真実薬
それから、二匹は満月の夜によく会うようになりました。
そして、たくさんの会話をするようになったのです。
・・・・しかし、会話というよりもシロがくちばしで記号を書き、クロがなんて言いたいのかを代わりに言っているものでしたが。
「最近、寒いね」
シロが書いたものをすぐにクロが代わりに言いました。
「『そうだね・・・あっち側では雪が降ってるみたいだよ』・・・へえ、そうなんだ」
シロはよく、《あっち側》の話をよくします。
この森は、人間が近寄れないようにそして、この森が人間に見えないようにと《不思議なゲート》でおおわれています。
《あっち側》とは、この森の《不思議なゲート》をこえた、町を離れた村に住む人間のことです。
大体、《不思議なゲート》をこえる動物はあまりいません。
なので、クロはシロをとても尊敬していました。
シロはクロよりも外の世界をよく知っていました。
「雪ってどんな感じ?食べ物?おいしい?」
「『いいや、あっち側の人はその雪を固めて投げたり、雪でなにか物を作ったりしています』・・・ふうん」
すると、急にシロが悲しそうな顔をしました。
そして、地面にくちばしでなにかを書きました。
「『僕が猫語を話せたらいいのに・・・』・・・どうしてそんなこと言うの?」
これでも会話はできています。
「『僕は君の言葉を話せたら、こんなに面倒くさいことにならないのに・・・君の声を聞きたいし』・・それはそうだけど・・どうやっても無理でしょ?」
「ホー」
その夜、シロはずっと悲しそうな顔をしていました。
***
次の満月の夜のことです。
クロはいつも通り、オオカミの遠吠えで起き、二つの森にはさまれた小川に来ました。
しかし、なぜだかいつも通りの時間にシロは来ません。
シロは満月の夜だけではない日にも飛んでエサを取る日もありますから、クロはしかたがなく、小川で魚を取ることにしました。
「やったあ、今日はとれた・・・!」
クロがめずらしく三匹も魚を取れて、喜んでいると、ガサガサと音がしました。
音のする方を向くと、やはりシロでした。
しかし、くちばしにはなにかビンをくわえています。
「なにそれ?」
シロがそのビンを地面におくのを見て、言いました。
「『真実薬』・・・え?なにそれ?」
しかし、シロはクロの質問に答える前にビンの中のものを飲んでしまいました。
「こんばんは」
「え?」
クロはびっくりして、また後ろに下がって、川の中に入ってしまいました。
自分が水の中にいるのと、シロが猫語をしゃべっていたのとでクロはかなりパニックになりました。
そのせいで川から出るためにシロに手伝ってもらうことになりました。
(え?どういうこと?シロが?猫語をしゃべった???)
クロはびっくりするあまり、シロをしばらくジッと見つめていました。
「・・・・・・シロ?」
「うん」
シロは確かに猫語を話していました。
「・・・・なんで猫語をしゃべれるの?」
「それは・・・今この真実薬を飲んだからだよ」
シロがそう言ってもクロはまだ信じられませんでした。
「・・・え、でも猫語をしゃべれるようになったら、フクロウ語しゃべれなくなっちゃたんじゃないの?そんなことしなくても・・」
「いいや、大丈夫」
シロはそう言って、深く呼吸をしました。
「ニャーニャー」「ワンワン」「ホーホー」「ピーピー」「シューシュー」「ガオー」「コンコン」
・・・・・これもクロは信じられませんでした。
これは全て、シロの口から出た言葉です。
「なんか・・・・すごいね」