02S.始まりのとき
「村田新平」は昔、良く同じ夢を見ました。その夢とは、いつも子供の頃の出来事で有り、それは現実のものでは、有りませんでした。その夢で彼は、いつも年上の女の子に、手を引かれました。そしてどこかの路地裏に、一緒に入ったり、隠れたり、または空き部屋に入っては、女の子がエッチなことを、しようとする、少し困った子供の夢でした。
例えば、その女の子は、自分のスカートを捲っては「パンツを見て。」とか最近、胸が大きく成ったので「触ってみて。」とか「キスをしたいから、これからしましょう。」等と、そうゆうことを、平気で要求してくる「オマセな子供」でした。自分は、このおねぇちゃんよりも年下で有り、まだ小さかったので、おねぇちゃんの言うことを、素直に聞いて従いました。
女の子の名前は「瑠璃ちゃん」と言いました。彼女は、自分よりも年上でした。その為、新平君は、彼女のことを「ルリねぇ」と呼んで、慕って居ました。おかっぱ頭のセミロングが、とても良く似合う、可愛い女の子でした。小さい頃の自分に取っては、良く遊んでくれる、面倒見の良い「おねぇちゃん」でした。そして彼が、大きく成ると次第に、それは憧れの「おねぇさん」へと、変わりました。
また或るとき、大人に成った「瑠璃ちゃん」が、危ない男に襲われる夢も、良く見ました。そしていつも、タイミング良く、大人に成った、自分が現れて「危機一髪に、この〝おねぇさん″を、助けてあげる」と、言う夢でした。しかしこの「おねぇさん」には、或る秘密が有りました。それは、彼女が人では無く、怪物達の女王様で有り、たくさんの魔物達を、従えて居たのです。それから、不思議なことに彼女は、自分の名前を、偶に間違えて?「公平くん。」と、呼ぶときが有りました。
「村田新平」は、中堅処の部品製造会社に、勤務して居ました。大量部品の製造会社でしたので現場は、大勢の女性パートタイマーが、働きました。彼は、歳も若くて、面倒見が良かったので、オバ様達の受けも良くて、頼られる存在でした。製造工程の関係上、今ではグループ単位で、まとまって仕事をしました。
彼は、社歴も長く、経験も有ったので、新人パートタイマーの仕事の指導も、行いました。また彼は、職場のムードメーカー的な存在でした。ここでの彼の仕事は、同じ部品を、数多く製造して、客先に納品すると言う、内容の仕事でした。
一部に細かい手作業が有ったので、パートの人達が面倒がり、辞めて行く人も多い、職場でした。その為、人手が足りなく成ると、募集をして減った分の人手を、補充しながら「納期分の製品を、作って出荷する。」と、言うものでした。
その日も忙しく、立ち回って居た、新平君のグループに、1人の新しいパートタイマーの女性が、配属に成りました。彼女は、この職場では場違いのような、清楚で上品な黒髪の美しい、綺麗な女性でした。新平君とは、年齢的に近いので、彼のグループ配属と、成りました。
パートの女性には、手慣れた新平君でしたが、この女性を、始めて見たときに、強い衝撃のようなものを、感じました。また、突然「卑猥な幻想」のようなものが、彼の脳裏を、過ぎりました。その幻想とは、彼女と2人だけで全裸に成り、淫らな行為に、耽って居ると言う、破廉恥な自分の姿でした。
彼女の名前を「黒崎綾」と、言いました。彼は、この女性が他の人とは、何かが違うことを、本能的に知りました。また彼女に関わると「大変なことに、成るだろう。」とも、思いました。
彼女が入ってからは、暫く何も起こりませんでした。新平君は、皆と同じように彼女と、接しました。そしていつものように平穏な日々が、過ぎました。彼女の会社での評判は「凄く綺麗な人。そして悪い噂の無い、極めて普通の人だ。」と、言うものでした。男の作業員も、何人か居る職場でしたが、なぜか彼女に、ちょっかいを出す者は、誰も居ませんでした。今から思うと、彼女の未知なる力により、自分の周りの環境を、自分に都合良く、変えて居たように思われました。
今でも「卑猥な幻想」は、自分の意志とは無関係に突然、新平君の脳裏を、過ぎりました。そんなときでも「幻想の対象」でした彼女は、当然ながら、いつも無表情で、真面目な顔をしながら、仕事をしました。「私には、何も関係が無い」と言う、感じでした。また職場では相変わらず、いつも彼の近くに、彼女が居ました。
最近では一日に何回も、あの「卑猥な幻想」が、脳裏を、過ぎりました。そして彼は、今ではすっかりと、その影響により、自分の体調が、崩れて居ました。彼は、彼女のことを、特別扱いには、しなかったのですが、何故か周りの人達が、彼と彼女が一緒に、仕事をするように、仕向けて居ました。それから暫く経つと、何かの象徴のような、あの夢を見ました。
夢の中で子供の僕は、いつものように「ルリねぇ」の後を、付いて行きました。するとその彼女の顔が、いつの間にか「黒崎綾」に、変わって居ました。そして夢では、成人した「ルリねぇ」が、いつものように、危ない男に襲われるのですが、その成人した姿も「黒崎綾」に、変わりました。
