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魔法使いとお妃ー優しさの鎖ー 



***




「ようやく気づいたようよ」

葡萄酒がなみなみと注がれたグラスを傾け、クスクスとイザベラは笑う。

花柄が織り込まれた新緑の布を張った長椅子に、半身を横にするように彼女は寛いでいた。

金糸で刺繍された豪奢な天幕が垂れ下がり、高価な調度品の数々が並ぶ王妃の居室は、あちこちに贈り物の箱や宝石が散乱し、葡萄酒の瓶が転がっている。お世辞にも片付いているとは言い難い。イザベラが必要以上に侍女を部屋に入れないからだ。

「自分にもう何も残っていないってことが、やっとわかったみたい。あの老いぼれ」

葡萄酒を飲み干したイザベラの唇は、まるで血に濡れたように艶めいている。

「可愛がっていた後継ぎを自分が朝食に食べてしまったとも気付かないで、本当に馬鹿な男」

妖精のような可憐な微笑みとは裏腹、唇から飛び出てくるのは恐ろしい言葉ばかりだ。

「……国王を殺すんですか?」

表情にも声にも、一切感情が滲まぬよう、スピーゲルは細心の注意を払って尋ねた。

おかげで発した声は低く、冷たく、まるで地を這う冷気のようだ。

ずっと笑っていたイザベラが、ピタリと止まる。

彼女の視線の先には、硝子窓ごしの雪景色。

雪は深々と降り積もり、都は白く覆われている。

「……ええ。そうね」

抑揚ないイザベラの肯定に、スピーゲルは密かに手を握り締める。

――――すべて計画通りだ。

(これで国王を殺そうとするその場にエメリッヒが踏み込めば……)

コンコンと、扉が鳴った。

「お妃様」

侍女にしてはか細く幼い声に、イザベラは扉を見ることなく優しげに答えた。

「お入りなさいな」

いつもなら、イザベラはスピーゲルがいる時に誰も部屋にいれはしない

それなのに、何故今日は入れるのだろう。

復讐も国王を殺す最終段階。もはやスピーゲルの存在を隠す必要はないと考えているのだろうか。

(隠れるべきだろうか?)

判断に迷うスピーゲルを振り返り、イザベラが微笑む。

「そこにいて」

「……」

スピーゲルが頷くことも出来ず、かと言ってその場を後にすることも出来ずにいるうちに、扉が開き、可愛らしい少女が入ってきた。

「失礼します。お妃様」

目深にかぶったフードの下から、スピーゲルは少女の様子を窺った。

鳶色の髪と瞳。青いドレスで飾り立てられた少女に、見覚えはない。

少女はスピーゲルの姿を見て、僅かに目を見開いた。イザベラ以外に人がいるとは思わなかったのだろう。

「……あの、仰せの通り林檎をお持ちしました。お妃様」

少し戸惑いながらも、少女は抱えていた小さな籠をイザベラに差し出した。

籠の中には、赤い林檎が三つ並んでいる。

「ありがとう。ご苦労さま」

イザベラは少女を手招きし、頭を撫でた。

その優しさに、少女ははにかんで頬を染める。

スピーゲルは訝しんだ。

(珍しい……というか……)

イザベラのそんな様子を見るのは初めてだ。

イザベラは少女の持つ籠から、林檎を一つ持ち上げ、目を細めて眺める。

「綺麗ね。ねぇ、スピーゲル。そう思わない?」

急に水を向けられ、スピーゲルは肩を揺らした。

「……そう、ですね」

曖昧に頷くも、イザベラはスピーゲルの同意が必ずしも欲しかったわけではないようで、こちらを振り向きもしない。

「マティアスも林檎が好きだったわ。庭に木を植えて、育つのを楽しみにしてた。いつか、あなたが林檎をとるためにこの木に登るんだって……」

そう語る表情は、スピーゲルからは見えなかった。

(……父さんが?)

