クリスマスの朝
「はあはあ・・・・」
夜が明けた森です。
クロは、荒い息づかいをして、いつもの小川まで来ました。
「間に合ったあ・・・・」
すると、空から小さな白いつばさが見えてきました。
それはどんどん近くなるにつれ、大きくなっていきます。
「おーい!シローーー!!」
クロは陸からシロに向かって、手をふりました。
シロはそれを見て、一番近くのヒイラギの木にガサガサとおりてきました。
そして、地面におりました。
「クロじゃないか・・・?!満月の夜しか活動しないんじゃないの?もう朝だよ?大丈夫?」
クロはそれを聞いて、クスクスと笑いました。
(大丈夫?って・・・まるで私が太陽を浴びたら溶けるみたいな言い方じゃない・・)
「大丈夫。だって、今日はわざわざ起きたんだから」
「ん?どういうこと?」
クロはシロをまじまじと見ました。
シロのくちばしには、なにかがくわえられています。
「・・・・なんかもってるけどなにそれ?」
クロがそう言うと、シロはくわえていたものを地面に落としました。
それは、大きな赤い魚でした。
クロはおどろきました。いつも使っているあの小川では、一度も見たことがない魚です。
というよりも、クロは生まれて初めて見た魚です。
「・・・それなに?」
「なにって・・・たいだよ、たい。あ、知らないか・・今日はクリスマスだから、たいぐらいもってこないとなあ・・・って思ってもってきたんだけど」
クロはシロの言葉をきいてくやしくなりました。
「ああ!もうシロが先に言っちゃうなんて!!」
「へ?」
シロはクロの言葉におどろきました。
「もう・・今日はクリスマスだから、満月の夜にお世話になってるシロをおどろかせたかったのに・・ああ!もうだいなし!」
クロはくやしそうに小川のまわりを走りはじめました。
「ああ・・・おちついて・・・!で、クロはなにをもってきたの?」
シロがそういうと、クロはピタッと止まりました。
そして、地面においてあるものをさしました。
「これ!おいしいお肉と・・・」
「ごめん・・そういえばぼく、肉食べれないんだ」
シロはクロの言葉をさえぎって言いました。
クロはそれでショックそうな顔をしましたが、それでも言葉をつづけました。
クロが用意したのは、肉だけではないようです。
「と、この小川でとれた魚。まあ、よくわかんないけど雪も少しもってきたよ」
「おお!すごいね・・・!」
そして、二匹はもってきた食べ物を食べました。
ただ、お肉はクロだけで食べてしまいましたが。
「そういえば肉とか雪とかどこからもってきたの?」
「んー人間から少しかりたかな」
シロはそれを聞いて、目を大きくしました。
「人間?!ってことは《あっち側》に行ったってこと?でも、勝手にとって大丈夫だったの?」
「まあ、大丈夫だと思うよ」
クロは微笑みました。
***
ここは、《あっち側》のある人間の家です。
金髪の女の子と男の子が元気に起き上がってきました。
「わーい!!やったあ!クリスマスだ!!」
そして、すぐにクリスマスツリーによっていきました。
「わあ!プレゼントがいっぱい!どれからあけようかな?」
「ぼくはこれかな?」
すると、ドアから母と父らしき人が出てきました。
「こらこら、プレゼントは朝ごはん食べてからにしなさい」
「えーー!?すぐ開けたいのにーー!」
金髪の男の子が口をすぼめました。
「プレゼントは朝ごはんを食べた後のお楽しみよ」
女の子と男の子の母親は微笑みながら、言いました。
「じゃあ、どっちが先につくか競争しよ!」
「いいよ!」
「よーい」
「「スタート!!!」」
女の子と男の子が部屋を走り去っていきました。
「元気でいいわね」
女性は微笑みながら、言いました。
女性と男性はキッチンに入りました。
もうすでにダイニングには男の子と女の子が席についていました。
「やったあ!私かったよ!」
「ちがうよ!ぼくがさきだよ!」
「ねえ、ママ!今日はどんな朝ごはんなの?」
「あ!話、そらした!ってことはぼくがさきだね!」
「いつも通り、目玉焼きとホットケーキよ」
母は、女の子の問いかけに答えました。
「やったあ!ホットケーキ!ホットケーキ!」
それを聞いて、女の子はとても喜びました。
そして、母は冷蔵庫を開けました。
「あれ・・?」
「どうした?」
それを見て、男性はききました。
「なんか肉がなくなってる・・」
「え?」
彼が冷蔵庫をかくにんすると、今日のためにとっておいたローストビーフが少しなくなっていました。
「でも、魚が置いてある・・・」
ローストビーフの代わりにいわしの魚がおいてありました。
「ねえ、ママ?これ、すごいね」
「ん?」
女の子の方を向くと、女の子は黒い猫の毛をもっていました。
そのうえ、キッチンの窓の近くには猫の毛と、季節外れのカエデの葉とヒイラギの枝が落ちていました。
母は微笑みました。
「ありがとうって、伝えたかったのよ・・・きっと」
森の動物も人間も大切なクリスマスを過ごしたようです。