今では、彼女が自分の夢にまで、現れるように成りました。自分には、彼女に対する密かな想いは、無かった筈ですが、ひょっとすると、自分でも知らない心の奥底で、彼女のことを、好いて居たのかもしれませんでした。その為このような夢を、見るように成ったのでしょうか。
会社での、最近の彼女の評判は「人当たりが良くて、仕事も努力したので大分、出来るように成った。」と言う、高評価に変わりました。彼女の会社での立場は、盤石なものへと、変わりました。また新平君は、彼女の姿が、あの夢に出て来る女の子と、ダブるように成り、少し複雑な感情で、彼女を見るように、成りました。
夢の中の女の子を、子供の自分は、いつも「ルリねェ」と、呼んで居ました。最近では、思わず「黒崎綾」を、見ただけで、その言葉が出そうに、成りました。夢の中の「存在し無いもの」に、変わって居た彼女を、新平君は段々と、平常心では接することが、出来無く成りました。
彼女は、それを知ってか知らずにか「ルリねェ」と同じように、彼の身体に、自分の身体を、押しつけたり、手に触れたりしながら、やたらとボディタッチをするように、成りました。また彼女は、偶に彼の名前を、間違えて「公平くん。」と呼ぶときさえ、有りました。驚いた彼の反応を見て彼女は、楽しんで居るようでした。
新平君の休みの日や、帰宅して家に居るときでも、容赦無くあの「卑猥な幻想」が、彼の脳裏を過りました。1人で居るときの方が、現実的で強烈でした。彼女が、直ぐ近くに、居るようでした。また自分の部屋なのに、彼女の匂いがしました。
最近の彼は、匂いに敏感に成り、特に「黒崎綾」の匂いに、過敏に反応するように、成りました。今では彼女が遠くに居ても、その匂いで嗅ぎ分けられるように、成りました。彼女の匂いは淫靡で有り、一度捕らわれた者は、とても振り払え無いものが、有りました。例えるならば、発情した「淫乱な獣」の匂いでした。
「フェロモン」と言う奴でしょうか。自分には、あまり経験が無かったので、良く分かりませんでした。しかし強烈に誘って来る、何かの匂いでした。匂いに何かの意志が、宿って居るようでした。最近では、この部屋に1人で居ると、何回も「自慰」に、耽るように、成りました。近くで、彼女が見て居るようで、新平君が彼女を思って、激しくそれをするようにと、急き立てられて居るようでした。
彼は、我慢が出来ずに何処かの風俗店に、駆け込もうとしましたが、それが出来ませんでした。ただ只管に、彼女の顔を思い浮かべながら、激しく欲情しました。彼女以外には、この欲情を鎮めることが、出来無いのです。
夜中、自分の家で寝て居ると、まるで現実のように、彼女との激しい「秘密行為」を、する夢を見ました。それも日に日に多く成り、今では必ず、その夢を見ました。転寝を、するときも自分が、彼女を襲って居る夢を、良く見ました。
自分は、タフで「精力絶倫な男」では無いと、思いましたが、朝起きると決まって、大量に夢精しました。自分でも良くこんなに出るものと、驚きました。今では、会社に居た方が「遥かに安全」では無いかと、思えるように、成りました。
最近の新平君は、中々家には帰らずに、会社に居残り、外に居る時間が、増えました。しかし無理でした。限界時間が来ると、まるで中毒患者のように成り、自分の意志とは、関係無く自分の家に、足が向かいました。ここは、自分の家の筈なのに、一度も「黒崎綾」は、来たことが無かった筈なのに、なぜか彼女のフェロモンが、充満しました。彼は、この部屋の中で彼女を思い、激しく欲情しながら、何回も「自慰」に、耽りました。
そのような日が、何日も続いた、或る日のことでした。自分の部屋に居た新平君は、不思議なものを見ました。それは目の前に「黒崎綾」の幻が、現れたのです。彼女は、嬉しそうにしました。そして言いました。「新平さん。貴方は、私のことを、好きに成ったようね。私を大好き過ぎて我慢が、出来無く成ったようね。」
確かにそうでした。今の彼女は、彼に取っては、掛け替えの無い女性に成りました。彼は、幻の彼女を、抱き寄せると彼女に「好きだ。」と、告白しました。彼は彼女に、そう告白すると、その日は珍しく、ぐっすりと眠ることが出来ました。
次の日も、いつものように会社に行きました。仕事をしましたが、その日は珍しく、あの「卑猥な幻想」が、脳裏を過ることが、有りませんでした。彼女は今では、彼の助手と成りました。夕方に成ると、激しい雨に成りました。そして最後は2人だけに、成りました。2人に会話は、有りませんでした。しかし全てを分かって居ました。
戸締りをして彼は、帰ろうとしました。するとそこに「黒崎綾」が、立って居ました。彼女は「傘が壊れたので、近くまで入れて欲しいの。」と、言いました。彼女の家は、新平君の家の方角でした。相変わらず雨は、強く降って居ました。1つの傘に2人で入って、家路に就きました。
新平君の家に着いたときは、2人共びしょ濡れでした。彼女は「寒いから、服が乾くまで、新平さんの家で、雨宿りがしたいの。」と、言いました。彼は、彼女の願いを、聞きました。そして彼女を、自分の部屋に入れました。それから着替えのシャツを、彼女に渡しました。彼は、別の部屋で身体を拭いて、着替えをしました。