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0からの始まり

初投稿で初の作品になります。

前書きって何書こうかすごく悩みますね。

最近従属ふりったーという曲にハマってます。

多分書くべき内容間違えてますよねこれ。はい。

 痛い。痛い。酷い頭痛が僕を襲う。両ひざを地につき、頭を抱える。突然、目の前に白いワンピースを着た、長髪で華奢な女の子が現れる。彼女の顔に強烈なデジャブを感じる。彼女は助けるそぶりを見せず、僕を見捨てて村へ歩いて行ってしまった。痛い。助けて。助けて──。




 目を覚ますと黒髪の綺麗なお姉さんがそこにいた。


「あ、やっと起きた! 大丈夫? 痛いところとかない?」

お姉さんが肩を何度も揺する。まだ鈍く痛い脳が揺すられガンガンと響く。


「だ、大丈夫です……多分」

苦笑いでそう答えた。言葉を聞き安心したのか彼女は肩から手を離した。


「君、ここらじゃ見ない顔だけど、旅の人?」


「そうなん……ですかね?」


「どうなんですかね?」

驚きと笑いまじりの表情で彼女はそう答えた。


「僕、ここに来るまでの記憶がないんです……」

驚いた表情をしたまま硬直している。


「近くの丘で目覚めて、小道を道なりに進んだら村が見えて……それから、突然頭痛がして、髪の長い女の子が突然現れて……」


「現れて……?」


「……そこからは気絶してもう覚えてないです……」


「もしかしてこの子だったりする?」

彼女が扉を開くと、15歳くらいの黒髪で幼顔の女の子が、びっくりした表情をして現れた。おそらく聞き耳を立てていたのだろう。扉を開かれるや否や壁に隠れ、ひょっこりと顔だけを出した。


「ちょ、ちょっとママ何するの!」


「何って自己紹介よ」

そういいながら彼女は女の子の手を掴み勢いよく引いた。


「わわ!?」


「あ、ごめんね。私の名前はサキよ。よろしくね!」


「よ、よろしくお願いします」

僕とサキさんは一様に女の子を見つめた。数秒の沈黙が彼女に重圧としてのしかかる。


「カ、カナです……」

顔を真っ赤にしながらうつむき加減で彼女は言った。


「ごめんね~この子外の人に慣れてないの。で、君の名前は?」


数瞬考え、ドキッとした。名前がはっきりと思い出せないのだ。それだけじゃない。過去のなんの記憶も思い出せない。


「サ……」


「サ……?」


「サ……サク、ヤ。サクヤ、です」


「違うよ」


「え……?」


確かに聞こえたその声は僕の名前を否定した。この場の誰も、僕さえも、僕の名が分からなかったはずなのに。


「そう、サクヤっていうのね!」

サキさんがはきはきと答える。


「ほらカナも!」


「サ、サクヤさん、よろしくお願いします」


「は、はい」

戸惑いながら返事をする。


「この家には他に人はいらっしゃるんですか?」


「私たち二人だけよ?」


「そ、そうですか」

記憶を失ったショックに幻聴でも聞こえだしたのだろうか。気にしても仕方ないと割り切ることにした。そういえば頭痛はもうすっかり軽くなっている。


「何か思い出せることがあるかもしれないので、村を見て回ってもいいですか?」


「いいよいいよ! 案内ならカナがするから、8時には帰ってくるのよ!」


「ええ!? ママ!?」


「カナも早く人見知りを克服しなきゃ、大都に行って魔導書店を開くなんて夢、叶いっこないわよー」


また顔を真っ赤にしながらうつむきだした。

「じゃ、じゃあまずその……服を……」


「え? あっ」

あっ。



「ご、ごめんねさっきはーあははー……」


うつむきながらも静かにこくりと頷いた。村に入ってすぐにあるサキさんの家に運んでくれた際、泥まみれの服と体を見かねたサキさんが、僕の服を脱がせて拭いてくれたらしい。服はサキさんが古着を繕ってくれた。どうやら一定限度の体裁は保たれたらしい。


「あ、あの、村の紹介と一緒に私の用事を済ませちゃってもいいですか?」


「全然いいよ! 大丈夫!」


「じゃ、じゃあまず雑貨屋から」


カナの先導で雑貨屋に到着した。


「日用品は大体ここで揃えられます。ないものは皆さん1から作っちゃいますね」


「へぇすごいね!」


「いえ全然……私は工作が苦手なんで、ママにいつも作ってもらってるんです」

カランコロンとドアベルが鳴る。


「いらっしゃい! そのかわいい子は誰だい?」


「こんにちはイイダさん。 サクヤさんは男の子だよー」


「僕、髪が長いしひょろひょろしてるから昔からよく間違われるんですよー」

笑い交じりに咄嗟に答えた。しかし僕にはその昔の記憶がない。自分でも何故こう返答したのかが分からない。脳は覚えていなくとも、口が、体が覚えていた。そう感じた。


「そうかそうかぁ。あのカナちゃんがよその男を連れてデートかぁ。成長したなぁ、おじさんもう感涙だよ」


「イ、イイダさん、デートじゃなくてただの案内だし、私だって男の子に村の案内くらい出来ます!」


「俺がここに移ってきた日には挨拶しただけで号泣してサキさんの後ろに隠れてたのに……立派になったもんだ……」


「い、いつの話してるんですか! もう10年くらい前の話でしょ!」


サキさんに連れられるまでは壁からひょっこり顔を出すのが限界だったカナだが、はたして成長していると言えるのだろうか。いやまあ泣かれていたら困ったが。


「ざ、雑貨屋の紹介はこれで終わりです!」

昔話がそんなに恥ずかしかったのだろうか、こちらを急かしてくる。


「でも用事があったんじゃないの?」


「あ、そうだった! ありがとうございます! イイダさん、この前頼んであった本は入荷できましたか?」


「ちゃんと仕入れてきたよー」


そういうとイイダさんはカウンターの奥の扉を開けガサガサと物を探し始めた。数秒後書物を手にして帰ってきたイイダさんがカナにそれを渡す。カナは一礼した。イイダさんが手渡した書物の表紙は赤い生地をベースに金色の装飾が施されており、おそらくタイトルと思われるものは見慣れない文字で何かが書かれていた。


