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笑わず姫と苺飴ーリュディガー②ー

八分目まで満たされた腹部をさすりながらアルトゥールが店を出ると、スピーゲルが人ごみを掻き分けて走り寄って来た。

「姫!」

「あら、スピーゲル」

「どこに行っていたんです!どれだけ探したと思ってるんですか!」

一方的にスピーゲルを怒鳴り付け、逃げ出すように彼を置いて駆け出したことを、アルトゥールはようやく思い出した。

(謝らなきゃいけませんわ……)

けれど、スピーゲルを目の前にすると、何故かおさまっていた苛立ちが燻って素直になれない。

横を向いて、不貞腐れたようにアルトゥールは言い訳した。

「だってお茶を飲もうって誘われたんですもの。彼に……」

と振り返ったアルトゥールは、後ろにリュディガーがいないことに気が付く。

「あら?」

「そんな定番の誘い文句にのこのこついて行ったんですか!?」

スピーゲルは頭を抱えて俯く。

「少しは警戒心というものを持ってくださいよ。ここが普通の飲食店だったからよかったものの……」

アルトゥールが出てきた店を見上げ、スピーゲルが顔をひきつらせる。

「高そうな店……」

「野苺のパイが絶品でしたわ」

「あーなーたーはー!」

スピーゲルは怒りにワナワナと拳を震わせると、店の扉の取っ手を引いた。

「……とにかく!どの人ですか?あなたの容姿(みてくれ)に騙されて破産しかけている人は!」

「えっと……」

「お客様」

先程アルトゥールを送り出してくれた店員が頭を下げる。

「申し訳ございませんが、お着替えをして頂かなくては当店への入店は出来かねます」

「いえ、食事しようとしてるんじゃなくて……ちょっとだけ入らせて貰えませんか?」

「困ります、お客様……」

店員は言動は丁寧だったが、迷惑そうな表情を隠そうとはしなかった。

スピーゲルの身なりから、その経済的な環境を推測し、侮っているのだ。

(身なりで人を選別するなんて……)

不快感に、アルトゥールは目を細めた。

(……それにしても、どうしてわたくしは何も言われなかったのかしら?)

アルトゥールは自らの着衣を見下ろした。

アルトゥールが身に付けているのは、一般的な平民の娘が身に付けているものと一緒だ。よくよく考えれば、入店を断られていたはずである。

(もしかして……)

先程はリュディガーが一緒だったから特例的に入れたのかもしれない。

「失礼ですがお客さまの身なりでは入店は出来かねます。せめて外套を……」

「いえ、あの……えっと……顔に火傷があって脱げないんです、外套(これ)

店員はスピーゲルの前に壁のように立ちはだかる。頑として入れてくれるつもりはないらしい。

アルトゥールは店内を見回してリュディガーを探した。彼に口添えしてもらえば、スピーゲルも店にいれてもらえるのではないかと思ったのだ。

「え!?ベーゼン!?」

目を真ん丸にさせたリュディガーを、アルトゥールが見つけたのはすぐだった。




*****




「つまり、このリュディガーは人生舐め腐ってる女好きの馬鹿息子で、親の財産を食い潰すために美人を花嫁に迎えなくてはならないんですわ。というのも、彼の家は兄弟間で花嫁の良し悪しを比べて一番優れている花嫁と結婚する息子に全財産を譲るという時代錯誤も甚だしい悪習がある家なんですの。とにかく、財産が欲しい彼と、花嫁比べの宴で振る舞われる苺飴が食べたいわたくしの利害が一致して、つまりわたくし達結婚することにしましたわ」

