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銀河戦記/鳴動編 第一部  作者: 神崎理恵子
第一部
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第五章・独立遊撃艦隊 Ⅵ


 自室に戻ったアレックスは窓から艦隊運行の様子を眺めていた。

 ドアがノックされた。

「入りたまえ」

 パトリシアが、紅茶カップを乗せたトレーとポットをワゴンに乗せて、入ってきた。

「お疲れさま。紅茶はいかがですか」

「ありがとう」

 パトリシアが入れた紅茶を堪能するアレックス。

 彼女が副官として来る前は、レイチェルがやってくれていたものだった。

「どう思うかね、今回の訓練の成果は」

「正確な報告を聞くまでは何とも言えませんが、初陣としてはまあまあの出来じゃないでしょうか」

「君が作ってくれた戦闘訓練のシュミレーションによる綿密な作戦マニュアルのおかげだよ。それに従えば艦隊リモコンコードなしでも十分指揮運営が可能だからな」

「いいえ、隊員が司令官の言葉を信じて、真剣に訓練に従事したからですわ。わたしはほんの少しのお手伝いをさせて頂いただけです」

「謙遜しなくてもいいよ。君の功績には感謝する。今後ともよろしく頼む」

 アレックスは紅茶カップを机に置き、手を差し伸べて握手を求めた。

「はい。わたしでよければ」

 その手を握りかえした。そして、そのまま寄り添って、唇を合わせて抱き合った。

 長い抱擁のあとにアレックスはささやくようにいった。

「君が来てくれたおかげで、僕達の結婚も少しは早まるかもしれないな」

「そうなるように努力しますわ」

「うん」


 アレックスは司令室に、技術部システム管理課プログラマー、レイティ・コズミック中尉と、技術部開発設計課エンジン担当、フリード・ケイスン中尉を呼び寄せた。

「エンジンの具合はどうだい?」

「はっきりいって、最悪です」

 ハイドライド型高速戦艦改造Ⅱ式のエンジン制御コンピューターのシステムを解析していたレイティが即座に答えた。

「そうか……」

「エンジン制御システムなんですが、開発者が数万回にわたるコンピューターシュミレーションによって最も最良な状態をパターン化してROMにインプットしているようです。実際の艦隊運行においては、その時々の状況から最も近似値となるパターンをROMから選びだしてエンジンを制御しています。ところが搭載エンジンの反応速度にROM読みだしから制御までの反応速度が追い付かないのです。つまり完全に合ったパターンがあればいいのですが、ほとんどが近似値を選びだす必要がありその時間が掛かり過ぎます。それが特に艦隊リモコンコードになると顕著に現れてくるのです。艦隊が要求するエンジン制御命令と自身の最良のエンジン制御命令に大きなギャップが生じますから」

「高性能エンジンゆえの憂鬱というところか。シュミレーションと実戦ではまるで違うからな。実際の戦闘に参加したことのない技術者の作るものはそんな程度のものということ。で、対策は?」

 レイティに変わってフリードが答えた。

「メインシステムはとりあえずそのままにしておいて、サブシステムとして学習機能を持った回路を並列に接続して同時処理させていきます。といいましても当分は、メインシステムが実際の行動パターンを決定するのですが、メインシステムが決定した行動の裏で、『俺だったらこうするのにな』と自分なりに判断し学習メモリに蓄積していくサブシステムがあるというわけです。つまりすでにあるパターンを利用するのではなくて、艦がその時々にとった行動をパターンとして学習させていきます。最終的にはその学習したパターンによってエンジン制御して行動できるようになります」

「サブシステムの構築にどれくらいの時間が必要だ」

「回路の設計に半年、実際の構築に三ヶ月、都合九ヶ月は必要かと思います」

 フリードの後を受けてレイティが答える。

「システムプログラムの方は、メインプログラム作成に四ヶ月と各種モジュール作成が三ヶ月、試験艦として五番艦の『ノーム』を使用してのデバッグに二ヶ月、そしてフリードが構築した回路にインストールして再調整を行い、実際に稼動するまでに十二ヶ月です」

「気の長い話しだな」

「サラマンダーのエンジンは、共和国同盟最高の性能を誇るハイスペックマシンながら、手のつけようのないじゃじゃ馬でもあります。手懐けるにはそれなりの覚悟と期間がひつようということです」

「ま、ともかく。君達二人には協力してハイドライド型のエンジン制御の改良をやってくれたまえ」

「わかりました」

 エンジン関連は二人に任せるしかない。

「原子レーザー砲の運用についてはどうか?」

 と、もう一つの問題に入った。

「それは問題ないな」

「と、いうと……」

「俺が設計したからだ。製作者が設計通りに作ってさえいればな」

「なるほど……」

「とは言っても、実際に試射してみなければ解らないこともあるし、操作するものが間違ったことをすることもある」

「そうだな。経験を積んで慣れていくしかないな」

「その通り。まあ、ともかく詳細なデータは後日にまとめて報告するよ」

「ああ、頼む」


 こうしてアレックス率いる独立遊撃艦隊の初めての戦闘訓練は無事に終了した。


 第五章 了

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