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銀河戦記/鳴動編 第一部  作者: 神崎理恵子
第一部
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第十三章・ハンニバル艦隊 Ⅰ

I


 タルシエン要塞中央ドックステーション。

 スティール・メイスンが副官を引き連れて降りてくる。

「お帰りなさいませ、メイスン准将。今回もまた見事な戦いでした」

 ステーションの責任者が声をかけた。

「取るに足りない戦いのことを言っても仕方あるまい。敵は最初から逃げ腰だった。どうしてもこうも無駄な戦いを仕掛けるのか理解に苦しむ」

「同盟のニールセン中将のことですからね。差し詰め、気に入らなくなった提督を処分しようとしたのでしょう」

「処分か……。まったくあいつは将兵のことをただの駒にしか考えていない。そんなにしてまで自分の信奉者だけを身近に集めて何するつもりだ。戦争なんだぞ、貴重な味方の将兵を見殺しにしてどうする」

「その最たるものがランドールでしょう。我々でさえ正気の沙汰ではないと判る無茶苦茶な命令を受けてます。明らかに、潰しにかかっていますよ」

「しかし、ニールセンの期待に反して、見事な作戦で勝利を続けているがな」

「そのランドールが、カラカス基地第三次攻略隊を退けて、またもや多くの艦艇を搾取したもようです」

「そうか……その前のサラミス会戦でも勝利したしな」

 サラミス会戦とは、最初のカラカス攻略戦から六ヵ月後に出撃した第二次攻略隊を、宇宙機雷による進撃阻止と、それを迂回しようとした宙域にヘリウム3原子散布による核融合爆発によって、一気に艦隊を全滅させた戦いである。

「ランドール艦隊は、三万隻にまで膨れ上がってしまいました。もはや尋常な手段ではカラカス基地を攻略することはできないでしょう」

「ああ、軍部はランドールの実績を過小に評価しすぎだ。ちょこまかと小部隊で攻略しようとするから、そういう事態になるんだよ」

「そうですね」



 要塞作戦本部。

「一体いつになったら、同盟に進撃し屈伏させることができるのだ」

 居並ぶ参謀達の前で、要塞司令官が憤懣やるかたなしといった調子で怒鳴っている。

「とにもかくにもカラカスを守備しているランドール一人が問題なのだ。我々の行く先々に待ち伏せして、想像だに出来ない作戦を用いて奇襲をかけてくる。すでに三個艦隊が撃退され、バルゼー提督は捕虜になった。しかも、奴は我々から鹵獲した艦船を組み入れて戦力を増強している。そうこうしているうちに、奴の艦隊は三万隻にまでになってしまったぞ」

「カラカス基地を放っておいては、シャイニング基地を攻略することもできん!」

「その通りです。背後を取られてしまいます」

「いったいどうしてこうなってしまったのだ?」

 要塞司令官が頭を抱えていた。

 このままでは自分の責任問題だと、今頃になって気づいたのである。

 タルシエン要塞は、自国の防衛以上に共和国同盟への侵攻作戦の拠点として築かれたものである。当然侵攻作戦が行き詰っているとなると、その責任を問われることになる。


(無能な参謀達のせいだろうが……)


 スティールは、バルゼー提督を捕虜にされた原因である無策な作戦しか立案できない統合軍参謀連中を信用していなかった。

 作戦を指示されて出撃することもあるが、いざ戦場に赴いた時には完全に無視して、自分の思い通りに戦ってきた。ゆえに、参謀達のスティールに対する風当たりは強かった。

「誰か、奴の息の根を止めることのできる者はいないのか?」

 場内を見渡して意見具申するのを待っている司令官。

(何を今更ながら言っているんだ。以前にバルゼー提督が、三個艦隊でこれを叩き、余勢を駆ってシャイニングに侵攻するという戦略を意見具申した時に、それを取り入れていれば、ここまでにはならなかったはずじゃないか。バルゼー提督だけが、貧乏くじを引かされたことを、何とも思っていないのか。ただ失敗したという結果だけしか見ていないじゃないか。実際、カラカスを攻略されて以降にも、何度となくランドールを潰すチャンスはあったのだ。なのに彼を過小評価したあげくに、幾度も少数のみの派遣艦隊で散々な目に合い、なおも考えを改めようとしなかった。そして気がついたときには、手を出すこともできない勢力に膨れ上がってしまっていた……実に愚かだ)


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