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銀河戦記/鳴動編 第一部  作者: 神崎理恵子
第一部
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第十五章・収容所星攻略 Ⅱ


「タシミール到達まで、二十四時間」

「パネルスクリーンにタシミールの周辺地図を出してください」

 すぐに地図は現れた。

「Pー300VXを出しましょう」

「索敵ポイントは?」

「惑星軌道周辺と、敵部隊が展開しそうな後方域、このあたりです」

 といって惑星周辺地図の索敵ポイントを指し示した。

「哨戒艇はもう一艇ありますが?」

「我が艦隊の後方哨戒に出します。背後から襲われてはたまりませんからね」

「そうですね」


 パトリシアの命を受けて、セイレーンから三艇の哨戒艇が出撃した。

 攻撃能力がない超高価な哨戒艇ならば護衛戦闘機が付くところであるが、ステルスという性能から護衛は付かない。戦闘機が索敵されたら意味がないからである。

 その艦影を見つめながらリーナが呟いた。

「確か一艇あたり戦艦百二十隻分もの開発予算が掛かっていると聞きましたが……」

「その通りです」

「それだけの効果はあるのでしょうか? 私なら戦艦百二十隻の方に触手が動きますけどね。索敵なら一番安くて早い駆逐艦を派遣すればいいんじゃないかと思いますけど」

「そう考えるのが妥当でしょうね。しかし、それでは敵を発見しても、同様に敵に発見される可能性が高いのです。歪曲場透過シールドは敵に発見されることなく、敵だけを発見しつつその場に留まって引き続き敵の情勢を逐一監視することができます。敵艦隊に察知されて会戦となれば、戦艦百二十隻以上の損害を被ることもありえます。そう考えると戦艦百二十隻分の開発費も無駄にはならないでしょう」

「肝心な探査波が透過シールドで透過されて検知できないということは起こらないのですか?」

「それは大丈夫です。探査波はちゃんとシールドを透過してくるわけですから、検知は可能でしょう」


 やがて哨戒艇からの報告が返ってくる。

「タシミール星周辺に敵艦隊の存在は見当たりません」

 というものだった。

「どういうことでしょう……」

 リーナがパトリシアと見合わせ首を傾げた。

「とにかく引き続き索敵を続行してください」

「了解。索敵を続行します」

 それから一時間ほど索敵が行なわれたが敵艦隊は発見できなかった。

「敵艦隊はとっくに撤退したのではないでしょうか? さっさと惑星に降下して捕虜がいないかどうかを確認なさってはいかがですか?」

「いえ。敵艦隊がいないからこそ用心しなければいけないのです」

「どういうことですか?」

「今回の作戦の根拠となった当初の情報に問題があるからです」

「情報に問題ですか?」

「その出所はどこだと思いますか?」

「統合軍の情報部と伺っておりますが……」

「なぜ統合軍の情報部なのでしょう。ここから一番近いのは我が第十七艦隊なのです。出撃前にレイチェル少佐に確認したところ、その配下の情報部では掴んでいなかったそうです。あのレイチェルさんでさえ突き止めていなかった情報を、どうして統合軍の方で掴んだのでしょう。おかしいと思いませんか?」

「そういえば……変ですね」

「ハンニバル艦隊のことを思い出してください。提督をカラカスから引き離す陽動作戦として、連邦軍はハンニバル艦隊を差し向け、ニールセン中将を動かして、提督の艦隊に迎撃を命じました。そうですよね」

「その通りです」

「今回も同様だと思います。ニールセンの元に捕虜収容所の情報を流せば、当然ランドール提督に救出作戦の命令が下されるでしょう。たまたまそれがわたしの佐官昇進の査問試験となったわけです。そもそもカラカス基地とその周辺星域が奪取された時点で、捕虜収容所として不適切になっています。言わば最前線に位置する場所にあるのですからね。通信施設のみ残して捕虜を移送するのが尋常でしょう」

「確かに疑問点があり過ぎますね」

 やっとリーナも納得したようだった。

「我々がタシミール収容所星にむかったという情報は、進撃コースも到着予定時刻も査問委員会に事前報告を義務付けられていますから、我々の行動はおそらく敵艦隊に筒抜けです。タシミールに上陸した頃合を計って急襲すれば、迎撃の余裕さえ与えずに壊滅できるはずです」

「なるほど」

「提督が貴重な哨戒艇を三隻も許可してくださったのも、その事を理解しておられるからです」

 パトリシアとリーナの会話は、同乗している監察官にも聞こえている。おそらくニールセン中将の息が掛かっているだろうが……。

 あえて名指しで謀略だと言い張るパトリシアであった。

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