新たな狼煙
異世界からの来訪者を告げる赤い狼煙がエルシィの村の近くから上がった。
「ホワイトは気づいたかしら」
家で洗濯物を母と干していたエルシィは狼煙を見上げて呟いた。
「エルシィ。一応、ホワイトさんの所に行って伝えておやり」
エルシィの母が言った。
「うん。──あら?また狼煙が上がったわ」
エルシィが最初に見上げた狼煙とは別に、真反対の方角からも狼煙が上がった。
「おや、お客が同時かい?あれま!今度は西だよ」
第三の狼煙が上がった。
「待って、北もよ!」
エルシィと母は目まぐるしく動き、次々と上がる狼煙を指差した。
二人のもとにエルシィの父が駆け込んできた。
「おい。異世界の服を着た男が近くの丘にいるぞ。早く狼煙を上げるんだ!」
「なんだって!?」
エルシィの家族だけでなく、村中の人々が家から出てきて、エルシィの父の話に驚き、不安な表情で空に上がる狼煙を見上げた。
国の中心にある王都、東の荒野、北の黒い森、そしてホワイトの家がある南の海辺からも狼煙が上がった。
「なんてこったい。まさかこの世の終わりじゃないだろうね」
家から出てきた老婆が怯えながら言った。
「ホワイトに知らせないと……」
「急げエルシィ!」父が叫ぶ。
エルシィは走り、ホワイトの家へと向かった。
一体何が起きているのか。赤い狼煙がこんなに同時に上がることなど、今まで一度も無かったというのに。エルシィは胸中の不安を取り払うように無我夢中で走った。
異世界からの来訪者が、狼煙の数以上にアルディフォリア王国に現れていることを、今のエルシィは知る由もなかった。