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銀河戦記/鳴動編 第一部  作者: 神崎理恵子
第一部
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第三章・模擬戦闘 Ⅳ


 首都星トランターから四・七光年ほどのところにサバンドール星域、クアジャリン星区共和国同盟軍演習場がある。一帯は希薄なガス状物質が取り囲み、索敵レーダーの能力を著しく減少させる。同盟軍の艦搭載の索敵レーダーは、演習場全域を見通してしまう能力を持っていたが、ガスのためにその性能は五十分の一ほどに落ちていた。それがかえって演習には丁度よい索敵距離と判断されたのである。

 演習場内にはいくつかの施設が点在する。最大の施設であるゴルディッツ要塞基地を含めて十八の基地と二十七の各種施設がある。ゴルディッツには、演習場すべての施設を統括運営する本部が置かれており、物流センター・病院・レクレーション施設など演習場を円滑に機能させるための施設が充実していた。また、それ自体も要塞攻略戦用として模擬戦闘に参加、有事にはそのまま防衛基地として機能する。

 演習場の中でも最も外れに位置したところにある基地が、今回アレックス達に与えられた第十二番基地である。基地は小惑星上に施設されており、基地全体を覆うエネルギーシールドが、呼吸するための大気を閉じこめ、かつ有害宇宙線の侵入も阻止しているために、気密服なしに生活することが可能である。とはいえ小惑星の質量が小さいので重力は皆無に近く、長期の滞在は不向きであったので、演習時以外は使用されていない。

 一足先に到着した技術将校のレイティ達によって、凍結されていた基地のシステムが起動されて、現在第十二番基地は活動を再開していた。

 管制塔内でコンピューターシステムをいじりまわしているレイティ達。窓からは、空全体を覆うエネルギーシールドが虹色に美しく輝いている様が眺望できる。

 そのエネルギーシールドの一角が、火花を散らしたかと思うと、黒い艦隊が突如出現した。エネルギーシールドを突破することのできる突撃強襲艦である。その数は二十隻で、煙幕弾を投下しながら基地の滑走路へ強行着陸を敢行する。着陸した艦からは、迫撃砲と麻酔銃を携えた白兵部隊が飛び降りてきて、管制塔へ突撃を開始した。

 その部隊を指揮していたのが、ゴードン・オニールであった。

「第一小隊は管制塔へ突入、第二・第三小隊は基地格納庫、第四小隊はこの場で艦の防衛にあたる。全員作戦にかかれ!」

 ゴードンの号令以下、白兵部隊はそれぞれの目標へ向かって突撃を開始した。

 ゴードン自らも、第一小隊に参加して管制塔に突入する。ゴードンを先頭に、麻酔銃を携えた兵士が階段を昇り詰めていく。


 管制塔指令室。

「これでいい。信号を送ってみろ」

 レイティが、助手に向かって合図した。

 助手は、携帯端末を操作している。

「どうだ、うまくいったかな」

 といいながら端末のディスプレイを覗いてみるレイティ。

 やがてディスプレイに基地周辺の勢力分析図が現れた。

「成功です」

「よくやったぞ。これで俺達の任務は終わった」

 その時、ドアが開いてゴードンが入ってくる。

「手を上げろ!」

 麻酔銃を構えるゴードン。

「おい。よせよ、俺達は敵じゃない」

「わかっているが、一応訓練の一環でね。おとなしく床に手を付いて腹這いになってくれないか」

「わかったよ……やればいいんだろ」

 レイティは、指示された通りに従った。


「隊長。あれを」

 隊員の一人が窓の外を指差した。

 そこにはエネルギーシールドの一部が開いて、戦闘機の護衛に守られるようにアレックス達の艦船が進入してくるところだった。

 空を仰いで、着陸体制に入った艦隊を見つめるゴードン。

「ついに来たか」


 会議室に集まった参謀達。

「レイティ。進行状況はどうか」

 会議開始早々、アレックスがレイティに確認をとった。本作戦中、作戦の成否の鍵を握るもっとも重要な部門を担当しているからである。

「はい。システムの改造は完了、お望みの通りに」

「ご苦労だった。戦闘開始時間までゆっくりと休んでくれ」

「それではお言葉に甘えさせていただきましょう」

「ゴードンの方は?」

「万事怠りなしだよ」

「結構。では、最後の打ち合わせに入ることにしよう」

「おい、俺には休憩はなしかよ」

「鉄の心臓を持っているおまえには必要ないだろう」

「よく言ってくれるぜ」

「まず最初に、作戦に参加する艦艇の確認から始めよう」

「はい」

 パトリシアが立ち上がって、作戦に参加する艦艇の全容、艤装やミサイル弾薬類の搭載状況、そして搭乗する乗員達の配置状況を報告する。


 第十二番基地内に鳴り響くサイレン。

「まもなく、当基地を放棄して、敵基地攻略作戦に出発する。全艦発進準備」

 基地に待機する全艦隊の艦橋に、司令を発動するアレックスの声が届く。


「総員、退去完了しました。基地には誰も残っていません」

 パトリシアが報告した。

「よろしい。では、行くとするか」

「はい」

「全艦。発進せよ」

 基地をゆっくりと上昇をはじめる艦隊。

 艦隊とはいっても模擬戦闘用に特別に作られた練習艦がほとんどであり、無重力の宇宙環境における戦闘状況をよりリアルに再現できるようになっている。反重力

慣性推進装置により、大気中でも一度加速度を与えると摩擦によって停止することもなしに永久に加速方向へ進んでいく。空中を浮遊するように滑らかに移動することができる。

 艦橋の指令席に陣取りスクリーンを見つめているアレックス・ランドール。

 そのそばに寄り添うように立っている副官、パトリシア・ウィンザー。

「いよいよ、はじまりましたね」

「ああ、これまでの半年間練ってきた作戦が日の目を見ることになるわけだ。鬼と出るか蛇と出るか」

「大丈夫です。きっと成功しますよ」

「そうだといいんだがな。敵艦隊の予想進撃ルートを避けつつ、全艦全速力で敵基地へ向かえ」

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