第九章・コレット・サブリナ 犯人を捜せ Ⅳ
Ⅳ
続いて、ディレクターだったアンソニー・スワンソン中尉を尋ねる。
「ところで、カテリーナが放送終了直前にミシェールを探しに出たというのは本当ですか?」
「ええ、間違いないですよ」
「結局ミシェールは亡くなっていたのですが、その交代は誰がなさったのでしょう」
「ああ、それは私が代わりにやりましたよ」
「タイムキーパーでしたよね」
「ええ。タイムキーパーは新人がまず最初に与えられる役目ですから、局員なら誰でもできます。まあ、手慣れたディレクターなら、タイムキーパー役も同時にこなせます。ちょっと忙しいですけどね」
「カテリーナのことですけど、何か変わった態度とかはなかったですか?」
「カテリーナですか? ミシェールじゃなくて……」
「そうです」
「うーん。どうですかねえ……。まあ、そわそわしていた感じはしましたけど」
「そわそわしていた?」
「放送終了間近になれば、誰だってそうでしょう。特に彼氏とかがいればよけいに」
「彼がいるのですか?」
「はっきりとは判りませんが、雰囲気からそんな感じがしただけです。本人から聞いたわけではありません」
「そうでしたか……。わかりました、また何かありましたらお伺いに参ります」
「いえ、どういたしまして。いつでもどうぞ」
「ありがとうございました」
その後、残り二人の放送局員から証言をとったが、反応は同じだった。
自分の部屋に戻って考えをまとめることにする。
とその前に……。
ランジェリーショップに立ち寄ることにする。
「いらっしゃいませ!」
職員が明るい声で迎えてくれる。
「さっきのお勧めのランジェリー、見せてもらえるかしら」
「いいですよ。店に出したら結構人気がありましてね。売り切れないように、コレットさんのために取っておいたんです」
「ありがとう。わざわざ済みませんねえ」
「いいえ。こちらこそ、いつもお世話になってますから、当然ですよ」
と言いながら、奇麗な化粧箱から上下揃いのブラとショーツを出してくれた。
「谷間メイクシンプルブラ・ショーツセットです。脇からお肉を寄せる伸び止め脇寄せリフト、押し上げパッドで下からバストアップします」
ブラは、3/4カップ・ワイヤーサイドボーン入り・後ろホック二段二列、エンブロイダリーレース使用。ショーツは同柄のストレッチ素材。
「サイズは、C70でよろしかったですよね」
「ええ。試着していいかしら」
「どうぞ」
ショーツはともかく、ブラはちゃんと試着して胸に合ったものを買わないと後悔する。試着室に入り上半身を脱いで、ブラを胸に合わせてみる。
「ぴったりだわ。デザインも自分好み」
試着室から出て来たコレットに、すかさず店員が声を掛ける。
「いかがですか?」
「これ、いただくわ」
と言って、商品を一旦返して、IDカードを渡した。
「ありがとうございます」
店員はIDカードを受け取ってレジに通した。IDカードは身分証明書であると同時に、クレジット機能も合わせ持っている。店舗での買い物やサービス料金などは、給料から自動引落される。
「カードをお返しします。包装しますので少々お待ち下さい」
IDカードを受け取り、商品を包装している間に、店内を見渡すコレット。女性の心をくすぐる可愛いデザインや、男を惑わす魅惑的な高級ランジェリー。何でも揃っている。
その中の一つのベビードールを眺めていると、包装を終えた商品の入った紙袋を持って店員が声を掛けた。
「ああ、そのベビードール、なかなか良いでしょう?」
「そうね。でも、これってやっぱり彼氏がいる人しか買わないでしょう」
「そうですね、やっぱり相手がいらっしゃらないと……。そういえば、カテリーナさんが買っていかれましたね。彼氏がいらっしゃるってことですかね。あ……。いけない! こんなこと話しちゃいけないんだっけ。捜査官のコレットさんだから、つい話しちゃいました。お願いです、わたしが話した事、カテリーナさんには黙っていてください」
「わかりました。内緒にしておきますよ」
「ありがとうございます。はい、商品をどうぞ」
恐縮しながら紙袋を手渡してくれる。




