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消えるカップ麺


コンビニ夜勤のアルバイト、宮下は毎晩同じ作業に追われていた。

品出し、廃棄チェック、清掃、発注。繰り返し、繰り返し。

深夜2時過ぎともなれば客もほとんど来ず、「この時間はセルフレジでもいいだろ……」と、小さく愚痴を漏らすのが習慣になりつつあった。


だが、その週の火曜日――初めて見る客が来た。


初めて見る中年の男性。仕事帰りらしく、少し疲れた表情をしていた。

手に取ったのは、カップ麺、肉まん、缶コーヒー。

会計を済ませた後、ちょうど100円の釣り銭を渡した。


次の日もまた同じ時間に同じ買い物を


そして次の日もまたまったく同じ時間、まったく同じ買い物、同じ表情で男は現れた。


「……覚えちゃうな、これは」


そう思った宮下は、金曜日の夜、男がいつも買う3点セットを先にレジ横に用意して待っていた。

少しだけ姿勢を正して、“常連対応っぽさ”を意識して待機した。


だが、男は来なかった。


「あれ……来ないな?」


やや拍子抜けしながら、用意していた商品を棚に戻そうとしたそのとき。

レジ横に置いていたはずのセットが、きれいさっぱり消えていた。


「……あれ、どこやったっけ?」



---


土曜日。

また同じセットを同じようにレジ横に準備した。

あの男は来なかったが、商品はまた消えた。


昨日は自分が何処かに置いてしまったのかと思ったがそうではない確実に消えた

盗まれてる?そう思い在庫を確認するもズレはない

さらに恐ろしい事に、販売記録には“売れた”ことになっていた。


「……これ、ヤバいやつ……?」


日曜日の夜、宮下は何もしないまま、その商品だけを凝視して過ごした。

そして深夜3時、

目の前で、それらは静かに、確かに“消えた”。


音も光もない。ただ、フッと、存在が切り取られたように。



---


月曜日。

宮下は録画機器を設置し、証拠を残すつもりで同じセットを並べて待機していた。


そして、やはり――消えた。


記録は完璧。やった、これで証明できる。

そう思った瞬間、コンビニのドアがカラリと開いた。


入ってきたのは見覚えのないスーツ姿の男性。

どこか眠そうで覇気がなく、ネクタイはゆるく、靴はやや擦れていた。


「すみません、ちょっと聞きたいんですが……この辺に“コロッケがよく売れてる肉屋”ってありますか?」


「え? あ、はい、神山商店っていう店があって、そこを右に曲ったらすぐですよ!そこ最近すごいらしいですよ。願いが叶うとか、噂になってて……」


そう言いながら、宮下は抑えきれずに言葉を続けた。


「ていうかそれどころじゃなくて、今、さっき、目の前で商品が消えたんです!録画もあるんです!信じてもらえますか?」


男は一瞬きょとんとし、それから目を細めた。


「えーと……疲れてない?」


「違うんですって!ほんとに、今、そこにあったのに!」


男は一歩後ずさりし、妙な笑みを浮かべてうなずくと、 そのまま無言で足早に店を出ていった。


ちょっと引かれたかもヤバいヤツだと思われたに違いない


ただそんな事今はどうでもいい

この事実を誰かに伝えなければ!


---


火曜日。

録画を持って店長に見せたが、反応は薄かった。


「これ、なんかの編集じゃない? 見間違いとかさあ」


「違いますって! 先週ずっと張ってたんです! 絶対おかしいんですよ!」


「……てかお前、先週休みなかったよな? 疲れてんじゃない?」


結局、深夜に一緒に張り込んでもらったが、何も起きなかった。


「でもまあ……なんも起きないのが普通だよな」


優しく背中を叩かれ、宮下は曖昧に笑うしかなかった。


次の日店長は急遽休みをくれた2連休だった


それ以降、商品が消えることはもう二度となかった。



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