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二匹の出会い

昼間では鳥の鳴き声や、動き回る動物でいっぱいだった森は日は沈み、すっかり暗くなりました。

あたりは、シーンと静かになっています。


「アウーーーン!!アウアウアウーン!」


ふいにオオカミの鳴き声が森中にひびきわたりました。


その理由は、今日は満月の夜だからです。


オオカミの鳴き声を聞いて、黒猫のクロの耳がピクッと反応しました。


そして、恐る恐る寝床から、足を踏み出しました。

満月の夜はいつも、オオカミの遠吠えがずっと朝になるまでひびきわたるので、だれも外に出ようとはしません。

なので、誰にもジャマされずに食べ物をとるには絶好の夜なのです。





クロはいつもクスノキの木やカエデの木がある広葉樹エリアとスギの木やヒイラギの木がある針葉樹エリアの境目にある小川に来ます。

その小川に来るといつもたくさんの魚が取れます。

大体、クロは小動物よりも魚を食べるのです。


「はあ・・・・・いつも一人だなあ・・・・」


クロがそうつぶやくと同時にオオカミの遠吠えがまた聞こえました。

猫はたいてい一人で動いていますが、たまに群れていたりします。

しかし、魚が好きな猫はクロしかいないのでいつも一人で動いています。


魚が好きなのも、満月の夜に活動するのも、それはクロが餌の争いをしたくないからなのです。


クロは水面をじっと見ました。

というより、魚のいる水底を見ているのです。


しかし、しばらくするとクロはじっと見るのをやめました。



「はあ・・・・・今日は魚が取れないみたいだ・・・」



 ***



「ホーホー」


一羽の白いフクロウが、一本のヒイラギの枝に止まりました。

そのフクロウ、シロのくちばしにはたくさんの虫がくわえられていました。


クロは振り向いて、ヒイラギの木に止まっているシロを見つけました。


クロとシロはびっくりしました。

クロは川の方に行き、シロはバタバタと羽を動かしました。

猫は水が嫌いなので、さらにクロはびっくりしました。


・・・・・・二匹ともまさか、満月の夜に動いているのが自分以外にいるとは思っていなかったのです。


「こ、こんばんは・・・・フクロウさん」


「ホーホー」


クロはシロがなんと言っているのか分かりませんでした。

シロもクロの言葉が分からなかったみたいです。


・・・・・それもそうです、

クロは猫語、シロはフクロウ語で話していたのですから。


クロは首をかしげました。


すると、シロがバタバタと地面に降りてきて、くちばしの先でなにやら、書き始めました。


記号やらミミズみたいなものが書いてあって、なんとかいてあるか分かりませんが、クロにはびっくりするくらい、言いたいことが分かりました。


「『こんばんは、黒猫さん』・・・・?」


「ホーホー」


シロは、うなずきながら鳴きました。


「『あなたの名前は・・・なんですか?』・・・・・私の名前はクロ」


「ホー」


シロはまたくちばしで書きました。


「『ぼくの名前はシロ』・・・・・・シロね、よろしくね」


「ホーホー」


シロはうれしそうに羽をバタバタしました。


どうやら、シロはクロの言っていることが分かるみたいです。


「・・・・ねえ、それより」


「ホーホー?」


「あなたの持っている虫、分けてくれない?」


「ホー」


シロはくちばしの虫を少しクロに分けてくれました。


クロはその虫を食べました。

その虫はクロが食べた中で一番おいしかったようです。

クロは自然と笑顔になりました。






・・・・・これが、クロとシロの出会いでした。





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