笑わず姫と求婚ー名前の秘密ー
太陽が山際に姿を隠す。
茜色だった空は、早くも夜色へと衣装を変えつつある。
スピーゲルはアルトゥールが言っていることの意味が理解できなかった。
(『アルトゥール』ではないって……)
そんなはずはない。
アルトゥールは国王の唯一の実子にして第一王女。
生後100日目に、その誕生と『アルトゥール』という名前が公式に国から発表された。『アルトゥール』以外に、彼女に名前があるはずがないのだ。
俯くアルトゥールの表情はよく見えない。唇を小さく動かし、アルトゥールは告白を続けた。
「お父様は……後継ぎが欲しかったんですわ。後継ぎになる……お、男の子、が……」
涙を堪えるように詰まった声に、スピーゲルは慌ててアルトゥールの顔を覗きこんだ。
「姫?」
「お母様が身籠った時、お父様は大喜びで……う、生まれてくる赤ん坊のために名前を考えたんですわ。『アルトゥール』と」
アルトゥールの長い睫毛に、大粒の涙が溜まる。やがて睫毛は夜露の重みに耐えられなかった葦の葉のように揺れて、涙はアルトゥールの頬を流れ落ちた。
『アルトゥール』。
それは、かつて獅子を倒したという勇猛果敢な勇者の名前であり、男の子につけられる定番の名前だ。その名は、普通であれば女の子には贈られない。
けれど子供が健やかに育つための『魔除け』として、あえて本来の性別とは異なる名前を与える親もいる。スピーゲルは、てっきりアルトゥールもそうなのだと、ずっと思ってきた。
(けど……)
アルトゥールの父親は、娘が笑うのを『媚を売っている』というような男だ。
生まれた娘に、あてつけのように男の子の名前をつけるくらい平気でするかもしれない。『何故、男ではないのか』と。
不意に、スピーゲルは思い出す。
(……初めて会った時……)
アルトゥールと初めて会った時、彼女の頬には叩かれたような痕があった。
寝起きしていた部屋も、王女が住むにはあまりに質素――――と言うより粗末だったように思う。
それに、上流階級の子女が当然のように持つ教養を、アルトゥールは身に付けていなかった。読み書きや、ヴェラーがそれだ。
アルトゥールが置かれていた環境の異常さに今更ながらに気づき、スピーゲルは愕然とする。
アルトゥールは実の父に叩かれ、王女だというのに教育も侍女も与えられずに冷たい石が剥き出しになっている部屋に放置されーー……笑わなくもなるはずだ。アルトゥールの感情が凍てつき、表情が失なわれてしまっても、何らおかしいことはない。
それなのに、人はアルトゥールを更に追い詰めるように『笑わず姫』と呼び、蔑んだ。美しさを鼻にかける傲慢で高飛車な姫だ、と。
心無い渾名にも、身に覚えのない悪い噂にも、アルトゥールはきっと苦しんだだろう。けれど、彼女は泣くことすら出来なかった。
(……ああ、だから……)
ようやく、スピーゲルは合点した。
何故アルトゥールが、自分についてきたのか。
アルトゥールは、あの王城から、父親から、逃げたしたかったのだ。自分を殺そうとする魔族に追いすがるほどに。
スピーゲルに『殺してかまわない』と言いながらも、彼女は生きるためにスピーゲルについてきたのだ。
アルトゥールは、震えながら、必死に声を繋いで言葉を形作ろうとしていた。
