チートスキルの影響
あれから僕は、自分のスキルを検証してみた。
神眼に成長したので、詳しく見ることが出来る様になった。まず、マナ庫だが、この世界では初めてのスキルだという事だ。
スキルはマナを消費するが、マナ庫のおかげで、自分のマナを消費する事無く幾らでもスキルを使う事が出来る様になった。
その為、スキルがマナの多寡に左右されずに、増える事になったのか?
剣術や、身体強化、健脚、は僕の努力の賜物だとして、自己再生、ヒール、転移は理由が解らない。
これも転生チートなのだろうか。
神眼はいいとして、無限収納は確かにチートだろうな。自前のマナだけでは賄えないだろう。
僕のスキルを見て、この国の貴族達は、放っておくとは思えない。
王都ミラには、鑑定眼持ちがいる。神眼持ちもいるかもしれない。知られたら、囲い込まれて、使い潰される気がする。
毎年の師匠のご機嫌伺いにも、征けなくなった。
トム兄一家がアフロマに帰国する事になったから、僕もついて行こう。アフロマは獣人の国だ。獣人には鑑定持ちが余り居ないと聞いた。あちらは貴族など居ないし。
獣人国では適性魔法を教えてくれる人もいないと聞いたし、トトの魔法のレクチャーを僕がすれば良い。
師匠には手紙で知らせよう。鑑定眼持ちの師匠に会えば僕のスキルがバレてしまう。
☆
サウスの南端にある港から、帆船に乗って、アフロマに向かう。
兄一家の荷物を全部僕の収納に入れ、身軽に船旅を楽しんでいる。大体7時間の航海だ。もうすぐアフロマの首都、アフロスに着く。それから、トム兄の奥さんリリの故郷、レモートに征く事になる。
レモートは、アフロマの東の辺境、魔境開拓の最前線だと聞く。其処には人族は居ない。そこまで行けば一安心だ。
師匠には3日前に手紙を出した。今頃、届いているだろう。師匠は急な旅立ちを不審に思うだろうが、仕方がない。心の中で詫びる。
兄弟子のケビンには、トトに魔法教育する為だと言ってある。
彼には、餞別にと、魔法基本文字の小冊子を貰った。トトに役立ててくれと言われた。僕も持っているが、せっかくの厚意を無下にも出来ず、そのまま受取った。
以前、僕は師匠から、初めに読むように言われた数十冊の本も受取っていた。
「才能在る魔法士に国から下賜される物だ。遠慮無く受取ると良い。これは、君に恩を売って、国に繋ぎ止めようとする物だ。謂わば、先行投資だ。だが、気にすることは無い。君が魔物を倒してくれれば、それで恩を返した事になる。貴族のおもちゃにするには君の才能は勿体ないからな。」
多分、国からの要請を師匠が盾になって、はぐらかしてくれていたのだろう。
そんな恩師に不義理をしている自分が情けない。このヘタレな自分が、いつか自信を持って話せるような日がくるだろうか。