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銀河戦記/鳴動編 第一部  作者: 神崎理恵子
第一部
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第十一章・スハルト星系遭遇会戦 Ⅶ


 その頃、再び指揮官席に付いたアレックス。

「敵艦との接触推定時刻は?」

「およそ八時間後、0507時です」

「よろしい。各艦に伝達、三時間交代で乗員を休息させ、0307時には戦闘配備に入れ」

「了解、伝達します」

 パトリシアが戻ってきた。

「任務に復帰します」

「ああ、パトリシアか。済まないが携帯食を持ってきてくれないか」

「判りました」

 取って返して艦橋を出て行くパトリシア。


 パトリシアは食堂へ歩いていた。

 交代休憩を与えられた隊員達が食堂へ続く通路を行きかっている。

「まずは腹ごしらえしようぜ」

「しかし生きた心地がしなかったな」

「指揮官がベンソン艦長だからか?」

「いや、艦長のことは信用しているよ。何せ司令官の士官学校時代から旗艦艦長を務めてきたんだし、指揮運用を任せる限りには、それなりの能力を持っているのだろうと思っているさ。ただね、ちょっと今回ばかりは、危険率が高かったからな」

「まあ確かに、模擬戦闘のベネット十六星雲強行突破作戦以来ってとこかな」

 そんな会話を耳にしながらパトリシアは思った。

 アレックスは、スザンナを艦長としてではなく、指揮官としての能力を見出し、戦術士官ではない彼女に、いろいろと教育しているのだ。それを確たるものにするために、あえてスザンナにスハルトの重力ターンの指揮を執らせたのだ。

 このわたしではなくスザンナという事が気になっていた。戦術士官としての教育を受けているこのわたしに指揮を執らせてくれても良かったのではないか。

 と考えているうちに気がついた。

 もしかしたらスザンナに嫉妬しているのではないだろうか。

 戦闘に際し私情は禁物だ。

 改めて冷静になって考え直してみる。

 パトリシアは艦隊勤務新入生だ。指揮官としての経験が浅く、まだ一人きりで指揮を任せられるほど成長していない。その点、スザンナは常日頃から巡航時での艦隊運用の経験があり、アレックスが見抜いている通り指揮統制能力が十分備わっているのは明らかだった。

 艦隊運用に必要なものは、司令官の能力もさることながら、それを実行する有能な指揮官が必要だ。より多くの指揮官を得るためには候補性を育てる事も肝要だ。その最短距離にあるのがスザンナだった。指揮統制能力では、今のパトリシアよりもはるかに高い位置にあるのは確かだ。

 それに何よりアレックスがいつも言っていた言葉を思い出した。

「パトリシア、君には艦隊指揮よりも作戦参謀として活躍してもらいたい」

 アレックスは言う。人にはそれぞれ違った能力特性を持っている。最前線で目の前の敵と戦い抜くのが得意な者がいれば、それらの兵を指揮する用兵に長けた者もいる。そして作戦立案を考える参謀に適した者もいる。適材適所、それを見誤ったらいかに有能な人材であっても、ただの無駄飯ぐいになってしまうのだという。

 そうなのだ。スザンナに嫉妬しても詮無いこと。スザンナにはスザンナの、パトリシアにはパトリシアの適材適所というものがあるはずだ。

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