一気に捲し立てたアルトゥールの腰にリュディガーが手を回し、引き寄せた。

「訂正すべき箇所はいくつかあるけど、まぁ、概ねそういうわけさ」

ニコリとリュディガーが笑顔を見せる。輝くような白い歯が胡散臭い。

黙って話を聞いていたスピーゲルは、頭痛でもするのか頭を抱えている。

「……あなたはどうしていつも……」

紅茶二杯と焼菓子十三皿分の代金を支払い店を出たアルトゥール達は、リュディガーに連れられて大きな邸宅を訪れていた。

礼儀正しい五十才程の侍従に通された客間は、趣味がいい調度品が揃い、よく手入れされた庭に面していた。

我が物顔で長椅子に寛ぎ始めたリュディガーを見るところ、彼の家らしい。

とにもかくにも、アルトゥールは事情をスピーゲルに説明することにし、そして今説明をし終えたところだ。

「気安いですわよ」

アルトゥールは腰に回されたリュディガーの手を邪険に払い除けた。この男に触れられると、どうにも寒気がする。

けれどリュディガーはめげずに今度は肩に手を回してくる。

「ちょっと?」

「いいじゃないか。結婚する仲だし」

()()ですわ」

『ふり』をアルトゥールは強調して言った。花嫁比べの場でもないのにふりをする必要はないはずである。

リュディガーは大仰に肩を竦めた。

「ぶっつけ本番じゃ偽者だとばれてしまうよ。普段から親密にしていれば本番でも自ずと親しさが滲み出るものさ」

「……そういうものかしら」

「そういうものさ」

キラリとリュディガーの歯が光り、その薄ら寒さにアルトゥールの両腕に鳥肌がたつ。

ちょうどその時、百合の紋様が掘りこまれた立派な扉が、控えめに叩かれた。

「リュディガー?入ってもいい?」

「マルガレーテ!勿論だよ!」

リュディガーが答えると扉が開き、一人の若い娘があらわれた。

はち切れんばかりに丸い頬にはそばかすが散り、つぶらな瞳は緑色。麻糸のような赤い髪をお下げ髪にして垂らしている。

アルトゥールが身に付けているものと同じく、袖無しの上着を胸の前で編み上げる定番の型のドレスを着ていたが、大きさが体にあっていないのか息苦しそうに見えた。そして夏だからだろうか。額から大量の汗を流している。

その汗を、リュディガーは手巾を取り出し優しく拭った。

「ほら、汗を拭いて。相変わらず汗っかきだなあ、マルガレーテは」

「ありがとう、リュディガー。優しいのね」

つぶらな瞳を糸のように細めて、マルガレーテは微笑んだ。

「ああ、ベーゼン。紹介するよ」

リュディガーはアルトゥールを振り向き、マルガレーテの肩に手を置く。

「彼女はマルガレーテ。僕の幼馴染みにして、この屋敷の主人さ」

「この屋敷の……主人?」

アルトゥールは尋ねた。マルガレーテのような若い娘が『屋敷の主人の娘』ではなく、『屋敷の主人』とは、一体どういうことなのだろう。

それにしても、てっきりリュディガーの家だと思っていたのに、そこからして根本的に違ったらしい。

サラリと、リュディガーは長い髪をなびかせた。

「マルガレーテの死んだ父親はこの辺でも指折りの大商人でね。彼女に莫大な遺産を残してくれたのさ。おかけで彼女はこの豪邸で悠々自適な生活を送り、僕もお世話になっているというわけだよ」

「……どうしてそうなるんですの?」

マルガレーテが資産家ということはわかったが、何故そこでリュディガーがお世話になるという不可解な事象が発生するのだ。

リュディガーは腕を組み、憂いた溜め息をこぼす。

「最近、家に居場所がなくてね……」

何故だろう。無性に殴りたくなる光景である。

「あの……ご両親に仕事をしろとせっつかれて、お兄様達には白い目で見られて、挙げ句に召し使いの女の子を五股したのがばれてしまって……」

マルガレーテがアルトゥールの耳元で説明してくれた。

つまり家に居場所がないと言うのは比喩ではなく、正真正銘リュディガーは家に居場所がないようだ。そこで幼馴染みのマルガレーテの屋敷に転がり込んできたというわけのようである。

