表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『地球』という言葉が禁句の異世界宙域で秘密の禁書を追う話。  作者: 綾坂真文
第二章:禁止惑星『ストラトバティス』編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/97

第11話 禁止惑星ストラトバティス(前編)

第二章: 禁止惑星『ストラトバティス』編

 銀河軌道線・非正規裏ルート《ルートΨ(サイ)》の深淵を滑る列車は、かすかな振動を足元に伝えながら、宙の裂け目を渡っていく。窓外には光の筋が複雑に交差し、無音の稲妻のように銀河を切り裂いていた。追っ手を振り切った興奮がようやく落ち着き、車両内には一瞬の静寂が訪れている。


 コルトとミルトは、ジャコウの小型端末を卓上に置き、ストラトバティスの座標データや周辺環境の解析に没頭していた。ミルトが端末に表示された数値を指でなぞりながら言う。


「酸素濃度は地表で十分。気温もノワリクトとほぼ同等だな。平均で摂氏三十三度前後。極端な気温差はなし。有毒ガスの反応は……ないな」


「つまり、降り立っても呼吸できるし、凍え死ぬこともないってわけだ」コルトが顎で端末を指す。


「惑星探査用スーツもいらねぇ。ありがたい話だな」


 その横で、ナコとアゲハは向かい合わせに座っていた。互いに顔を見合わせると、逃亡と再会の渦中にあった感情が改めて込み上げ、自然と笑みがこぼれる。


「……本当に、無事でよかった」ナコがしみじみと言う。

「うん……ナコも」アゲハの声は落ち着きを取り戻している。


 しばし沈黙が流れ、ナコは真剣な眼差しでアゲハに尋ねた。

「あのさ……禁書盗難のニュースが流れた日のこと、詳しく教えてほしい。あの日、アゲハが銀河警察に連れて行かれるまで……ジャコウさんはその時、家にいなかった? 変わった様子はなかった?」


 アゲハは視線を落とし、記憶をたぐるようにゆっくり話し出した。

「……禁書盗難のニュースが流れる二週間前から、ジャコウ兄さんは家に帰ってなかったの。“銀河中央図書館の最高位司書を目指すための一般社員の集中研修”って……二週間は戻れないって言って。だから、何も疑ってなかった。普通に信じてたんだよ。なのに……」


 彼女は息を吸い込み、言葉を続ける。

「でも、あの日——禁書盗難の速報が流れた早朝、通学の支度をしてたら、突然、銀河警察が家に踏み込んできて……何の説明もなく、私を連行したの。その後は、ナコも知っているとおりだよ……」


 その話を黙って聞いていたハリーが、ふと口を挟んだ。

「銀河中央図書館最高位司書ってことは……リリークスだな。銀河政府中央政権筆頭四人衆の一人。政府の犬だ」


 「銀河政府中央政権筆頭四人衆」——エストリプス銀河全体を牛耳る最大惑星ノワリクト統治者ジザーランドの周囲を固める絶対権力者たち。ナコの脳裏には、『留置の間(ジェイル・ルーム)』脱出の際に現れた銀河政府筆頭秘書官・ラークラの顔が浮かんだ。


「そういえば……あのとき、リリークスはいなかったな。本来、銀河中央図書館はアイツの管轄だろ? なのに、なぜラークラが出てきたんだ……」少し離れたところで聞いていたコルトが低く唸る。

「……わからないことばかりだな」ミルトも短く応じた。


 そんな会話をしているうちに、車両全体に自動音声の声が響いた。

「おっと、そろそろだ。ストラトバティスが見えてきたぞ。着陸態勢に入る。衝撃に備えろ——」


 窓外、群青の闇を裂いて浮かび上がるのは、灰の縞模様を帯びた球体。少しの緑と砂漠の海原のような光景が渦を巻き、その中心には大陸らしき影が浮かんでいる。車両全体がわずかに軋み、推進音が低く唸った。


 計器を操作するコルトの声が車両内に響き渡る。

「よし……行くぞ、第一の目的地だ! 未知の禁止惑星、高まるぜ!」


 銀河鉄道は、光の膜を破るようにして降下を始め——

 こうしてナコたちは、第一の目的地、禁止惑星ストラトバティスの地に、ついに降り立った。

第12話『禁止惑星ストラトバティス(中編)』に続く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