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銀河戦記/鳴動編 第一部  作者: 神崎理恵子
第一部
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第十三章・ハンニバル艦隊 Ⅳ


 カラカス基地と敵タルシエン要塞とに対し、ほぼ正三角形をなす地点にある恒星系の第四惑星に、共和国同盟最大の軍事施設であり、連邦軍の侵略を食い止める最前線基地となっているシャイニング基地がある。第十七艦隊の母港であり、最大収容艦艇十二万隻を誇る当地には、一億二千万人にも及ぶ軍人・職人及びその家族が暮らしている。

 軍事目的として開発されたとはいえ、公転周期二百二十五日、自転周期二十五時間という惑星には、全地表の三分の一を占める海が広がり、大気組成は地球型に近い酸素含有率と温暖快適な気温が、地上に生活する人々の完全自給を賄っていた。資源も豊富にあって、寄港する艦艇の燃料、修繕に必要な資材を供給する。

 惑星地上に点在する無数の高い鉄塔は、敵攻撃から地上設備を守るシールドビーム発生装置。それらを網目状に結ぶ地下送電線に電力を供給する核融合発電所は、敵の攻撃目標となるのを避けて地下三千メートルの深さに建設され、僅かに燃料搬出入用施設が露出しているだけである。それら施設を取り囲むようにして対空迎撃ミサイル発射口が上空を睨んでいる。仮に敵艦隊に防衛艦隊が打ち破られたとしても、揚陸作戦には五個艦隊以上の揚陸部隊を必要とするだけの防空能力を備えていた。ゆえに常駐する第十七艦隊のみで十分防衛が可能だとされていた。惑星が籠城して死守している間に、周辺基地から援軍を差し向ければ十分ということだ。


 艦艇を収容する軍港は、海岸線よりの開けた平野に建設されているが、十二ヶ所に分けられているその中でも最大のものは、艦隊司令部のあるターラント軍港である。

 その軍港ロビーの展望室から、まもなく到来する予定の艦隊を待って、空を仰ぐ二人がいた。

 二人の名前は、オーギュスト・チェスター大佐とリップル・ワイズマー大尉である。バリンジャー星域で散った旧第五艦隊の残存兵力を従えてアレックス達の部隊に併合されることになった部隊の指揮官とその副官であった。

 シャイニング基地上空に、独立遊撃艦隊が姿を現した。

「ついに来ましたね」

「ああ……」


 かつてのミッドウェイ宙域会戦において、撤退する連邦第七艦隊を追撃しようとして、返り討ちにあって壊滅したのが第五艦隊である。その残留部隊を統括しているのが、オーギュスト・チェスター大佐であった。司令官を失いちりぢりになった敗残の兵力をまとめあげ、規律正しく基地に帰還したことは、アレックスも賞賛の辞を惜しまない。

 二人の階級は同じであるが、独立遊撃艦隊の指揮権はアレックスにある。チェスターは副司令官として、アレックスの下に配置されることになった。年齢的に五十七歳の老練が、二十歳代の新進気鋭に傅くことになるのだ。

 チェスター大佐の人格面において特筆すべきことは、いかなる境遇に陥ろうとも決して自分に課せられた任務の遂行を怠らないことであった。シャイニング基地においてアレックス達の到着を待つあいだにも、出撃準備の体制を進めつつ配下の将兵に対して何をすべきかを忘れることのないチェスターであった。敗北に討ちし枯れている将兵達の間を回っては、捲土重来けんどちょうらいここにありと新司令官となるアレックスの下で再起をかけることを説いてまわり、士気を鼓舞し高めるために尽力したのである。


 独立遊撃艦隊の旗艦サラマンダーは一目で見分けがつく。

 ハイドライド型高速戦艦改造Ⅱ式といえば、同盟中を探しまわってもたった五隻しかなく、そのすべてがアレックスの元にあり、旗艦名を表す伝説の火の精霊サラマンダーがボディーに描かれた艦は一隻しかない。艦体に絵を描くなど、正規の艦隊であれば有り得ないことであるが、独立遊撃艦隊として特殊任務に就くことの多いアレックス達は、例外として黙認されてきたのである。そもそもアレックス達は、常に最前線にあって本星や艦隊司令部に戻ることがなく、監視の目も行き届かずに、気がついた時には連邦を震撼させる代名詞となっていた。

 そのサラマンダーから一隻の上級士官専用舟艇が飛び出した。

 それを見届けた二人は、

「さて、お出迎えするとするか」

 というチェスターの呟きとともに展望室を離れ、最上階に通ずるエレベーターに乗った。

 二人の向かった最上階は、床面積の五分の四を占めるヘリポートと、特殊強化透明プラスティックで隔たれた上級士官専用送迎デッキとで構成されている。

 エレベーターを最上階で降り、通路を警備する衛兵に身分証明書を提示して、二人が送迎デッキにたどり着いた時には、先程の舟艇はすでに着陸体制に入っていた。

 砂塵を巻き上げながらゆっくりと着陸する舟艇。

 タラップが掛けられ降りて来た人物。

 それが二人の新たなる上官となる、アレックス・ランドール上級大佐であった。

 カラカス基地周辺の攻略成功を受けて上級大佐の称号を受けていた。上級大佐とは正式な階級ではなく、職能級の一つである。将軍への功績点に達しながらも、定員による頭ハネの関係から、士気の低下を防ぐために設けられた大佐クラスに対する窮余の対策である。例えば日本の警察の巡査長という階級が良い例である。


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