01S.サキュレス物語・序
☆全ての物語が、ここから始まる。
この世界の神は「三位一体」でした。それで初めて「全知全能の神」と、成りました。先ず「中央の神」が、居りました。そして、その神を支えるように「左右の神」が、居りました。左の神は「ミカエス」と言い、右の神を「サタナス」と、言いました。この左右の神は「双子」と言われ、それぞれ「神の真意」を、担って居ました。
「中央の神」は「ゼビス」と、言いました。その象徴は「中心で有り、未来で有り、支配とか所有とか、神の方向性」を、示しました。「左右の神」は、光と闇、善と悪、攻撃と防御等、対立する事象を、それぞれ均等に担いました。それは左右、極端な振り分けでは無く、いつも均等に成るように、配分されました。
「左右の神」が「全ての神の根幹」でした。そして「左右の神」が「中央の神」に、従属しました。全体から見ると「左の神ミカエス」は「善の象徴」のようなものに、見えました。そして「右の神サタナス」は「悪の象徴」のように、見えました。しかし左右どちらも、この世界の「神の真意」でした。
「三位一体の神」は、それで初めて「全知全能の神」と、呼ばれるものに成りました。或るとき「右の神サタナス」が、離脱しました。それは「中央の神」と戦い、敗れて居無く成ったとか「中央の神」の大切なものを、奪って逃げたとか、人間の目で見ると、そのように見えました。しかしそれらの事象は、全て「神界での出来事」で有り、人間の小さな頭では、そこで実際、何が起きたのか「神の真意」を、理解することは、出来ませんでした。
今この世界では「右の神」が、抜けたので「三位一体」では、無く成りました。その為この世界の神は、成立出来ずに「神の居無い時代」を、迎えました。そして「右側神サタナス」が離脱すると、この物語で有る「サキュレス物語」が、始まりました。この物語の語られた世界とは「三位一体神が、成立しないとき」に、起きたものでした。その為「右側神」が、正位置に戻ったときに、この物語の終わりを、迎えました。
西洋の魔物で「サキュバス」と言う怪物が居りました。それは美しい女性の姿でした。その魔物が男性に取り憑くと毎晩、夢の中に現れました。そこで秘密行為を、繰り返すと「男性の体液」を、大量に絞り取って行きました。これが何日も続くと男性は、痩せ衰えて「やがては、死を迎える」と言う、恐ろしい魔物でした。男型の場合は「インキュバス」と言い、こちらは女性に取り憑き、同じようなことをしました。
容姿の特徴としては、露出度の高いコスチュームを着ました。そして頭には羊のような角が生え、蝙蝠のような翼が、背中に有りました。また先端が尖った、ハート型の尻尾が有り、普段は人間の姿ですが、秘密行為の最中で、興奮して来ると、本来の姿に戻りました。「サキュバス」を、漢字で書くと「女夢魔とか女淫魔」と、書きました。この「淫魔」と言う名称は、中々「ナイスなネーミング」だと、思いました。
「ダルタニア(キューブィの地上世界)」にも、同じような淫魔が、住んで居ました。女型淫魔を「サキュレス」と呼び、男型淫魔は「インキュレス」と、呼ばれました。また淫魔達が、たくさん住む世界のことを、ここでは「淫魔界」と、呼びました。
「右側神サタナス」の後継神と成る「原初の魔神リーリス」は、新たな自分の後継神を、創りました。それは「自分よりも、強くて大きくて賢い」と言う、性質を与えました。そして自分とは違う「男型の属性」を、付与しました。そして自分の姿に良く似た、次世代の「大魔神」を、創ったのです。その魔神のことを、配下達には「淫魔王」と呼ばせ、その名前を「グン・ペイン」と、名付けました。
淫魔王の強靭な肉体は既に、出来て居ましたが、その肉体を管理する、自我とも言うべき「アニマス(根源)」が、まだ入って居ませんでした。その為、4組の男女を模した「ツガイ」を創り、学習させる為に、異なった時代の「人間世界」に、送り込んで居ました。そして「淫魔王のアニマス」としての経験を積ませて、複雑な「人間世界」の中でも、淫魔が生きて行けるような、自我を育てて居ました。
そのアニマス達が成熟して、やがてときを迎えれば、この4組は統合されて、新たな世界の「第3神」と成る「淫魔王のアニマス」として、その本体に、格納される予定でした。この物語は、今ではたくさんのものが、出現した世界に於いて、一番初めに語られた、始めの物語でした。・・・。
ここは「ゼビスの人類世界」での出来事でした。この世界に取っては、異物のような存在が、或るときひっそりと、何かを辿ってここまで、入って来ました。それには、肉体が無く、ただ「根源」のみの存在でした。しかしそれは、完璧なものでは無く、何処かが、破損して居るように、見えました。それは、この世界の人類で有る、人間が見ると、女型をした「黒っぽいシルエット」に、見えました。
それには、肉体が無かったので、その属性と同じものが、必要でした。その為それが宿ることが出来るものを、探して居たのです。或るとき1人の若い美しい娘が、何かに追われるように、走って居ました。それは、深夜の出来事でした。彼女は悪い男に、狙われたのでしょうか。しかし、彼女を追うものは、得体の知れない、幽霊のような「女型のシルエット」でした。その娘は、幽霊?を見たので、驚き逃げて居たのです。
彼女は、必死に逃げました。しかしそれは、彼女を執拗に追い詰めると、彼女の中に入りました。すると肉体の自我は、それに浸食されると、直ぐに消滅しました。肉体を奪われたのです。彼女は、この世界の若い娘に適合すると、捜した者との釣り合いが、取れる女性に、変わりました。それは、やっと見つけた者との、接触を図る為に、次の行動に移りました。
すると何かの悲鳴を聞いたので、慌てて駆け付けた者が、居りました。それは全身が、放電して居るような、危ない人物でした。彼は、該当者だと思われる、その女性に、声を掛けました。「お嬢さんが、悲鳴を上げたのですか。大丈夫ですか。」と、気遣りました。すると彼女が、取り繕い答えました。
「ええ。大丈夫です。気遣って頂き、有難う御座います。変な男に追われて居ました。しかし貴方が来てくれたので、男が逃げて行きました。もう平気です。」彼は、その答えを聞くと、彼女に「この先を少し行くと、人気が有るので、そこまで護衛しましょうか。」と、言われましたが彼女は、丁寧に辞退しました。彼は、それを聞くと素直に、立ち去りました。彼は、とても親切な人物でした。
彼は、この世界の「管理者」でした。彼等は、この世界の同胞を、人知れず守って居るのです。彼女に取っては、敵対者でした。しかしその者は、下位の者でしたので、彼女の正体を、見破ることが、出来ませんでした。彼女は、命拾いしました。そして気を持ち直すと、自分と同じ存在で有り、壊れた自分を修復してくれる存在の元へと、急ぎました。
この彼女に訪れた「最大の危機」は、これを機会に訪れることが、無く成りました。そして彼等との本格的な攻防戦を、描いた物語は、これよりずっと先のものとして、語られることに、成りました。これは、これから始まる「右側神の世界」の第3神で有る「淫魔王」の誕生に、纏わる物語の始まりでした。