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銀河戦記/鳴動編 第一部  作者: 神崎理恵子
第一部
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第十二章・テルモピューレ会戦 V


「まもなくテルモピューレに到着します」

 オペレーターの声がアレックスの耳に届いた。

「敵艦隊の想定位置は?」

「テルモピューレの中心部を航行中だと思われます」

「よし、全艦停止して待機せよ」

「了解。全艦停止して待機します」

「時間通りに現れますかね」

 パトリシアが傍に寄ってきていた。

「現れるさ」

「レイチェルからの報告にある、敵艦隊の出撃時間の情報が正しければですが……」

「信じるしかないだろう。ここは敵勢力圏内にあるんだ。哨戒機などを飛ばして確認するわけにもいくまい」

「そうですね。問題はゴードンの方でしょう。何せ無線封鎖で情報を確認することができませんから。運を天にまかせるしかないとは……」

「しかし、バルゼー艦隊の作戦プランが手に入ったのはこちらに有利に働いている。進撃コースや予定到達時間まで、明確に記されていたのだからな。どうやら今回のカラカス攻略作戦は、バルゼーの意思ではなく軍部からの作戦を押し付けられたものが判明した」

「どうしてそう思われるのですか?」

「自分が考え実行するのなら、作戦内容をコンピューターに記録したりするものじゃない。戦闘とは状況に際して臨機応変に対処しなければならないからな。今回の作戦が記録されているということは、参謀が考えたプランに沿って動いているという証拠だよ」

「参謀の考えた作戦ですか?」

「間違いないね。おかげでゴードンも無駄足を踏むことも、逆襲されることもなく、予定通りに敵艦隊の背後を突くことができるだろう」

「しかし、そんな重要な作戦情報を手に入れられたレイチェルさんもすごいですね。いつもながら感心しているのですが、どうやったのでしょう」

「あはは、背後にすごい奴がいるんでね」

「背後? すごい奴?」

「それが誰かは言えないが、我々の強い味方だよ。それ以上のことは聞かないでくれ、君にも明かすことのできない軍事機密だ。いずれ時がきたら説明する。理解してくれ」

「わかりました」

 アレックスが艦隊の運命を左右する機密事項を持っていることには理解できないわけではないし、それが幼馴染みのレイチェルと共有していることも納得しているパトリシアだった。アレックスとレイチェルの関係に、時として嫉妬の念に駆られたりもするが、自分との関係よりもはるかに長い時間を共有し、艦隊創設当初から副官として任務をこなし、今のアレックスの地盤を確固たるものにしたのも、彼女の類稀なる才能のおかげであることも周知の事実である。レイチェルなかりせばアレックスもまたなかりせり、である。

 何にしても、アレックスとレイチェルの関係は、恋仲というものではなくて、あくまで司令官と参謀という職務の上での関係であることは明確な事実だった。それが唯一、妻としてのパトリシアの居場所を安堵させていた。

 ゆえにパトリシアとレイチェルの関係も、何ら支障をきたすこともなかった。


 食堂で談話する二人。

「なんだ、そういうことだったの……」

 会話の内容は、巡回査察のことを話題にあげていた。

「アレックスとて、所詮ただの男性ですものね。女性だらけの場所に立ち入るのは、やはり勇気がいるでしょう」

「ランジェリー・ショップでのこと、見せてあげたかったわ。純情少年みたく赤くなって、そわそわしちゃって、笑いを堪えるのが辛かった」

「ふーん、見たかったな」

「でしょ? 店員から恋人にプレゼントなんかいかがですか? とかランジェリーを手渡された時の表情といったら」

 と言ってけたけたと笑うレイチェル。

「もしかして、そうやってアレックスを弄んでらしたんじゃないですか? レイチェルさん」

「あはは、それは言えてるかも知れないわね。だって面白いから」

「もう……。ああ、それで『今、どんな下着着てる?』とか、あの時聞いてきたけど……。それが原因ね。それでアレックスは買ったの? ランジェリー……」

「買うわけないでしょ。急に態度を変えて、次に行くとか言って逃げ出した」

 そうだろうと思った。もし買っていたのなら、とっくに自分にプレゼントとして渡されていたはずである。

「で、もし買っていてパトリシアにプレゼントされたら、そのランジェリー着てあげる?」

「そ、それは……アレックスが買ったものなら……」

「悩殺下着でも?」

「たぶん……って、何言わせるんですかあ」

 急に赤くなってどぎまぎするパトリシア。

 いくらアレックスと自分が夫婦であることを知っていても、そこまで立ち入って尋ねることではないからである。

 自分の下着姿を見せられる男性は、夫であるアレックスだけである。そのアレックスが自分にとプレゼントしてくれるものなら、どんなものでも着てあげようとは思っているが……。妻にランジェリーをプレゼントするということは、それを着て見せて欲しいという意思表示でもあるだろうから。


 こんな風に、ごく普通の女性同士で交わされる話に打ち解けあって話し合える二人だった。

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