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『地球』という言葉が禁句の異世界宙域で秘密の禁書を追う話。  作者: 綾坂真文
第一章: 『ノワリクト』脱出編

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第10話 決死の逃亡劇(後編)

第一章: 『ノワリクト』脱出編

 銀河の闇が、車窓いっぱいに広がっていた。星々は静かに瞬きながらも、その下を疾走する列車の速度を測る術はない。時折、虹色の残光が視界を横切るたび、ルート転移でしか通れない空間を進んでいる実感が胸に重く落ちる。


 先頭車両の運転席からコルトが戻ってくる。


「安定宙域に入った。しばらくは銀河政府に見つかることもないだろう。っかし、銀河政府筆頭秘書官ラークラまで出てくるとはねぇ」


 コルトが「座れ」と促すと、全員が中央の円卓に集まった。


「……みんな、疲れてるとこ悪りぃが、今のうちに今後の話をしておきたい。特にそこの嬢ちゃん——アゲハ、お前は何が何だか分かってねぇだろ」

 アゲハは無言でうなずき、膝の上で拳を握り締めた。


「今、俺たちが走ってるのは《銀河軌道線》の非正規裏ルート、《ルートΨ(サイ)》だ。名前の通り、星と星を繋ぐ銀河軌道線……だが、ここはもう使われちゃいねぇ。いや、正確には、長い歴史の中で闇に葬られた、忘れ去られた過去の遺物だ」


 窓の外に流れる光は、時に螺旋を描き、時に破片のように散っていく。「こういう非正規ルートは数千万、いや数百万はある。銀河政府だって全部は把握できてねぇだろうさ。ま、禁書には『この世界の全てが書かれてる』なんて言われてるがな……」


 コルトは片眉を上げ、苦笑した。


「なんで闇に葬られたんですか?」アゲハが恐る恐る問う。

「理由は色々だ。けど大半は“禁止惑星”が絡んでる」


 ——禁止惑星。


 その単語が耳に落ちた瞬間、ナコの脳裏にひとつの映像がよみがえる。

「……あ」

 思わず声を上げ、車両内に置きっぱなしにしていたバッグをごそごそと探る。


「あった」


 取り出したのは小型のデジタル端末。指先で起動し、ナコは以前のようにジャコウの職員番号をパスワードに入力する。端末は静かに承認音を鳴らし、中身が開かれた。


「見せろ」コルトが興味深そうに覗きこむ。


「ナコ……なんで、兄さんの端末を?」


 その様子を見ていたアゲハがナコに問いかけた。


「ごめん、アゲハ……その、アゲハを助けたくて、アゲハの家に勝手に上がらせてもらったの。そこで……手掛かりになるかと思って」


「そう、なんだ……ううん。ありがとうナコ。でも、無茶しすぎだよ」


 アゲハの表情は穏やかだが、言葉尻はしっかりと芯を持っていた。


「でも、アゲハが終身刑になるかもしれないって思ったら……」


「わかってるよ。うちの問題に……ナコも巻き込んじゃって、ごめんね」


「おいっ!」


 端末を操作していたコルトが声を掛ける。ハリーは眉をひそめ、ミルトは何やら考え込みながら画面に集中していた。

 開かれたデータ一覧には見慣れぬ符号や惑星名が並んでいる。


「銀河都市の構造図に、星間鉄道の路線図……一般には公開されていない内部使用まで細かく……さらには禁止惑星リストときたもんだ。察するに黒塗りの部分は禁止惑星とされた理由が書かれている、か」


「こりゃ……相当な機密情報だぞ。なんでジャコウがこんなもん持ってやがる」コルトが低くつぶやく。


「……あの、実はそれだけじゃなくて」


 ナコはためらいながらも、バッグの底から二冊のノートを取り出した。二年前、ジャコウから譲り受けたノートと、ジャコウの部屋の引き出しから見つけた古いノート。


 ページを開くと、不明瞭な地図、規則性の読めない数字の羅列、見たことのない単語がびっしりと書き込まれている。その中で、全員の目がある単語の上で止まった。


「……『地球』」

 銀河共通語ではない古い文字と、禁句とされている『地球』という言葉。


 沈黙が流れた。コルトはその文字を見つめ、口角をゆっくりと持ち上げる。


「……やべぇな。こりゃまじでジャコウは銀河を揺るがす何かを知っちまったのかもしれねぇ——いや、ずっと調べてたのかもな」

 彼はニヤリと笑い、拳を握る。


「だが、これで決まったな。俺らの当面の目的は、ジャコウを追うことだ。どうせもう『ノワリクト』には戻れねぇ。 俺たちはもれなく全員が銀河中に指名手配されてるだろうからな。ひゅーっ……高まるぜ」


 ミルトが苦笑しつつも頷く。


「ま、禁止惑星を巡るんなら、そこもあんまり関係ないだろうしな」


「でも……まずはどこに?」


 ナコが疑問を口にすると、ハリーが端末の画面をスクロールし、ある項目で指を止める。


「これ……禁止惑星リストの中にある《G-7》って符号、なんだ? ここだけ後から書き足されたように不自然だ……」

 コルトは身を乗り出す。

「Gは、この惑星系のポイント——“グリージュポイント”を示してるんだろう。で、7……単純に考えりゃ禁止惑星リストにある七番目の惑星だ。ジャコウがこれをわざわざ残したってことは……“追ってこい”ってことなのかもしれねぇな」


 銀河の闇の向こう、見えない目的地が彼らを呼んでいるようだった。


「行こう! まずはG-7、惑星系グリージュポイント、エストリプス銀河禁止惑星リスト七番目の星『ストラトバティス』だ!」

 ■第二章:禁止惑星『ストラトバティス編』■

        第11話『禁止惑星ストラトバティス(前編)』に続く。

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