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銀河戦記/鳴動編 第一部  作者: 神崎理恵子
第一部
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第十二章・テルモピューレ会戦 Ⅶ


 誰しもが考えもしなかった作戦にうってでたアレックス達の完勝であった。敵の誤算は、カラカス基地にある強力な軌道衛星兵器を盾にして防衛に徹し、一歩たりとも出てはこないだろうと考えたことである。まさか防衛しなければならない基地を空っぽにして自分達の勢力圏内奥深くまで進撃してくるとは誰しも想像だにしなかったであろう。それがゆえに何の警戒もせずにテルモピューレ宙域を渡ろうとしたのである。

 アレックス達の電撃作戦によるバルゼー艦隊の壊滅、艦隊司令官バルゼーの捕虜という報が伝えられた時、タルシエン要塞司令官はあまりの動揺の激しさのために、要塞に警戒体制を発令しただけで、後続の艦隊を派遣することすらなかった。

 追撃の艦隊が出てこないのを知ったアレックス達は、悠々と宙域の掃討を行なうことができた。結果として、またしても千隻近い敵艦艇を拿捕して、基地に持ち帰ることに成功したのである。それもバルゼー提督という有力敵将を捕虜にして。

「前回と違って、今回は敵艦を鹵獲ろかくするのですね」

「頂けるものは頂いておくのが、私のポリシーだからな。今回は策謀の余地もないだろう」


 こうしてカラカス基地の防衛に成功したアレックスは大佐に昇進した。ゴードン・カインズ両名はそれぞれに中佐となり、配下の多くの士官達も多く昇進を果たしたのである。もう一人の少佐であるディープス・ロイドは、キャブリック星雲会戦に参加していなかったせいで、功績点が僅かながらも昇進点に届かず昇進から外れた。

「残念でしたね、少佐殿。後もう少しでしたのに。キャブリック星雲に参加していなかったのが尾をひきました」

 副官のバネッサ・コールドマン少尉が慰めた。

「しかたがないさ。運不運は誰にもある。鹵獲した艦艇に配属された乗組員を訓練しなければならないのは当然だし、だれも敵と遭遇するとは思いもしなかったのだから」

「でも、大丈夫ですよ。ランドール司令は公正な方ですから、すべての将兵に均等にチャンスを与えてくれます」

 士官学校時代にアレックスから、戦術理論と戦闘における行動理念を、直々に叩き込まれたバネッサの言葉である。まさしくアレックスの言葉を代弁していると言えるだろう。


 さらにもう一人特筆すべき昇進者がいる。

 独立遊撃艦隊再編成当初からアレックスの副官として尽力を尽くし、たぐいまれなる情報収集・処理能力でアレックスの作戦を情報面からバックアップした、情報将校レイチェル・ウィングである。

 今回の作戦においても、バルゼーの到着を逸早くキャッチし、その艦隊がテルモピューレ宙域を突破するコースを通るという情報を掴んだのも彼女と彼女が指揮する情報班であった。いかにアレックスとて、敵艦隊の正確な情報なしには、テルモピューレ宙域会戦の綿密な作戦を立てられなかった。

 彼女の提供した情報は、アレックスの立てた作戦に匹敵する功績とされ、無監査による少佐への昇進を認められ、宇宙艦隊史上初の現役女性佐官の誕生となったのである。

 これは意外と思われるかもしれないが、宇宙艦隊勤務につく女性のほとんどが三十歳を前に地上勤務に転属するため、現役で少佐に昇進した例は過去にはない。艦隊勤務の激務による生理不順、無重力の影響による骨格からのカルシウム溶出や、宇宙線による卵細胞の遺伝子破壊などなど、宇宙艦隊生活は女性の妊娠・出産を困難にする障害が多すぎる。ゆえに結婚を考える女性士官としてはごく自然な淘汰であろう。

 しかしながら、アレックスの率いる独立遊撃艦隊は、めざましい功績を立て続けにあげて、全員が急進歩的に昇進しており、ただでさえ士官学校出たばかりの新進気鋭が勢揃いしているのだ。現在大尉の階級にあるジェシカ・フランドルもパトリシア・ウィンザーも、確実に佐官に昇進するのは時間の問題である。


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