ、そう簡単にやつらも追ってこれねぇだろ」コルトは息を荒げながら笑った。「先に行った集落のやつらに追いつくぞ!」


 土煙の中を駆け抜ける彼ら。その胸には安堵と恐怖、そして次に待つものへの不吉な予感が渦巻いていた。

第16話『ストラトバティスの鬼(後編)』に続く。

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