中ツ国の国策
周囲を大陸に囲まれているローミル海の真ん中にある国、中ツ国。
気候は温暖で、海の幸も豊かだ。十三領からなるその国の、北よりに位置しているのが僕の住んでいるトロン領だ。
トロン領の特産は紙と米と油だ。領主はトロン男。人口は三万人。領都には一万人ほど暮らしているが領としては小規模だ。
中ツ国の国策として、国民の識字率向上がある。
八歳になると各村に造られた神殿に通わされる。男の子は強制だが女の子は任意だ。
其処には神官が二人いて簡単な計算と文字を教えてくれる。
十年前からの政策なので家の両親は文盲だった。
見込みのある子供には3年間通うことができ、さらに詳しく教えてくれる。勿論無料だ。
その後適性検査なるものが行われるらしい。
家の長男は1年で辞めた。長女は行きたくないと言って、その後嫁に行ってしまった。一三歳なのにいいのか?
村でも適性検査まで漕ぎ着ける子供は、一定数いるが僕の僕の周りにはいなかった。
兎に角、今日は3年間通えた次男トムイが、我が家では、はじめての適性検査だ。実態が解る。
「トム兄。どうだった?」
すると、一枚の紙を僕にみせてくれた。何でも検査室に連れて行かれて、白紙を手渡されたらしい。
兄の字で書かれてはいるが、僕もまだ字が読めない。因みに鑑定は前世の字で書かれている。
兄に読んで貰うと
「トムイ。十一歳。マナ130。適性無」
と、教えてくれた。そう言えば、家族の鑑定をしていなかった。慌ててトム兄に鑑定をかけてみた。
トムイ 十一歳
マナ・・・130
適性・・・無
体力・・・56
知力・・・89
(スキル・・遠見)
スキルがある!まだ目覚めていないのか。マナと体力は平均より一寸多い。知力は平均より高めだ。
適性というのは魔法の適性のことか?トム兄は無属性の魔法が使えるのか?
ぼくの鑑定眼で診ると殆どの人が適性の所は空欄だった。
検査室というのは鑑定室なのかも知れない。
本人しか診ることが出来ないため、まず、字を習わせてから適性のある人達を見つけているのか。
魔法の才能を持つ平民を集めているのか。なんのために?
トムイは適性検査に合格した。後日、領都にある魔法兵士の学校に通うことになって、我が家から巣立っていった。
魔法兵士。戦争でもするのだろうか?
僕は来年、神殿学校に行く事になっている。字は覚えたいから、学校には行く。
適性検査は自己申告らしいので、適当に書いて出せば良いか。戦争には行きたくないし。
妹は女の子だし、強制ではないから、学校は行かなくてもいい。僕が後で教えてあげよう。暫く一人になるのが心配だ。
鑑定が少し成長した。とうとう妹のスキルの問題が解った。
チムイ
年齢・・・七歳
マナ・・・13(50)
適性
体力・・・12
視力・・・5
スキル・・アイテムポケット(極小)▼親和性→カムイ
と言う事だ。所謂転生特典で、元は僕に着くはずのスキルが、どうしたわけかチイにくっついてしまったのだ。
矢張り、僕のせいだった。僕のせいで妹が危険な状態になってしまった。
スキルをどうにかする方法が解らない。もっと鑑定眼が成長すれば解るかも知れない。
それからは、冬の間必死になって、鑑定しまくった。
食欲は無くなり、身体の成長は全くしなくなった。
周りの子供達と同じ体格に落ち着いた。