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プロローグ ─兆候─
東の空が明るくなり始めた明朝、アルディフォリア王国の北にある黒い森の片隅で、二人の男が焚き火の火で干し肉を炙っていた。
干し肉に程よく焼色がつき、二人がそれにかぶりつこうとした時、森の奥が怪しく光った。
二人は光った方向を向いた。
「またか」一人が呟いた。
「まただ」もう一人が呟いた。
「またあの男の出番のようだな」
「どうもそうらしい。赤の狼煙を上げてあの男に知らせよう」
「そうしよう。それにしても──」
「なんだ?」
「このところ異世界の流れ者が多くないか?」
「ああ。やけに多い。困ったもんだ」
「厄介なことが起きる前にあの男に片付けてもらおう」
「それがいちばんだ」
朝と夜の境目が天頂に達した頃、北の森から赤い狼煙が上がった。
その狼煙を、南の海辺にひっそりと佇む家から見つめている男がいた。