アルトゥールは呆れて呟いた。

「最低ですわね……」

「でも、私も広い屋敷に一人でいるよりリュディガーがいてくれたほうが……」

「聞いたかい?僕は人助けをしているんだよ、ベーゼン」

両手を広げ自分がいかに優しく親切かを説くその姿は、はっきり言って痛々しい。マルガレーテの気遣いも完全に無駄である。

「……と言うわけで」

リュディガーはクルリと優雅に回転し、妙に気取った仕草でアルトゥールに向き直った。

「ベーゼン!君には花嫁比べまでの三日間、このマルガレーテの屋敷で来る勝負に向けて準備をしてもらいたい!」

「衣装を用意しなきゃいけないわね。それから靴に髪飾りに……大急ぎで仕立屋を呼ぶわ」

マルガレーテが段取りをするのに、リュディガーも笑顔で頷く。

「それに、どの詩を暗唱するか吟味しなくては!本も沢山集めてくれ!」

アルトゥールを置き去りに次々と展開していく話題に、アルトゥールは青い目を白黒させた。

「準備って……何の準備ですの?」

宴でリュディガーの許嫁のふりをするだけなのに、何の準備をするのだ。

リュディガーは左手を腰にあて、右手を掲げて人差し指をたてた。

「言っただろう?いかに優れているかを比べるって。まず僕とヴェラーを踊る」

ヴェラーとは、男女一組が三拍子の音楽にあわせて円を描くように足を運ぶ舞踏のことだ。大昔は山奥の農民の娯楽だったらしいのだが、今では王族や貴族も好んで嗜む教養の一種だ。王城でも、定期的に大々的な舞踏会が開かれている。

「それから詩の暗唱!」

リュディガーは中指を立て、次いで薬指も立てた。

「最後に父上の質問に答えるんだ。歴史、経済、政治、どの分野から質問される分からないから、本をたくさん読んで勉強しなければ!それからヴェラーは観客が楽しみにしている一番の山場だからね!さっそく練習しよう!」

「……ちょっと待ってください」

頭を抱えて停止していたスピーゲルが、片手を挙げる。

「観客?家庭内のうちうちの行事ではないんですか?」

「何言ってるんだ。三十年ぶりの花嫁比べだ。街中大騒ぎしてるじゃないか」

「街中大騒ぎって……」

マルガレーテが口を挟んだ。

「花嫁比べはこの地方の伝統的な行事なんです。三十年ぶりとあって街の皆もすごく楽しみにしていて、遠方から親戚を呼び寄せたり、一儲けしようと出店をだしたり……」

「つまりお祭り騒ぎさ!街中の人間が僕とアルトゥール(ベーゼン)を見に来るんだ!」

当然だとばかりに胸を張ったリュディガーが、急に虚空にうっとりと見とれる。

「楽しみだよ……!きっと皆、僕らの優雅なヴェラーに釘付けさ。そして財産は僕のものに……」

「姫。ちょっと……」

リュディガーを放置し、スピーゲルがアルトゥールを手招きする。何事かと、アルトゥールはスピーゲルに歩み寄った。

「何ですの?」

「帰りますよ」

言うが早いか、スピーゲルはアルトゥールの腕を掴んで歩き始めた。

「ま、待て!」

叫んだのはリュディガーだ。彼は慌ててスピーゲルの前に立ちはだかる。

「ベーゼンに帰られちゃ困る!この街にいる他の美人は皆過去にいざこざがあって求婚を受けてくれないんだ!」

「知りませんよ!そんなの!」

スピーゲルはリュディガーを押し退ける。だが、リュディガーも負けてはいなかった。

「き、君はただの同居人だろう!?ベーゼンの行動を指図する権利はないはずだ!」

その言葉に、スピーゲルの動きがぎこちなく止まった。

「そ……れは……」

「スピーゲル」

アルトゥールはスピーゲルの袖をひく。

「わたくしも苺飴が食べたいですわ。ふりをするだけですもの。いいでしょう?」

苺飴が食べられるのは花嫁比べの宴だけだ。思っていたより面倒くさいことに足を突っ込んでしまったようだが、ここまできたら引き下がれない。

けれどスピーゲルは口元を歪めて言った。

「あなたは自覚がないんですか?」

「自覚って……」

スピーゲルがいつも言う、あれだろうか。魔法が効かない特異体質で、だから怪我や病気には気を付けろと、というあれ。

「大丈夫ですわ。怪我には気を付けますわ」

「そっちの自覚じゃなくて……」

スピーゲルはリュディガーとマルガレーテをチラリと見る。彼らに話を聞かれるのはまずいのだろう。

「ちょっと……」

そう言ってアルトゥールを部屋の隅に連れていくと、スピーゲルは声を潜めた。

「あなたは……国王の唯一の実子『アルトゥール姫』は死んでいることになっているんですよ?」

笑わず姫(アルトゥールひめ)』は魔族に殺されたと、世間ではされている。

遺体の四肢がバラバラだったやら、首は王城の門に吊るされていたやら色々と噂されているが、スピーゲルがアルトゥールの死を偽装するために夜着を切り裂き、獣の血肉に浸して王城の庭にぶちまけておいたというのが、事の真相だ。噂が広がる過程で話に色々と恐ろしげな尾びれがついていったようだが、蓋を開ければ何てことはない。

