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銀河戦記/鳴動編 第一部  作者: 神崎理恵子
第一部
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第十四章・査問委員会 Ⅳ


 翌日の早朝。

 第十一攻撃空母部隊が母港としているカラカス基地の発着港。

 旗艦軽空母セイレーンの搭乗口でパトリシアを出迎える一同があった。

 副指揮官のリーナ・ロングフェル大尉、同ジャネット・オスカー大尉、セイレーン艦長のリンダ・スカイラーク中尉他、多数の参謀達である。なお準旗艦高速軽空母セラフィム搭乗のジャネットは宇宙に出たところで、自分のセラフィムに戻る予定である。

 パトリシアの到来に一斉に最敬礼する一同。

「お待ちしておりました。ウィンザー大尉」

 一同を代表してセイレーン搭乗の副指揮官のリーナが挨拶した。

「よろしくお願いします」

「全艦発進準備完了、いつでも出撃できます」

「ありがとう。出撃の前に艦内の施設を確認したいのですけど。特に艦載機の発着ベイを一度見ておきたいのです」

「わかりました。艦長のリンダに案内させましょう。リンダ、案内して差し上げて」

「かしこまりました」

 艦長のリンダが先導して歩き出した。その後についていくパトリシア達。

 ジャネットと副艦長は、先任指導教官のカインズ中佐を待つために居残ることになっていた。

「私どもは、先に艦橋に戻って出撃の準備を致します」

 艦橋へ上がるエレベーターの前でリンダ達参謀と分かれる。

「艦載機発着ベイはこちらの方角です」

 エレベーター前から艦首の方向に続いている通路を行った先が艦載機発着ベイだった。

「ここです」

 リンダに伴われてやってきたパトリシアを見るなり、最敬礼をほどこして歓待の意を表す甲板作業員達。

 それらの人々の間を進んでいく二人が通り過ぎた後ろの方では、囁くような声でパトリシアを眺めながら語り合っている。

「おい。今のが新しく来た司令官か?」

「違うだろ。佐官昇進試験だよ。今度の収容所捕虜救出作戦の指揮を執ることが与えられた試験なんだと」

「へえ。何にしても、士官学校出たばかりで、もう少佐殿か。ランドール提督の配下の士官さまは、ご活躍だねえ」

「あほな事言ってるんじゃないよ」

「情報参謀のウィング少佐や、我らの部隊司令官兼航空参謀フランドル少佐に比べれば、あまりパッとしないんだよな。強烈な印象のあるランドール提督だけに、その副官となると影が薄くなるって感じだな」

「それは言えてるな。しかし一応作戦参謀の一人らしいぜ」

「で、その作戦参謀さんが今回の任務の総指揮を執るわけだよ。大丈夫かな……俺達の命を握っているんだぜ」

「そうだな……」

 心配そうな表情でパトリシアの後姿を見つめていた。


 発着ベイのほぼ中央に来たところで立ち止まるリンダ。

「今立っているところは、艦載機が発着する場所です。この艦に代表されるセイレーン級の軽空母は、より多くの艦載機を搭載するために、発艦と着艦を兼用しています。ですからしっかりとした管制が必要です。発着の管制を行なっているのがあちらです」

 と入ってきた入り口の上の方にあるガラス張りの部屋を指差した。

 その部屋の中にいる一人の女性士官が手を振っているのが見える。

「彼女がここの発着管制の責任者のソニア・ビクター中尉です」

 パトリシアが改めて視線を送ると、軽く敬礼しているのが見えた。軽く敬礼をして返すパトリシア。

「さて、ご覧の通りに周囲の壁際に艦載機の格納庫があります。自動格納システムによって出し入れを行ないます。搭載機数は三十機です。主戦級の攻撃空母の搭載機数の平均百二十隻に比べると見劣りはしますが、高速性を出すためにエンジン部に艦体の容積をよけいに配分した結果そうなったようです。その分を軽空母の数を増やしてカバーしております」