これまでイザベラの口から父親の話を聞いたことはない。

今までにないことに、スピーゲルは狼狽えずにはいられなかった。

「イ、イザベラ……」

「ああ。本当に美味しそうな林檎。国王陛下に召し上がっていただくのが楽しみね」

イザベラは林檎をテーブルに置くと、控えていた少女の頭をまた優しく撫でた。

「あなたは本当にいい子ね。言いつけをよく守って、私を裏切ったりしない」

その言葉に、スピーゲルは息を飲む。

(……まさか)

スピーゲルの叛意に、気付いているのだろうか。

(いいや、落ち着け)

カマをかけている可能性もある。動揺すればつけこまれるだけだ。

意識して呼吸をくり返すことで、スピーゲルは自らを落ちつけようと懸命に努めた。

(落ち着くんだ)

スピーゲルに背を向けたまま、イザベラは話し続ける。

「妙な話をきいたの。霧深いとある森の奥の奥の奥に、魔法使いが住んでるんですって。世にも美しい、黒髪の美女と一緒に」

スピーゲルは目を見開いた。

(気づいて、る)

背筋に、冷たい汗が噴き出す。

(……どこまでだ?どこまで気づいている?)

スピーゲルが、実は誰一人殺さずに匿っていたことか。それとも、エメリッヒ達とたてた計画すらも、もはやイザベラの知るところなのだろうか。

イザベラは振り返らない。

「こんな話もきいたわ。古い運河がある街で、火炙りにされかけた黒髪の魔女を魔法使いが助けに来たって。……ああ、これは前にも話したかしら」

震える指先を、スピーゲルは握り締めた。

(エメリッヒに……アヒムに知らせなければ)

計画は中止だ。

王都に潜ませていたエメリッヒの部下達も撤収させなくてはならない。

グズグズしていては、イザベラの配下の者に捕まり、全員縛り首だ。

イザベラが、ユラリと立ち上がった。

反射的に、スピーゲルは一歩後退る。

(スピーゲル)よ。(スピーゲル)

