トム兄との再開
いつものように、冒険者ギルドに出向いたら、何となく見覚えのある人物に出会った。
次男のトムイだ。魔法兵士の学校へ行って領兵になったと聞いていたが。何故ここに居るのだろう。
「トム兄?」思わず声を掛けていた。
「えっ!」トム兄がビックリして振り返った。トム兄も真逆僕が此処にいるとは、思わなかったようだ。
お互い涙の再会である。
久方ぶりに見る兄の姿は、すっかり大人の男だった。身長は以前から大きかった。大体180㎝で、筋肉がしっかりついたゴツイがたいになっていた。
僕のその後が、家族に知らされておらず、音信不通になって、もう死んでいると思われていたらしい。
確かに、自分から連絡を取ろうと思わなかったし、たとえ手紙を送っても、トム兄が居なければ、誰も読める家族は居ないのだ。
チイの記憶が痛すぎて、故郷の事は思い出さないようにしていた、過去の自分だ。
「カムイ。随分大きくなったな。声を掛けられなければ、目の前に居ても分からなかったぞ。お前も冒険者になっていたのか」
「いや。魔法士冒険者さ。いまは、カムイ・ククルスと名乗っている」
「なんと!士爵様か!」
それから、僕らはこれまでのあれこれを語り合った。
☆
トム兄の今までの道のりは、けして平坦ではなかった。
学校を卒業した後、領兵になったが、其処は貴族やその縁故関係者が幅をきかせていた。平民の兵士達は何かと言いがかりを付けられ、いじめられたと言う。
とくにトム兄のスキルをからかわれた。遠見のスキルは使いどころが限られ、戦闘には役立たずだったので、馬鹿にされたらしい。
兵士に期待されるのは剣術のスキルや槍術、アイテムボックスなどだ。
左遷に次ぐ左遷だった。その中でトム兄は懸命に剣術を習い頑張ったようだ。
「いまでは結構戦えるようになったぞ」とほこらしげに語った。
実勢を残しても平民は認められない。そこで領兵を辞めて、冒険者になって、大陸に渡り、そこで在る女性と知り合って、結婚したという。
今はソロで冒険者をやっていて、事情があってしばらく前から此処に落ち着いている。
ここに来てから、1年以上になる、という。
そんなに前から此処に居たのに、今まで気がつかなかったのは、お互いがあまりにも変わりすぎて、すれ違っても、気づかなかったと言う事だろう。
僕は鑑定が使える事を話すと、勢い込んで
「見てくれ」といわれた。8年ぶりにトム兄を鑑定してみると、
トムイ
年齢・・・19歳
マナ・・・950
適性・・・無
体力・・・230
知力・・・110
スキル・・遠見、剣術
スキルが生えている!後発のスキルが有ることは本のの知識で知っていたが、人族には珍しいと書いていた。まさか、自分の身内にいたなんて。
剣術のスキルはマナの消費も少なく成長し易い。努力が報われるスキルだ。
でも、冒険者の仕事は苛酷だ。マナは多い方が良い。
僕は魔物を直接倒すとマナは増える事を教えてやると、とても喜んでいた。
今度嫁にも会わすから、鑑定してくれと頼まれた。
僕は二つ返事で快諾した。