俺のお弁当が○○すぎる。
俺の名前は斎藤ケン、三十ニ歳の会社員だ。
妻のユカと、五歳になる娘のナミの三人家族。
誰も病気をすることもなく平穏無事な生活を送っている。
そんな俺には最近、ちょっとした悩みがある。
それは…… 俺の弁当が「メルヘン」すぎる ということだ。
朝、ユカは俺とナミ、そして自分の三人分の弁当を同時に作る。作ってくれるのは嬉しいが、問題はその内容だ。
でんぶでピンク色になっているご飯の妖精とか、爪楊枝にさしたハート型ウインナー(魔法のステッキ)が詰まっている。
ようは、ナミの大好きな女児向けアニメのキャラ弁なのだ。
凝り性なユカの才能が凝縮されている。
間違いなく可愛いし、ナミが喜ぶのもわかる。
でも俺のまでキャラ弁にしなくていいんだぞ?
案の定、昼休みになると同僚たちの視線が集まる。
「斉藤さんの今日のお弁当、何のキャラクターです? 私、今後彼氏ができたときの参考に見たいなぁ」
隣の席の戸成がニヤニヤしながら聞いてくる。
他のみんなも期待した目で見てくる。
公園に逃げていいか?
しかし今日は雨。仕方なくデスクで弁当を開けた。
『ぴゅあぴゅあ』の妖精ぴんきぃだ。
「おお! かわいいいい! これは絶対、娘さん大喜びですね」
「娘は大喜びだよ」
俺は恥ずかしくて泣きそうだが。
周囲から笑い声が上がる。だが、バカにするものでなく温かな笑いだ。
「奥さんの愛情が詰まってる感じでいいじゃないですか。私なんて作るの面倒だからスーパーの半額惣菜ですよ」
確かに恥ずかしい部分もあるが、すごく美味しいし愛情のこもった弁当だ。
食べようとしたところで隣の部署の部長がファイルを持って入ってきた。
「あらかわいい。うちの娘もぴゅあぴゅあ好きなの。今度、作り方教えてもらえるかな?」
驚きつつも、俺は頷いた。
「あ、はい。妻に頼んでレシピを聞いておきます」
口下手な俺だが、弁当がきっかけで職場の人と話す機会が増えた気がする。
家に帰ると、ナミが弾む声で迎えてくれた。
「パパ、ぴんきぃかわいかったね! ぴんきぃはねぇ」
「戦闘でも大活躍だったな」
放送の内容を話し始めるから、俺も話についていくため一緒にぴゅあぴゅあを観るようになった。
ユカが微笑みながら俺に言う。
「明日は『ぴゅあマリー』にしようと思ってるんだけど、どう?」
「任せるよ」
俺は家族の愛を感じて、心が温かくなるのだった。




