表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
銀河戦記/鳴動編 第一部  作者: 神崎理恵子
第一部
52/267

第八章・犯罪捜査官 コレット・サブリナ Ⅱ

 共和国同盟軍情報部特務捜査科第一捜査課艦隊勤務捜査官。

 それがコレット・サブリナ中尉に与えられた正式称号である。

 事故であれ殺人であれ、人が死ねばまずは第一捜査課(殺人課とも呼ばれている)の彼女が呼ばれて現場検証にあたることになっている。配下の捜査員とと共に現場検証にあたるコレット。

 すでにアスレチックジムは関係者以外立入禁止の処置がとられている。

 ミシェールが死んでいたマシンは、滑車からロープに繋がったウェイトを、持ち手を引っ張って持ち上げていくというものである。

 レオタード姿で死んでいる。

 一見、手が滑って持ち手が器械に引っ掛かったところに、ロープが首に掛かりウェイトの重みで首が締まって、窒息死したようにも見える。

「ウェイトの質量は片方ずつ五十キロか……。艦の重力は地上の六分の一程度しかないから、実質十キロ弱分の筋力ゲージね……。これくらいの重量で首が絞まって窒息死するだろうか」

 重力六分の一で、ウェイトが軽くなるのと同じように、人の体重も六分の一になるから、五十キロのウェイトでも人の体重を支えて、首吊り状態を十分維持できるが……。筋力十キロあれば、首に絡んだロープを外せるはずだ。

「ロープが絡んだときの勢いで、急に首を絞められて気絶したんじゃないですか。そしてそのまま……」

 しかし、明らかに不自然だ。持ち手は前へ引っ張っていくものだが、たとえ手が滑っても、反動で持ち手が首に掛かるようにカーブを描いて後方へ飛ぶとは考えにくい。落下するウェイトに引っ張られてまっすぐ戻るはずだ。

「誰か、遺体に触らなかった?」

「いいえ」

「だとしたらおかしいな」

「何がおかしいのですか?」

「この膝の傷だよ」

 タイツで隠れていて注意深く観察しないと気がつかないが、明らかな擦過傷を負っていた。

「ああ、これね。アスレチックジムですからねえ。擦り傷くらいは日常茶飯事じゃないですか?」

「そう思うか?」

「ええ、まあ……」

「いや、違うな。この傷は、たぶん死後に負ったものだ」

「え? どうしてですか?」

「それは、解剖にかければはっきりするだろう」

「教えてくれないんですか?」

「憶測で物事を判断するものじゃない」

 遅れて臨検医が到着して観察をはじめた。こうした場合の当然として、特に首筋を重点的に調べている。

「頸椎損傷の形跡はありますか?」

 気絶するほどのショックが首に掛かっていたかを判断するためである。

「外見からでは判断できませんねえ。解剖してみないことには」

「直接の死因は?」

「首筋に絡んだロープによって頸動脈が圧迫され、脳への血流停止による脳酸欠死というところです。死後およそ一時間というところですかね」

「何か不審な点は発見できませんでしたか」

「つまり、他の場所で殺された後に偽装工作として、マシンに括りつけられたような跡が見られなかったどうかということですね」

「お察しの通り」

「こういった場合ではよくあることなので、その点は念入りに調べました。結論は解剖の結果を踏まえて慎重に判断しなければなりませんので、私の管轄を外れます。私は事故現場の証拠を集めたり保存したりするのが任務ですから。ただ、個人的見解でよろしければ……」

「どうぞ、それで結構です」

「まずは首筋を見ていただきましょう」

 臨検医が指し示す首筋に注目するコレット。

「ごらんの通り、ロープの絡んだ箇所の下側に紫斑が見られると思います」

「そう言えばそうですね」

「この紫斑が直接の死因となったもので、頸動脈にかかっているのが判ります。これはつまり、首が締って死んだか気絶した後でロープが緩んでずれたか、或は誰かに首を絞められて殺された後で、改めてロープに吊るされたことを意味しています」


 医師は手近なロープを取って、コレットの首に巻くようにして軽く絞めて見せた。

「人の首を絞めて殺そうとした場合の絞殺班は、被害者と犯人の身長差、或はどのようにして首を絞めたかによって変わってきます。例えば天井の張りに渡したロープで吊るし首にするとかですね。もし背の低い犯人が背後から襲った場合、このように丁度鎖骨の上辺りにかかります。この位置はミシェールの場合と同じですね」

「つまりミシェールは自分より背の低い相手に首を絞められた可能性があるということですね」

「あくまで可能性ですがね……」

「ところで、ロープの位置と紫斑の位置がずれている点ですが、本当は事故で首が締まってぐったりとなった後で、ずれたということはありませんか」

「否定はできません。解剖してみないことには結論は出せませんから。最初に申しました通りに、これはあくまで私個人の見解なのです」

「わかりました。どうもありがとうございました。あ、そうだ。膝の擦り傷の鑑定をお願いしておきます」

「擦り傷? ああ、これですね……。判りました。調べておきます」

 自分なりの調査を一通り終えたので、被害者のそばを一旦離れて、発見者達の証言を取ることにした。

「発見者達とミシェールと同室の者は集めたのか?」

 配下の捜査員に確認する。

「はい。隣の部屋に」

「よし。早速尋問しよう」

「司令官に報告は?」

「後だ。記憶が鮮明なうちに証言をとっておくのがセオリーだよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