伸びてくる白い手が、まるで魔物のようだった。

逃げなくては、と思うのに、スピーゲルの足は動いてくれない。

恐怖に、身動ぎすら出来ない。

イザベラは、両手でスピーゲルの頬を包み、そして嫣然と微笑んだ。

「この世で一番美しいのは(だぁれ)?」

「…………っ」

歯の根が噛み合わないほどの恐怖に、スピーゲルは必死に奥歯を噛み締める。

「私よね?」

イザベラの唇は笑みを形どっていたが、その目は大きく見開き、瞬きすらせずスピーゲルを見据えた。

「イザベラ……っ」

「どうして言わないの?『それはあなたです。お妃様』って」

イザベラの唇から、笑みが消える。

「どうして言わないのよ!」

大きな宝石がついた指輪を嵌めた手の甲で、イザベラはスピーゲルの頬を打った。

「……っ」

「誰のおかげで生きてると思ってるの?誰のおかげで魔法が使えると持っているの?」

宝石によって嬲られた切り傷から、赤い血が溢れ、頬を伝い、顎から滴る。

「私が生んでやったからよ。私があんたに魔力をあげたからよ。それなのに私に逆らうなんて!」

頬を叩く音が再び響き、王家の紋章が織り込まれた絨毯に血が飛び散った。

「この恩知らず!!あんたなんて生まれてこなければよかったのよ!そうよ!!やっぱりあんたなんて……っ!」

イザベラの見開いた目には、地獄の炎にも似た憎悪が燃え上がる。

スピーゲルを嬲った指輪にも、手にも、鮮血がべっとりとついていたが、イザベラは気にする様子もなく、また高くその手を振りかぶった。


「あんたなんて、生むんじゃなかった!!」


――――振り下ろされた手を、スピーゲルが掴む。

「……ごめん。イザベラ」

消え入りそうな声で、スピーゲルは謝罪した。

これまで一度として、スピーゲルはイザベラに逆らったことがなかった。

叩かれても罵られても、それを受け入れ続けた。

そんなスピーゲルの初めての抵抗に、イザベラが驚き、顔を歪める。

「生まれて、ごめん」

唇が震えた。

声も震えた。

けれど手は、もう震えていない。

俯いていた顔を上げ、スピーゲルはイザベラを見た。

「魔力のことも、父さんのことも、ごめん。でも……」

かつて、イザベラがスピーゲルの世界の中心だった。

イザベラに笑って欲しかった。

幸せになって欲しかった。

許して欲しかった。


――――愛して、欲しかった。


でも……。

「僕はもう償わない」

きっぱりと、スピーゲルは言い切った。

瞼を閉じれば、そこにアルトゥールが笑ってくれる。

耳をすませば、彼女の声が聞こえる。

白銀の髪も、赤い目も恐れず、スピーゲルを選んでくれた。受け入れてくれた。

だからもう――――。

(愛されたいと、もがくのはやめる)

スピーゲルの強い眼差しに気圧されたように、イザベラはよろめきながら後ろずさる。そしてスピーゲルの手を振り払った。

「そう……」

どこか呆然としたその様子は、老いて人生に疲れた哀れな老婆のようだ。

「……イザベラ」

「……」

すっ、とイザベラが手を挙げる。

助けを求めるような仕草に、スピーゲルは思わず手をさしだした――――その直後。

後頭部に衝撃を受け、スピーゲルは床に倒れ伏す。

(な……んだ?)

衝撃で頭がクラクラする。

首筋を生温いものが流れていく感覚がした。どうやら出血しているらしい。

「け、汚らわしい魔族め!!」

「大人しくしろ!!」

霞む目を上げると、衛兵が三人、こちらを見下ろしていた。その手には警棒が握られている。彼らのうちの一人に殴られたのだと察するのは簡単だった。

イザベラが手を挙げたのは、助けを求めたのではなく、衛兵に合図を送ったのだろう。

(くそ……っ!)

後ろから近づく気配に気付けなかった。

(立て……!!)