「ア、『アルトゥール』は、だから『アルトゥール』はわたくしの名前ではないの。本当なら、生まれてくるはずの……望まれていた男の子の……『アルトゥール』はその男の子の名前で……わ、わたくし」
「……もういい」
たまらず、スピーゲルは腕を伸ばしてアルトゥールを抱き締めた。
「もういいです。言わなくていい」
「……っわたくしには……名前がないんですわ」
スピーゲルの腕の中で、アルトゥールがしゃくりあげる。
「望まれなかったから……愛されなかったから……いらなかったから」
「違う!」
スピーゲルは首を振った。
「それは違う!あなたは望まれて生まれてきたはずだ。愛されていたはずだ」
少なくとも、アルトゥールの死んだ母親はアルトゥールを愛していた。そうでなければ、娘のためにブランコなどつくろうとはしない。
「いらないなんて……そんなこと、絶対にない!」
スピーゲルはアルトゥールの肩を抱く手に力をこめる。
「……っう、あああ」
声を振り絞って泣くアルトゥールの涙で、スピーゲルの胸が熱く濡れた。
沸き上がる怒りに、スピーゲルは歯を噛み締める。
アルトゥールに何の罪があるというのだろう。何故、彼女がこんなにつらい思いをしなければならないのだ。こんな理不尽が、許されていいはずがない。
(イザベラに償わなければいけない……)
ずっと、ずっと、ずっと、スピーゲルはその為だけに生きてきた。
イザベラの為だけに。
彼女に許されたい一心で。
けれど……。
けれど――――………。
しばらく泣いた後、アルトゥールはスピーゲルの胸を軽く押すようにして顔を上げた。
支えていた重みがなくなりスピーゲルの腕は寂しさを訴えたが、アルトゥールは涙を拭い、一歩後ろに下がる。
「……っだから、わたくしには魔法がかからないんですわ。体質は関係ありませんでしたの」
「……姫」
「体質を変える方法は、だから探しても無駄ですわ」
アルトゥールは深呼吸し、スピーゲルを見た。
まだ頬には涙が濡れていたが、アルトゥールは口元を柔らかく綻ばす。
「わたくし、あなたの家を出ますわ」
夜の冷たい風に、アルトゥールの黒髪とスピーゲルの銀髪が揺れる。
空はもうすっかり暗くなり、星が一つ見えていた。
「……姫」
「あなたの家を出て、村に移りますわ。大丈夫。逃げ出してイザベラ妃や他の誰かに村のことを話すなんてしませんわ。……ずっと、それが心配だったのでしょう?」
アルトゥールが瞬くと、濡れた睫毛が煌めく。スピーゲルは、それを食い入るように見つめた。ああ、星のようだ、と。
風にほつれた髪の向こうで、アルトゥールの微笑みが滲む。
「だから、わたくしの傍にいてくれたんですのよね?……逃げないように」
「……」
違うと、スピーゲルは今度は言えなかった。
アルトゥールに逃げ出され、その生存が公になることで村の存在がイザベラに知られることをスピーゲルは恐れていた。それは紛れもない事実だ。
「……わたくし、あなたに甘えてばっかりで……あなたの気持ちなんて全然考えずに……」
アルトゥールの唇が、また細かく震える。
けれどアルトゥールは、震えを誤魔化すように唇を噛み締め、そして笑った。
歪な、あの笑い方ーー……。
「今までありがとうですわ。スピーゲル」
翌朝。
「おっはよー!旦那ー!新婚初夜はどうだったー!?」