「艦の速力は?」

「艦載機の搭載状態や燃料・弾薬の備蓄量で変化しますが、満載状態で四十五スペースノットです。ちなみに新型艦のセラフィム級軽空母では五十スペースノットで、ドライブスルー形式で発艦と着艦を同時に行なうシステムを用意しており、着艦ベイから発艦ベイに移動する間に、弾薬や燃料の自動補給が可能です。効率的な発着を行なうために発着ベイの容積も最小限で抑えられています。その分搭載機数も四十機と増えております。艦の設計はフリード・ケイスン大尉です」

「なるほど、フリードさんだけあって、さすがですね。無駄な設計をなさらない」

「まったくです。技術革新というと大概ケイスン大尉のお名前が挙がりますね」

「天才科学者の本領発揮というところですか」

「そうですね。それではパイロットの控え室を紹介しましょう」

 発着ベイから控え室へと移動する二人。

 そこにはジミー・カーグとハリソン・クライサーの両撃墜王が待機していた。

「あら。ジミーさん、ハリソンさんもいらしたんですか?」

「よお、パトリシアか。少佐への査問試験だってな」

 ジミーが親しげに話しかけてきた。士官学校時代の先輩後輩の間柄である。もちろんパトリシアを二人に紹介したのはジェシカ。

「はい」

「さすがにアレックスが目を掛けただけのことはあるな」

 ハリソンが言葉を繋げる。

「お二人だって少佐になられて、ご活躍なされているじゃありませんか」

「あはは。まあ、アレックスのおかげで何とか昇進しているってところかな」

「で、噂ではまたニールセンの野郎が何か企んでいるらしいな」

「そうそう、ほんとなのかい?」

 いきなり話題を変えてくる二人だった。

「それは何とも言えません。噂は噂ですから」

「火のないところに煙は立たずだろう?」

「ええ……まあ。それはそうですが」

 自分も考えてはいたことではあるが、面と向かって肯定などできるわけがなく、言葉を濁すしかなかった。

 三人が仲良く会談しているのを、邪魔しないようにしながら自動販売機で飲み物を買っているリンダ艦長。やがてカップを両手に二つ抱えて戻ってきて、その一つをパトリシアに差し出した。

「どうぞ」

「あ、ありがとう。頂きます」

 カップを受け取って一口。

「おいしい!」

「インスタントだけど意外とおいしいんですよね。これジェシカの好みなのよね」

 リンダが解説している。これまで敬語を使っていたリンダであるが、同じ士官学校出という事もあり、ジミー達を前にして親しげな態度に変わっていた。

「こうしていると士官学校の学食を思い出しますね」

「これでアレックス達がここにいれば完璧だ。何で一緒に来なかったんだ」

「それは無理ですよ。直属の上官や関係の深い士官は同行できないことになっていますから」

「残念だな……」

 しばらく無言で士官学校時代を懐かしむ雰囲気が漂っていた。


 その頃、セイレーン搭乗口に遅れてやってきた一団があった。

 カインズとパティー・クレイダー、その他の査察監察官であった。

「ようこそお出でくださいました。カインズ中佐殿」

 ジャネットとセイレーン副艦長のロザンナ・カルターノ中尉が出迎えていた。

「ウィンザー大尉は?」

「艦長が案内して艦内の視察をされてます」

「そうか……。まあいい、我々の部屋に案内してくれ」

「かしこまりました」

 先に立って案内するロザンナ副艦長。

「それにしても……ここは相変わらず女性ばかりだな」

「ええ、まあ……戦術士官(commander offiser)は全員女性ですね」

「ジェシカの志向なのか、それとも提督の指示なのか……」

「両方なんでしょうね。フランドル少佐は、より多くの女性に活躍の場を与えたいと日頃からおっしゃってましたし、提督も能力のあるものなら男女を問いませんからね」

「その結果がこれか……自由な風潮があるとはいえ、私には馴染めない環境だ。かといって女性蔑視というわけではない。個人の趣向の問題だ」

 ドリアード艦橋の女性オペレーター達を見て判るように、男女の能力には差は見られない。逆に女性特有な細やかな心配りに感心させられる事もある。それこそが提督が意識して女性を優先的に配属させている所以なのかも知れない。

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