逃げなくてはならない。

スピーゲルは腕に力をこめ、足をバネのように跳躍させて衛兵の一人を蹴り上げた。

「うわあ!?」

「ひ、ひいい!」

怯えるもう一人の衛兵に体当たりして、扉への退路を作る。

けれど、スピーゲルは走り出せなかった。

「この子が死んでもいいの?」

イザベラが、先程の少女の首元に、割れた葡萄酒の瓶の欠片をつきつけていたのだ。

「……っ」

動きを止めたスピーゲルの足を、衛兵が蹴りつける。

「魔族め!手こずらせやがって!」

「……っ」

スピーゲルは床に跪き、両腕を背後に捻り上げられた。

イザベラは、そんなスピーゲルに愛おしげに微笑んだ。少女の首に、硝子の破片を突きつけたまま。

「フフ。相変わらず優しいのね。スピーゲル。名前も知らない子供を心配するなんて、そういうところマティアスにそっくり」

「イザベラ……!」

「優しいスピーゲルに、いいことを教えてあげるわ」

イザベラは膝を抱えるようにしてかがみこむと、跪くスピーゲルと視線の高さを揃える。

そして、不気味なほど可憐な笑顔で言った。

「今頃ね。私の私兵があなたの家に踏み込んでいるはずよ」

「――――!?」

反射的に体を起こそうとしたスピーゲルだったが、衛兵の膝に背中を押さえつけられ、呻き声をもらす。

「どういう……ことですか?」

「迎えにやらせただけよ」

イザベラはそう言うと、まるで口づけしようというほどにスピーゲルに顔を近づけた。

そして耳打ちする。

「あなたの目の前で、アルトゥール姫を殺すためにね」

「!?」

驚愕するスピーゲルの髪を鷲掴み、イザベラは嬉しげに目を細めた。

「一人だけ幸せになろうなんて許さない」

その目には、狂気が色濃く淀んでいる。

頭を押しやるようにして髪から手を放し、イザベラは立ち上がる。

「地下牢にいれておいて」

「かしこまりました」

「イザベラ!イザベラやめるんだ!」

スピーゲルは、必死に身を捩った。

「アルトゥールには手を出すな!」

「静かにしろ!」

「早く歩け!」

衛兵達はスピーゲルを揺するようにして立ち上がらせ、連れて行こうとする。

「放せ!!」

このまま素直に地下牢に放り込まれるわけにはいかない。

スピーゲルは衛兵達を振り離そうと、懸命に暴れた。だが、出血のせいか力がはいらない。手も塞がれ、三人を相手にして逃げるのは不可能に等しい。

『心配しないでください』

『でも……』

アルトゥールとの会話が蘇る。

アルトゥールを安心させてやりたくて、スピーゲルはこういった。

『大丈夫です。いざとなれば、奥の手があるので』

――奥の手。

スピーゲルは息を大きく吸い――……、

「――――っ『シャンタル』!!」

叫んだ。

その響きに、イザベラが動きを止める。

不思議そうに、イザベラはゆっくり瞬く。

「……知っていたの。私の、真名を」

出血のせいで薄れる意識を必死に保ちながら、スピーゲルはイザベラを睨んだ。

「……師匠が……万が一の時のために……教えてくれた」

師のアーベルは、イザベラの叔父であり、名付け親でもあった。

名付け親は名付けに際して、与えた真名を他言しない誓いを立てる。誓いを破ったとて何かしらの罰が下るわけではないが、名前を神聖視する一族の人間は自らの誇りをかけて誓いを守ったという。

その誓いを破って、アーベルはイザベラの真名をスピーゲルに教えてくれた。もし何かがあれば、真名を使ってイザベラに対処できるようにと。自らの死を悟ったからだったのだろう。

真名さえわかれば、イザベラに魔法をかけられる。

やろうと思えば、いつだって出来た。

けれどイザベラに対する罪悪感が、ずっとそれを躊躇わせていた。

だが、もうそんなことは言っていられない。

苦しい呼吸の下から、呻くようにスピーゲルは言った。

「死にたくなければ……っアルトゥールに手を出すな。今すぐ私兵を呼び戻せ」

手段は選ばない。アルトゥールを守るためなら。

けれどイザベラは、焦ることもなく高く笑う。

「ふふふ……あははは!私を殺す気?魔法で?」

楽しくてたまらない。そんなふうに笑うイザベラに、スピーゲルは眉を寄せる。

(何故、笑うんだ?)

真名を知られるということは、命を握られることと同じ。

笑っていられる状況ではないはずだ。 

だが、イザベラは尚も楽しげだ。

「そんなにアルトゥール姫が大事?ならやればいいわ。殺しなさいよ。でもこれを聞いてもあなたは私を殺せるかしら?」

割れた葡萄酒の瓶を放り投げ、イザベラは少女の肩に両手を置いた。

「この子の名前は『シャンタル』よ」

「――――!?」

驚きに、スピーゲルは声も出ない。

(同じ名前!?)