ヴェラーを踊るような足取りで扉を開けたアヒムは、直後、スピーゲルの上段回し蹴りをくらい、めり込む勢いで床に倒れた。
ピクピクと筋肉を痙攣させて伏すアヒムを、スピーゲルが冷たい目で見下ろす。
「魔法使いが魔法以外で人を殺さないと思ったら大間違いですよ」
「何なの!?」
アヒムはガバリと起き上がり半泣きで猛抗議する。
「いきなり回し蹴りとか何なの!?」
だがスピーゲルは謝るどころかアヒムを気遣う様子も一切見せずに、さっさと外へと出て行ってしまう。
開けっぱなしの戸口から、ツヴァイク達が顔を覗かせた。
「大丈夫かー?アヒム」
「凄い音したわよー。アヒム」
「……鼻血出てる。アヒム」
鼻を押さえたアヒムは、いつもの軽い調子でツヴァイク達に歩み寄る。
「いや、だから『テオ』だから。『テオバルト』。ってかさ、旦那どうしたの?これから葬列に加わりますみたいな顔だけど」
アヒムの問いに、ツヴァイクが枝を竦めた。
「いや、よく分からねえけど、昨日帰ってきたときにはもうあんな」
「お姫様も一緒には帰ってきたんだけど、やっぱり暗い顔なのよねー」
「……アヒムは幸せそうだね」
アストに言われ、アヒムは鼻血を垂らしながらも満面の笑みを浮かべた。
「だって 妹生きてて超幸せだもーん!!」
頭に咲いた花にリボンをつけて無料配布しそうな勢いのアヒムに、ツヴァイク達は一様に呆れ返る。
「昨日は本気でスピーゲルを殺る気だったくせに」
「切り替え早いわねー」
「……ちょっとウザい」
「それよく言われるー」
てへ、と舌を出すアヒムに、部屋の隅で黙って芋の皮を剥いていたベーゼンがため息をついた。
滑車に引っかけた縄をつかい、スピーゲルは井戸の底から水がはいった桶を引き上げた。この水を家の水甕に運び、満たす。日課とも言える作業の手を止め、スピーゲルは昨日アルトゥールから聞いた話を思い返す。
アルトゥールは、自分には名前がないと言った。
『アルトゥール』は自分の名前ではないのだと。
名前は、それ自体が呪い。
親や家族や友達や、誰かから繰り返し名前で呼ばれ、自分でも繰り返し、そうやってその名前の人間になっていく。
名前に縛られて、それ以外の人間にはなれなくなる。
(名前がないなんて有り得ない)
たとえ親がいない子供であっても、成長過程で便宜的に何らかの名前で呼ばれるようになるものだ。
『アルトゥール』という名前が、アルトゥールのために用意された名前ではなかったとしても、それがアルトゥール本人にとって不本意かつ不名誉な名前だったとしても、生まれてからこれまでアルトゥールは『アルトゥール』と呼ばれてきたはず。
(……もしかして、名前が魂に定着していない?)
生まれたばかりの赤ん坊が名前を呼ばれてもそれと認識できないように、アルトゥール本人に自分の名前が『アルトゥール』だという自覚がないのかもしれない。
彼女の母親は既に亡い。父親は娘に手をあげるような男だ。その身分ゆえに、人はアルトゥールを敬称で呼ぶか、または『笑わず姫』と嘲った。
アルトゥールは『アルトゥール』と、その名前で呼ばれる機会が極端に少なかったのではないか。
だから魂に名前が定着しておらず、その為に魔法がかからないのかもしれない。
(なら、呼べばいいんじゃないか?)