「また何か必要なものがあったら言ってね」


「はい! ありがとうございました!」

元気よく別れの挨拶の言葉を発し店を後にする。


「それは何の本なの?」


「ナカト写本です!」


「ナカト写本?」


「あーえっと、魔導書の中でも有名なものだけど、知りませんか……?」


「ごめん、知らないみたい……」


「そっか……ちなみに魔法は何か使えますか?」


「魔法なんか使えるの……?」


魔法なんか、という言葉にカナは驚いた表情をした。

「例えばこれとかは?」


カナは人差し指を立てると、指先には蝋燭の灯のような火がたった。火はみるみるうちに火球になったり輪になったりと変形し続ける。呆気に取られているとカナが言った。

「ファイアっていう誰でも使える魔法なんですけど……?」


僕はカナの真似をして指先を立てるが、いつまで経っても火はつかない。困った顔をしてカナを見つめる。


「ど、どうやるの……?」


「魔法も忘れちゃったのかな……それじゃあ案内が終わったら私の部屋で一緒に魔法の勉強をしましょう!」


「う、うん。ありがとう」

その後は食堂、宿、家具屋などを案内してもらった。気付くと日はすっかり暮れていた。


「そろそろ帰らないといけませんね」

彼女は懐中時計を取り出しそう言った。



「ただいまーお母さん」


「おかえりカナ。サクヤ君は何か思い出せた?」


「すいません何も……けど楽しかったです!」


「そう、ならよかったわ! この子恥ずかしがり屋だから、上手く話せなくて気まずい空気になってたりしたらどうしようとか心配してたけど、大丈夫みたいね」

サキさんはカナの顔を見ながらそう言う。カナはニコニコとしていた。


「今日はお客さんもいるし、お母さん、ちょっと腕によりをかけたわよ!」


そういうと僕とカナの背を押しながらリビングに向かう。少し小さい食卓には、サラダやスープ、スパゲティにハンバーグなどが所狭しと並んでいた。


「「「いただきます!」」」


絶品の料理を口いっぱいにほおばる。


「そんなに食いつきがいいと嬉しいわぁ」

うっとりとした表情でそう言った。


「あー、そういえばサクヤ君。どこか泊まるあてとかはあるの?無一文みたいだけど」


「な、ないです……」


「じゃあここに泊まっていきなさい! ちょうど1部屋空いてるから、そこ使って」


「いいんですか?ありがとうございます!」


「サクヤさんサクヤさん。後で私の部屋に来て! 今日言ってた魔法のお勉強、一緒にしよ!」


分かったと二つ返事で答えると、カナは満面の笑みを見せ、いそいそと残った料理を食べ始めた。そんなカナの姿を見てサキさんはにやにやしている。負けじと僕も残りの料理をたいらげた。



 人差し指を立て強く念じる。


「ファイア!」

呪文を唱えると、指先にこぶしほどの大きさの灯がともった。


「すごい! 4回で成功しちゃったね! しかもこんなに大きい!」


「そ、そうかな?」

照れながら答える。誰にでも出来る呪文ではあるらしいが、それでも火の強さなどはなかなかなものらしい。


「それならー……ねえねえ、明日一緒に狩りにいかない? サクヤ君ならきっと狩り用の魔法もすぐ覚えられると思うな!」


「うん、いいよ」


「じゃあ早速狩り用の魔法を教えるね! まずはアイシクルから!」

そういうと静かに両手を胸の前で広げる。魔法を口にしなくても使えるのは使用者の熟練度の証だそうだ。手のひらの間にはみるみるうちに氷柱が出来上がっていった。カナが両手のひらを閉じると氷柱は粉々に砕け、霧散した。


「これがアイシクル! まずはサクヤ君も挑戦してみよ!」


「うん……アイシクル!」



「おおー! さすがだね!」


カナからは氷の魔法と突風の魔法を教わった。回転を加えた突風の魔法を使い、氷柱を安定した軌道で射出するというものだった。


「カナが教えてくれたおかげだよ!」


「えへへ。これで一緒に狩りに行けるね!」

無邪気な笑顔でカナは言った。勿論と返事をしたところで、サキさんにそろそろ寝なさいと促された。指示に従い、用意してもらった部屋に入る。部屋には背の低い机と椅子とベッドがあり、壁には地図が貼られていた。地図の地名のいくつかに赤線が伸びており、その先にはその地名の土地と思われる写真が貼られていた。ベッドに座り窓に目をやり、一人今日を振り返る。自分はどこから来たのか、何者なのか。あの女の子に感じたデジャブは何なのか。解決しようにも何も思い出せない。そういえばカナ、さん付けじゃなくて君で呼んでくれるようになったな。少しは仲良くなれたようで良かった。星空を眺めながらあくびを1つ。悩んでいても仕方がない。狩りの約束もあるため早くに寝ることにした。仰向けで布団に深く潜り込むと、次第に意識が遠くなっていった。夢の世界へ誘われたのと同時に聞こえた気がした。


「おやすみなさい」

お読みいただきありがとうございます。

更新は不定期になります。

評価、感想の方を是非ぜひ、よろしくお願いします。

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