新天地 辺境の街レモート
遂にアフロマの地に辿り着いた。
なんて暑いんだ。亜熱帯特有の熱い風が吹きつける。中ツ国とは随分気候が違う。
兎に角、持っている服は買い換えないとだめだ。今まで使っていた防具は使えないな。
ここからレモートまで、更に南下するから、ますます暑くなりそうだ。
☆
兄嫁の名はリリという。
リリの生れ故郷レモート州には、親族でひとつのコロニーを形成し、よそ者は入れないと言う風習があった。
そのコロニーが広大な範囲に100ほど散らばっていて、それらをまとめて州と呼んでいる。
それぞれのコロニーには大きな中庭があり、その中庭を50戸ほどの家でぐるりと囲んでいる。更にその外側を堅固な石塀で囲んでいる。
コロニーは年配の女性が中心になって、差配している。それぞれの家には役割が決められていて、商店だったり役所だったり、保育所だったりいろいろだ。小さい子供はコロニーで育てている。年配の男性は外苑にある農地の管理をしている。コロニーに残っている若者は少ない。辺境の管理のために冒険者ギルドや、よその州に働きにいっている。
前世の田舎の村に似ているな。
その中でも、より大きなコロニーが州の真ん中にあり、200戸程で取り囲み、更にその内側に70戸が円陣を組んでいる。つまり二重の円だ。このコロニーだけは、街と呼ばれて、特別に親族以外が集まっている。各コロニーから集まった若者達や、僕のようなよそ者をここに受け入れている。
他の地域との交流、商取引もすべて担っている。よそ者を監視する為でもあるようだ。
街の中心に、一際大きな建物が、冒険者ギルドだ。
三階建てで、宿泊施設も備えている。当分僕は此処に宿泊する事にした。
兄はこの街に家を借りて家族で住むという。慣れるまで当分はギルドの雑用をするそうだ。
「俺が、冒険者ギルドレモート支部のギルド長オレオだ。今日から、暫く仮ギルド員として俺の下で働いて貰う。よろしくな。」
「カムイ・ククルスです。魔法士です。宜しく御願いいたします・・。」
何で、ギルド員なんだろう。僕は冒険者なのに。
獣人は、警戒心が強い。どこの馬の骨かも分からない、人族は信用ならないって事かな。
ギルドの職員は、宿泊料がただ、食費もただらしいので、暫く生活費は掛からない。まあ、いいっか。