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銀河戦記/鳴動編 第一部  作者: 神崎理恵子
第一部
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第十二章・テルモピューレ会戦 Ⅳ


 一方、タルシエン要塞からもバルゼー率いる艦隊が、カラカス攻略のために出撃を開始していた。

 出撃の見送りをする要塞副司令官のスティール・メイスン准将。

「ランドールは油断のならぬ相手です。くれぐれも用心なさるように」

「ふん! おまえも言えるようになったものだ。いつの間にか要塞副司令官とはな。敵のことよりまず味方からかも知れぬわい。足元をすくわれないように気をつけなきゃならん」

「ご冗談をおっしゃらないで下さい」

「どうだかな。銀河帝国からの流れ者でありながら、統合参謀本部長に拾われてとんとん拍子に出世。今じゃ、緑眼の貴公子などという二つ名までもらっていい気になっている。若手精鋭を集めて軍の転覆を目論んでいるとはもっぱらの噂じゃないか」

「提督が世間の噂話を信じるとは思いませんでした」

「当たらずとも遠からずじゃないのか?」


 軍事国家には大きなトラウマとも言うべきものがあった。

 軍人たるもの立身出世を願うのは人の常である。ゆえに何らかの昇進の機会が与えられなければ不満が募るようになる。それが戦闘だったり技術開発だったりするのだが、そのはけ口ともいうべき共和国同盟との戦争は膠着状態で、軍上層部は今の地位に甘んじて守勢の態度を示していた。

 しかしそれは、階級の低い若手精鋭にとって、昇進の機会の少なさを意味し、憤懣やるかたなしの心境であった。

 そんな中にあって、共和国同盟への大々的な侵攻作戦を説くスティール・メイスンの元には、多くの若手精鋭が集まるきっかけを与えていたのである。

 共和国同盟に彗星のごとくに現れたアレックス・ランドールという人物に注目し、彼が出世街道を驀進ばくしんし軍の最上部に駆け上がる前に、同盟に侵攻して占領しなければ、いずれは彼が指導する大軍団によって逆侵攻されるだろう。そう説いて回って、若手精鋭達の支持を集めていたのは自然の流れといえた。集まった精鋭たちの中には、活気にはやり軍の転覆さえ考えているものいた。

 酒場などで酔って騒ぐたびに、軍のお偉方の綱紀粛正などをわめくものだから、その首謀者としてスティール・メイスンが矢面に立たされることもあったのである。


「何にしてもだ。貴様の気持ちも判るが、今は時期尚早だろう。若手の気持ちをしっかり抑えておくことだな」

 バルゼーはそう言い残し、艦内へと乗艦していった。

「今の提督の話、どう思いますか?」

 スティールの傍に副官のマイケル・ジョンソン少佐が歩み寄ってきて尋ねた。

「軍の転覆か?」

「そうです」

「実際にそう考えている連中も仲間の中にいることは確かじゃないか」

「それを知っていて、提督は動きませんね。密告とか」

「提督は、そんな人間じゃないよ」

「それはそうですけどね」

「バルゼーは数いる提督の中でも、私と同意見の考えを持つお方だ。カラカス基地の奪取作戦の命令を受けたときも、三個艦隊を持ってカラカスを一気に攻略し、その余勢を駆ってシャイニングへの転進を説いておられた」

「しかし上層部がそれを許さなかったですね。一個艦隊だけを与えてカラカス基地のみの攻略を命じてしまいました」

「軍上層部は、ランドールの恐ろしさを知らな過ぎる。数百隻の艦艇でカラカスを攻略したのを、運が良かっただけだと評価し、未だ士官学校出たての若輩としか見ていない」

「ミッドウェイやキャブリック星雲のことも過小評価されてますね。たまたま偶然といった感じですよね」

「いわば急進派の先鋒ともいうべきバルゼー提督も、頭の固い保身派で固められた軍上層部から敬遠されている。今回の作戦も、あんな若輩な相手に三個艦隊も派遣する必要などない一個艦隊で十分だと、作戦内容やコース設定まで、参謀の考えたプランを押し付けられてしまったのだ」

「バルゼー提督も、我々と同じ被害者の一人というわけですね。軍上層部に対する……」

「そういうことだ……」

 呟くように言いながら出撃していくバルゼー艦隊を見送るスティールだった。

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