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銀河戦記/鳴動編 第一部  作者: 神崎理恵子
第一部
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第十二章・テルモピューレ会戦 Ⅷ


 カラカス基地奪取、キャブリック星雲不時遭遇会戦、そしてテルモピューレ宙域会戦と、奇抜な作戦で十倍以上の敵を撃ち負かしたことで、アレックスに対する将兵達の信頼は揺るぎないものとなっていった。

 やがて一ヶ月後に迎えることになる第二次カラカス防衛戦においても、十倍以上の敵艦隊が押し寄せてくるという情報が伝えられた時も、誰一人として不安を抱く者はいなくなっていたのである。

 そしてそれは次ぎなる期待へとつながる。

 隊員達の最大の感心事が、ランドール司令の准将への昇進である。

「問題は、統帥本部の将軍達方々がどう出るか」

「というよりも、チャールズ・ニールセン中将一人をどうするかじゃないかな」

「奴がいる限り、ランドール大佐の将軍入りはないな」

 下士官から准尉(士官)へ、大尉から少佐(佐官)へ、そして大佐から准将(将軍)へというように、新たなクラスに昇進する場合は、必ず軍部内にある査問委員会による適正試験・面接・実地戦闘試験などが行われることになっている。

「いや。国家治安維持法の特別追加条項の第十二条がある」

 それは、栄誉ある聖十字勲章を授賞するような特別功績をあげた場合で、国家治安委員会から推挙され、共和国同盟最高評議会において議員の三分の二以上の賛同を得られれば、軍部の意向に関わらず無監査で昇進できるとした法律である。

 時として軍部というものは、国政を無視して独断先行して侵略戦争を始めたり、武力抗争を起こしたりするものである。そのために軍部を監視・監督する機関として国家治安委員会が存在する。国家治安委員会が活動の根拠とするのが、国家治安維持法であり特別追加条項である。


 第二条 将軍が艦隊を動かす時には、必ず委員会より派遣された監察官が同行する。

 第三条 艦隊の行動は逐一監察官を通して委員会に報告される

 第四条 監察官は委員会の直轄にあり、軍部はその活動を妨げることはできない。

 第九条 委員会は、将軍職の解任請求を最高評議会に提出することができる。

 第十一条 必要が生じた場合、新たなる将軍を最高評議会に推挙することができる。


 そして先に挙げた第十二条である。

 軍部とて国家の治安維持のために存在する以上、国家の法律には逆らえない。


 テルモピューレから凱旋し、兵士達が休息を与えられてしばしの息抜きをしている頃、敵から搾取した艦艇の改造作業を不眠不休で続ける人々もいた。

 敵艦艇を鹵獲ろかくしたとはいえ、ハード面はともかく敵が使っていたソフトがインストールされている艦制コンピューターを、そのままでは利用することはできない。ROMを取り替えてメモリーを完全に初期化した後に、改めて同盟仕様のソフトをインストールする。これはウィルス対策を完全にするためである。またある種の艦では制御コンピューターごと総取り替えし、回線網の再施設という根気のいる作業も必要であった。

 これらの担当責任者として、エンジン設計技師のフリード・ケースン中尉と、システム開発・管理技師レイティ・コズミック中尉があたっていた。

「どうだい。作業の進行状況は?」

 アレックスは時折二人のもとを尋ねていた。カラカスを脅かす敵艦隊の来訪にそなえるためにも一隻でも多くの艦船を必要とし、逐一の報告は受けて知っていたが、その目でじかに確かめておきたかったからである。

「最初の時は三百隻、次が六百隻、そして今度が千隻です。休む暇もありません」

「本国では予算が足りなくて、損失した艦船の補充を受けようにもままならぬ情勢なのに、いとも簡単に艦船を増強してしまう我が部隊のことを、やっかみも含めて盗賊部隊と呼んでるそうです」

「部隊創設当初の二百隻に、ロイド少佐が持ってらした二百隻の他は、すべて鹵獲して編成された部隊が、今では二千隻に膨らんでます。本国に要請して手配されたのは、それらを動かすに必要な将兵の増員だけ」

「戦闘要員だけでなく、技術部員の増員もぜひともお願いしますよ。これじゃあ、眠る暇もありませんから」

「判っているよ。大至急に技術部員の派遣を要請しているところだ」

「大至急じゃなくて、超特急でお願いします」

 レイティが強い口調で詰め寄ってきたので、思わず後ずさりしてしながら答えていた。

「わ、わかった」

「何にせよ、鹵獲した艦艇を使役するのは結構ですが、ブービートラップが仕掛けられることも十分考慮にいれてくださいよね。作業中に爆発したとかは、遠慮願いたいです」

「もちろんだよ」

「それじゃあ、忙しいのでこれで失礼します」

 とつっけんどんな態度で、艦内に戻っていくレイティだった。

「ああ、済まなかった」

 その後姿を見送りながら、頭を下げるアレックス。

 技術的なことに関しては、二人がいるからこそアレックスの艦隊も存在できる。じゃじゃ馬でしようがないと廃艦の憂き目にあったハイドライド型高速戦艦改造Ⅱ式を、これほどまでの高性能戦艦に生まれ変わらせたのも二人のおかげだった。

 そして、極秘裏に進められている例の件にしても……。


 第十二章 了

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