触らなければ、魔法の対象は限定できない。だが、今の状況でスピーゲルがイザベラに触れるのは不可能だ。

つまり、イザベラを魔法で殺すにしろ、傷つけるにしろ、青いドレスの少女が道連れになってしまう。

少女は、目まぐるしい状況の変化に困惑し、怯えていた。

「優しいスピーゲル。あなたに私を殺せるかしら?」

「イ……」

怒りが、焦りが、極限に達し、振り切れた。

「イザベラアアアア――――ッッッ!!」

憎むなら、殺すなら、スピーゲルにすればいい。

それなのにアルトゥールや、名前が同じというだけの少女を巻き込むことが許せない。

激怒するスピーゲルを、イザベラは高笑う。

「あはははは!何て愚かなのスピーゲル。あはははは!」

「イザベラ!!貴様……!!」

拘束を逃れようとスピーゲルは無茶苦茶に暴れた。だが衛兵三人に押さえつけられては、イザベラに近づくことも叶わない。

衛兵達は、スピーゲルを黙らせようと何度も警棒を振るった。

「俺の親友は……お前に殺されたんだ!」

衛兵の一人が、スピーゲルを警棒で殴りながら言った。

「残ったのは遺体とも呼べない肉塊だけで、まともに埋葬すらしてやれなかった!」

「……っ」

「あいつの無念を思い知ればいい!!」

警棒を打ち付けられ、蹴られ、スピーゲルは床に伏す。

(この人も……)

スピーゲルの犯した罪の犠牲者だ。詫びなければと思うのに、視界がぼやける。立ち上がるどころか、腕を上げることすら難しい。

その時、ずっと籠の中で大人しくしていたエルメンヒルデが暴れ出した。

エルメンヒルデは嘴で器用に籠の扉を開けると、黒い翼を羽ばたかせ、イザベラを襲う。

「何なの!?」

イザベラは顔をしかめてエルメンヒルデを手で払うが、エルメンヒルデは執拗に嘴と爪でイザベラを攻撃し続けた。

「エルメ……ヒ……デ……?」

スピーゲルは驚いた。

賢いエルメンヒルデが、そんなことをするのは初めてだ。スピーゲルを助けようとしてだろう。

「この……!お妃様から離れろ!!」

衛兵の一人が、エルメンヒルデを追い払おうとむやみにやたらに警棒を振り回した。

それが、不幸にもエルメンヒルデに命中する。

「エル……ヒ…!」

目を見開くスピーゲルの目の前で、エルメンヒルデが赤い絨毯に叩きつけられた。

黒い羽毛が散り、エルメンヒルデはピクリとも動かない。

動かないエルメンヒルデを見下し、イザベラは冷たく言い捨てる。

「汚いわ。そこらへんに捨てておいて」

「かしこまりました」

畏まって頭を下げた衛兵の足を、スピーゲルは掴んだ。

「ダメ、だ……!今なら、まだ……っ」

手当てすればまだ助かるかもしれない。魔法を使えば、きっと。

だが、衛兵は無情だった。

「汚らわしい魔族め!」

憎々しげに言うと、スピーゲルを蹴りつける。エルメンヒルデを鷲掴み、彼は部屋から出て行った。

「エ……ルヒ……!」

賢くて優雅な、黒い貴婦人。

巣から落ちて、親鳥に見放された小さな雛を見つけたのが昨日のことのようだ。

意識が、朦朧とする。

(立……て……)

早くエルメンヒルデを助けなくては。

アルトゥールを守らなくては。

それなのに、体中が痛んで、指一本動かすことも難しい。

囁くように、スピーゲルはその名を呼んだ。

「……アル……トゥ……ール……」

心配するなと言ったのだ。

春になったら、と約束したのだ。 

だから、帰らなくては。

早く帰らなくては。

「ア……ル……………」

瞼の重みに耐えきれない。


『スピーゲル。お前の優しさがお前を縛る鎖にならないか。それが心配だ――』


意識が途切れる寸前。

死に際の師の言葉が、聞こえた気がした。




***




地下牢の前で、見張りを交代をする衛兵達が明るい顔で言葉を交わす。

「魔族が捕まったって本当か?」

「お妃様の部屋に忍び込んだところを捕まって、牢にぶちこまれたらしい」

「魔族は火炙りだ。逃げないように見張っとけよ」

――――すこし離れた場所の物陰から、衛兵を窺う者がいた。

「やば……」

アヒムは苦々しく呟き、物陰の奥へ姿を消した。



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