とにかく、スピーゲルのその工作のおかげで聖騎士団はアルトゥールが死んだものと判断し、捜索を打ち切った。アルトゥールの葬儀は遺体がないまま執り行われ、アルトゥールは晴れて『死んだ』のだ。

スピーゲルは口調を強める。

「それなのに、地主の三男坊と偽装結婚?花嫁比べ?ただでさえあなたの容姿は目立つのに、そんな見世物のようなことをして、実は生きているとばれたらどうするんです?」

そうなれば聖騎士団による捜索が再開され、今までのように自由に動けなくなるかもしれない。

アルトゥールは口を尖らせた。

「言いたいことは分かりますわ。でもそこまで心配しなくても……」

どうしてスピーゲルがここまで過敏になるのか、アルトゥールにはよく分からない。

『笑わず姫』の容姿を実際に知るものはそう多くはないし、ここは王都から遠く離れている。見知った人間に会うとは思えなかた。

実際、今までアルトゥールを見て『笑わず姫』だと気づいた人は誰一人としていない。

「わたくしだって気を付けていますもの。大丈夫ですわ」

「大丈夫じゃありませんよ。そもそもあなたの本来の目的は……」

『キスの相手』を見つけること。

アルトゥールは大きく頷いた。

「ああ、その件なら……見つけましたわ」

「え?」

「ほら」

アルトゥールはリュディガーを指差した。

こちらの会話が聞こえていないリュディガーは、何故自分が指さされているのか分からず目をパチクリさせている。

「ぼ、僕が何だい?」

その整った、けれどどこか間の抜けた顔を何拍か注視した後、スピーゲルは雷のような速さでアルトゥールを振り返った。

「彼ですか!?」

「ええ。彼ですわ」

スピーゲルは口許をひきつらせた。

「いや、でも……人生舐め腐ってる女好きの馬鹿息子なんでしょう?」

「……まあ、人格に難があることは認めますわ……」

けれどリュディガーは『背が高くて……』等、諸々の条件にぴったりだ。贅沢は言うまい。とりあえずキスができればいいのだから。

(許嫁役を無事にやりきったら……)

苺飴のおまけにリュディガーにキスをしてもらおう。彼が女好きであるのが、この際都合がいい。きっとリュディガーはアルトゥールの頼みを拒まないだろう。

(……スピーゲルにも、もう面倒をかけずにすみますわ)

アルトゥールはスピーゲルを見上げた。

「でも、多少の妥協は仕方がありませんわ」

「……」

アルトゥールの返答に、スピーゲルの様子が変わる。

嵐がくる前のような緊張感を孕んだ空気が、冷たくあたりに漂い、その空気にアルトゥールは戸惑った。

「……スピーゲル?」

スピーゲルが怒っている気がする。表情はフードに隠れて見えないけれど、彼のまとう空気がピリピリと痛い。

「……何のために……今まで相手を探してきたんですか」

低く唸るように、スピーゲルが言った。

「あの人はいやだ、この人は違うって散々探し回った末にあの男?結局誰でもよかったんですか?」

「……怒っていますの?スピーゲル」

アルトゥールはフードの奥のスピーゲルの目を見ようと覗きこむ。けれどスピーゲルはそれを拒むように、顔を逸らして一歩下がった。

「……怒ってなんていません。あなたがあの男でいいと言うなら、僕は何も言うことはない」

そう言う声が硬い。

何故彼が怒るのか、アルトゥールには訳がわからなかった。

キスの相手を探せ探せと、スピーゲルは散々アルトゥールに言ってきたではないか。ようやく相手が見つかったのに、何故怒るのだ。

それとも花嫁比べがいけないのだろうか。人前に出ることによってアルトゥールの身元が割れるかもしれないことを、やはりスピーゲルは看過出来ないのかもしれない。

「心配しなくても大丈夫ですわ、スピーゲル。『笑わず姫』は死んだんですもの。まさか生きているなんて、誰も思うはずありませんわ」

アルトゥールはスピーゲルを落ち着かせようとしたのだが、その試みは上手くいかなかった。スピーゲルはそっぽを向いたまま、突き放すように言った。

「そうですね。いいんじゃないですか?花嫁比べ。豪華料理が食べ放題な上に念願のキスがついてくる。ああ、これ」

どこにしまっていたのか、スピーