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銀河戦記/鳴動編 第一部  作者: 神崎理恵子
第一部
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第六章・カラカス基地攻略戦 Ⅶ


 その頃サラマンダー艦橋で待機するパトリシアは、じっとパネルスクリーンに映る惑星を凝視していた。

「敵守備艦隊に動きはありませんか?」

「いえ、ありません。軌道ビーム砲の射程内に陣取ったまま動こうとはしません」

「予定通りですね……」

「我が部隊は、このまま動かないでいいのでしょうか」

「我々の任務は敵の注意をこちらに引き付けておくことです。こちらから攻撃を仕掛けることはしません」

「しかし敵が攻撃に転じたら?」

「それはまずないでしょう。敵守備艦隊の司令官は、温厚実直なダンヴィッド・バンダイン少将。性格は攻撃より防御に徹するタイプです。危険を冒してまで出て来ることはないでしょう」

「それでも出てきたらいかがなされますか?」

「もちろん逃げます」

「逃げる?」

「そうです。作戦が成功するも失敗するも、我が本隊は戦うことなく予定時刻を過ぎればいさぎよく撤収せよ。というのが少佐の指令ですから」

 オペレーター達は互いに目を合わせて肩をすくめていた。

「あれから三時間になるわね」

 レイチェルがパトリシアに声をかけた。

「はい」

「万事順調にいっていればそろそろ連絡が来るころかしら」

「そうですね。作戦予定X時までには三十分後です」

 その時通信が入った。一斉に通信士に注目する士官達。

「突撃部隊より連絡。敵基地コントロール塔の占拠に成功したとのことです」

 艦橋の士官達が小躍りして歓声をあげた。

「やったわね」

 レイチェルがパトリシアの肩に手をおいて微笑みかけた。

「はい」

「作戦の第二段階に移りましょう」

「そうですね。軌道粒子ビーム砲を回避するため部隊を散開させます」


 一方管制塔を占拠したアレックス達は、軌道衛星砲の発射準備に取り掛かっていた。

「味方部隊は?」

「作戦の第二段階に入っております。この角度からなら軌道粒子ビーム砲を発射しても被害はでません」

「よし。軌道粒子ビーム砲の発射準備だ。目標は、敵守備艦隊」

「了解。軌道粒子ビーム砲、発射準備にはいります。目標、敵守備艦隊」

「エネルギー回路解放。軌道砲へエネルギー充填開始」

「敵艦隊捕捉。距離十七宇宙キロ、発射角調整値入力」

 中央パネルスクリーンに投影されたそれぞれの軌道砲の数値が次々と変わっていく。やがて修正完了した軌道砲からロックオン表示されていく。

「一号機から十二号機まで全機発射体制に入りました」

「まず威嚇攻撃を行うとしよう。一号機、敵守備艦隊すれすれに目標修正だ」

「了解。一号機の発射角微調整開始、上下角を四度ずらして固定」

「発射OKです」

「よし。発射!」

「発射します」

 軌道ビーム砲から一条の閃光がほとばしる。


 守備艦隊の艦橋。

「後方よりエネルギー波急速接近!」

 オペレーターが叫んだ。

「何だと!」

 守備艦隊のすぐそばをすれすれに通過するビームエネルギー。

「軌道ビーム砲が発射されました」

「馬鹿な。味方を撃つつもりか」

「司令! 敵より入電です」

「読んでみろ」

「読みます」

『補給基地はすでに我々が占拠した。軌道ビーム砲の餌食になりたくなければすみやかに降伏せよ』

「以上です」

「なんだと! いつのまに敵の手に落ちたのか」

「わ、わかりません。基地が完全に敵の手に落ちたのかどうかは不明ですが、少なくとも軌道衛星砲のコントロールを握られてしまったということは確かです」

「くう……。一戦も交えずに降伏しろというのか」

「閣下。軌道衛星ビーム砲を奪われてしまった以上、戦況は我が艦隊の方が不利です。もはや降伏か逃亡かのどちらしかありません」

「降伏か逃亡だと?」

「どうやら敵艦の数は情報通りの二百隻と少数ですし、軌道ビーム砲を避けるために散開しています。基地を放棄して中央突破を図ればそれほどの被害を受けずに撤退することができます」

「仮に撤退できたとしても、基地を敵に渡したとなれば厳罰は必至である。それに基地に残した部隊を見殺しにしろというのか」

「それはそうですが、あくまで基地防衛にこだわり、より多くの忠実な部下達を無駄死に追いやるのは閣下の不徳とするところではありませんか。ここは涙をのんで撤収し、捲土重来けんどちょうらいをお計りくださいませ」

「捲土重来か……果たしてその機会があるかどうか」

「閣下……」

「わかっている。ここは撤収する。紡錘陣形を取りつつ、最大戦速で敵の包囲網を突き崩して脱出する」

「了解!」

 速やかに撤退行動に入る守備艦隊。

「それにしても、アレックス・ランドール……またしても奴の術中にはまったというわけだ。ただ者ではないな」

「二十分の一以下の艦艇でありながらも、平然と作戦遂行を果たしてしまうなんて、よほどの自信家か、さもなくば楽天家のどちらかですね。尋常な精神の持ち主ではないでしょう」


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