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銀河戦記/鳴動編 第一部  作者: 神崎理恵子
第一部
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第十四章・査問委員会 Ⅵ


「出撃してよし!」

 出撃の許可を下すカインズ。

「了解!」

 前に向き直って下礼するパトリシア。

「全艦、出撃! 微速前進!」

 その命令を復唱し、機器を操作するオペレーター達。

「全艦出撃開始」

「微速前進!」

「機関出力、微速前進。推力15%」

「前方、オールグリーン。障害物なし」

 ゆっくりと進撃を開始する空母部隊。

「全艦異常なし」

「よし。進路をタシミール宙域へ」

「了解。進路、タシミール宙域」

「取り舵、十度。ベクトル座標を確認・入力」

「α3120、β367、γ9285」

「ベクトル座標確認・入力完了しました」

「これより亜光速航行に入る。全艦、亜光速へ」

「亜光速航行へ移行します」

「全艦、亜光速航行!」

 日頃からアレックスやスザンナ艦長のそばで、艦隊運用の指揮を目の当たりにしていただけに、パトリシアの指揮には微塵の惑いもなかった。記憶力にかけては艦隊随一を誇るだけに、自信のほどを窺がわせる表情を見せていた。

「提督が出られております」

 通信士が進言した。

「スクリーンに出して」

「スクリーンに出します」

 正面のスクリーンに、昇進して将軍の一人となったばかりのアレックスの姿が映し出された。提督というオペレーターの声に、よくぞここまでという頼もしい感情に溢れた。そして今、その期待に応えるべく出撃できる思いに感謝したい気分だった。

「パトリシア、実戦を指揮する初陣だ。気を引き締めてな」

「はっ! 頑張ります」

 アレックスの横から顔を出して激励するのはジェシカだった。

「朗報を待っているわよ」

「ご期待に応えます」

「祝杯を用意して待っているからね」

「はい!」

「それじゃね」

 カッと踵を合わせて最敬礼するパトリシア。

「行って参ります」

「うむ」

 敬礼を返して答えるアレックス。

 そして通信が切れた。


「機関出力82%、亜光速に到達しました」

 オペレーターの声に、改めて姿勢を正し緊張の面持ちで下令するパトリシア。

「これよりワープに入る。全艦ワープ準備」

「全艦ワープ準備」

「ワープ航路、設定完了」

 指揮官としてワープ命令を下すのははじめてのことであった。しかし訓練は何度となく経験しているし、シュミレーションも充分すぎるほど行なっている。

 自信はあった。

「全艦に伝達、リモコン・コードを旗艦セイレーンに同調。確認せよ」

「全艦、リモコン・コードを旗艦セイレーンに同調させよ」

 正面のパネルスクリーン上に部隊の各艦艇を示すマーカーが赤く点灯している。それがコードを設定完了した艦から次々と青の点灯に変わっていく。それらがすべて青に切り替わった。

「全艦、リモコン・コードの同調完了。ワープ準備完了しました」

「よろしい。これより三分後にワープする」

「ワープ三分前、設定します」

「ワープコントロールをリンダ・スカイラーク艦長に任せる」

「ワープコントロールをスカイラーク艦長へ委譲します」

 艦隊リモコン・コードを使用して、旗艦に同調させた場合には、その操艦のすべてが旗艦艦長のリンダ・スカイラークの双肩にかかることになる。

「ワープコントロールの委譲を確認。これより全艦ワープのオペレーションに入ります。ワープ、二分三十秒前!」

 これまでに何度となく全艦ワープを取り仕切っているリンダだけに、何の躊躇もなくコントロールパネルを操作している。もちろん他のオペレーター達も一抹の不安を抱くことなく安心しきっている。

 オペレーター達がワープ体制に突き進むその姿を指揮官籍から監視しているパトリシア。リーナから手渡された書類に目を通してサインして返している。

「ワープ、二分前。総員、着席ないし安全帯着用。ワープに備えよ」

 ワープには少なからず衝撃がある。身体を振り飛ばされないように着席するか、立ち作業の機関部要員などは安全帯で、艦の筐体に固定させる必要がある。

 艦内の各員それぞれが緊張の面持ちで身体の固定に取り掛かっていた。

「ワープ一分前。最終確認に入ります。ワープ座標設定、ベクトル座標α3120、β367、γ9285」

「ワープ座標設定を確認。オールグリーン、ワープスタンバイOK!」

「艦隊リモコンコード設定よし。全艦、ワープ体制問題なし!」

「旗艦セイレーン、機関出力最大へ。ワープ三十秒前!」

「兵器への動力供給をカットします」

 ワープ実行中は一切の戦闘が行なえない。兵器に動力を供給しても意味がないのでカットして、その分をワープエンジンなどに回すわけである。カットされるのは兵器だけではない、ワープに少しでも余剰電力を回すために、照明などあらゆる方面で電力削減が行なわれる。

「各ブロックの電力をセーブします」

「最終カウントダウン開始、十秒前、九、八……」

 さすがに全員が緊張して、息を呑んでいる。

 パトリシアも大きく深呼吸をしている。次なる下令のためである。

「……三、二、一」

 そしてパトリシア。

「全艦ワープ!」

 リンダが復唱する。

「全艦ワープします!」


 宇宙空間を進む第十一攻撃空母部隊。

 それを取り囲む空間が一瞬揺らいだ。

 そして次の瞬間には、部隊全艦の姿が亜空間に消え去った。


 第十四章 了

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