『アルトゥール』と、その名で彼女を繰り返し呼び続ければいい。
赤ん坊であれば魂に名前が定着するのはやや時間がかかるが、大人なら一ヶ月も呼べば十分なはずだ。定着さへすれば、アルトゥールに魔法をかけることは容易になるだろう。
「…………」
小さくため息をつき、スピーゲルは水桶を持ち上げた。
水は揺れ、スピーゲルが歩くごとに少量ずつ地面に落ちて染みをつくる。
『わたくし、あなたの家を出ますわ』
その声を思い出し、スピーゲルは立ち止まった。
『あなたの家を出て、村に移りますわ』
ズキリと、心臓が痛んだ。
(どうして……いきなりあんなことを言い始めたのか……)
昨日は、とりあえずアルトゥールはスピーゲルと一緒に家に帰ってきた。村に移るといっても、村の側にも都合があるし、家事能力がないに等しいアルトゥールは誰かと同居する必要がある。
(それに……やっぱり逃げられたら……)
本人は逃げないと言っているが、村の生活に馴染めなかったり、村の外に出たいという欲求に負けないとも限らない。
そもそも、アルトゥールは好奇心が強い。見るもの触れるものすべてに目を輝かせて、少しもじっとしていられない。そんな彼女が閉鎖された村の中で大人しくしていられるとは考えづらかった。『林檎飴が食べたいですわ!』と突然飛び出していく可能性は多いにある。
(……ああ。やりそう……)
スピーゲルは目を細めた。
林檎飴のためなら、彼女は崖をもよじ登るだろう。そして街中でいつものように騒ぎを起こして、まんまと『笑わず姫』だとバレてしまうのだ。それから彼女は王城に送られて、イザベラがスピーゲルの裏切りを知り、兵を差し向けて村の存在が露見し……。
最悪の展開が頭の中で一周し、スピーゲルは頭を抱えた。
「……ダメだ」
魔法で村に縛り付けられない以上、アルトゥールから目を離すのはやはり不安だ。
ギイ、とブランコが軋む音が聞こえた。
見ればアルトゥールがこちらに背を向け、ブランコに腰かけている。
ジギスと散歩に行っていたはずだが、いつの間にか戻ってきたらしい。
「……」
ゆっくりブランコに揺られる背中が、どことなく寂しげに見えた。
(……村にいる方が……いいのかもしれない)
この小さな家では、アルトゥールには狭すぎる。
例の村が広いというわけではないが、それでもこの家でただブランコに揺られているより、村でザシャと一緒にエラから字を習って、エルゼやヨナタンと野原を駆ける方が、アルトゥールにとってはいいような気がした。
(それに……)
村には、アルトゥールと同年代の青年も少なくない。
もしかしたら、アルトゥールはその中に『キスの相手』を見つけることが出来るかもしれない。
「…………」
呼べばいい。名前を。『アルトゥール』と。
そうすれば、やがてアルトゥールに魔法をかけられるようになる。
アルトゥールを魔法で村に縛りつけて、この家で監視する必要もなくなる。
その方が、アルトゥールのためだ。
「『ア』……『ル』」
唇が震える。
発音が、うまく出来ない。
「……『ト』」
名前を呼べば、アルトゥールを縛り付けることができる。
(何に?)
村に?
――――自分に?
水桶が、手から滑り落ちる。
けたたましい音とともに水桶が転がり、あたりに水が広がった。
「スピーゲル?」
アルトゥールがスピーゲルに気づき、ブランコから立ち上がる。
「大丈夫ですの?服が濡れて……」
「だ、大丈夫です」
スピーゲルは慌てて水桶を拾うと、アルトゥールに背を向け井戸へと戻る。
背中にアルトゥールの視線は感じたが、とてもではないが振り返れなかった。アルトゥールに顔向けできない。
(何を考えた?)
アルトゥールの名前を呼ぶのは、彼女に名前を定着させるためだ。定着させ、魔法をかけて村に縛り付けるためだ。制限はあっても、せめてスピーゲルからは解放させてやりたい。
たった今、そう思ったはずなのに。
それなのに、一瞬違う考えがスピーゲルの脳裏をよぎった。
魔法で、アルトゥールを自分に縛り付けようとした。
「……くそ……っ」
自分に対する嫌悪感で吐きそうだ。
(呼べない……っ)
卑怯な自分に負けてしまいそうで。
井戸の縁に、スピーゲルは拳を叩きつけた。
***
「ね、ね、お姫様!どうなったの?」
アヒムが手を口にあてヒソヒソと囁くのに、ブランコに揺れていたアルトゥールは青い目を瞬かせた。
「アヒム。どうって何のことですの?」
「いや、『テオ』ね。『テオバルト』だから」
そんなやりとりのあと、アヒムは身を乗り出した。
「で!求婚!されたの!?断ったの!?だから旦那はあんな顔してんの!?」
アヒムはお菓子をもらう子供のようにワクワクした様子だ。
アルトゥールは顔をしかめる。
「何のことですの?求婚なんてされるわけないではありませんの。スピーゲルには許嫁がいますのよ?」
「え!?許嫁!?」
目を丸くさせたアヒムにかまわず、アルトゥールは地面を蹴る。
ブランコは大きく揺れ、アルトゥールは風に髪を靡かせた。
「だいたい、スピーゲルはわたくしを嫌っているんですもの。わたくしに求婚なんてするわけありませんわ」
「……は?何それ?嫌う?」
「貴方が教えてくれたではありませんの。キスしないのは嫌いだからだって」
「……あー……」
アヒムの頬を、冷や汗が滑り落ちる。
「……あの時は俺も意地悪モードっていうかぁ、キレてたっていうかぁ……」
「聖騎士団の関係者を復讐のために殺そうとしていたのはスピーゲルではなくイザベラ妃だったけれど、わたくしのお父様がスピーゲルの一族を滅ぼしたことは事実ですもの」
復讐という手段をとらないからといって、スピーゲルがアルトゥールを憎んでいないというわけにはならない。
降り注ぐ木漏れ日を、アルトゥールは見上げる。
今までスピーゲルをどれだけスピーゲルも不快にさせていたのだろう。
スピーゲルはアルトゥールがいつ逃げ出して、そのせいで村の存在が露見しないかヒヤヒヤしていただろうに、アルトゥールはそんなことには思い至りもせず、好き勝手に行動してスピーゲルを振り回してきた。
優しい彼はアルトゥールを邪険に扱うことが出来なかったのだろうが、きっと嫌な思いを我慢してきたはずだ。
早く彼から離れてあげなくては。
(いつごろこの家を出て村に移ることになるかしら……)
アヒムはブランコの脇に腕組みをして立ち、地面に向かってブツブツ何か言っている。
「やべー。俺、馬に蹴られて地獄いっちゃう?いやいや、諦めるな。目指せ一発逆転で大団円」
「アヒム?何を言っているか聞こえませんわ」
「……ねえ、お姫様はさ」
ブランコの吊り紐をつかみ動きを強引に止めると、アヒムはアルトゥールを覗きこんだ。
「旦那のことどう思ってるの?」
「……どうって……」
アルトゥールは考える。
「……スピーゲルは優しいですわ」
「そういう『どう?』じゃなーくーてー」
アヒムはもどかしげに両手で髪をかき乱す。
「んー……じゃあさ。ちょっと想像してみてよ。旦那に求婚されたらどう思う?例えば……」
アヒムはアルトゥールの前に片膝をつき、アルトゥールの手を握った。
「『僕と結婚してください』…………はい。想像して?」
「……想像……」
こちらを見上げてくる、緑の目。
これがもし赤い目だったら……。
跪くスピーゲル。
アルトゥールの手を握って、彼が言う。
(『僕と結……』)
想像上のスピーゲルの求婚に、アルトゥールの身体中の血液が瞬時に沸騰し、心臓が大絶叫する。
「わ、わたくし……」
顔が熱い。胸が切ない。
急にどうしたのだろう。
(わたくし、もしかして……)
胸を押さえ、アルトゥールは息を吐き出した。
「アヒム。わたくし……」
「想像してみてどうだった?」
「胸がしんどくて……」
「うんうん?」
「もしかして、わたくし……」
「うんうん!?」
アヒムの瞳が、期待に満ちて輝き始める。
その目を見つめ、アルトゥールは言った。
「風邪をひいたかもしれませんわ」
「……」
ガクッとアヒムが頭を垂れる。
「……そうだよね。これで自覚できるくらいなら、とっくにどうにかなってるよね。俺が甘かったよ……」
アヒムは地面に向けてまたブツブツと何か言っている。
「アヒム?だから、何を言っているか聞こえませんわ」
首を傾げるアルトゥールの背後。
風通しをよくするために開けていた家の扉が、音もなく閉まった。




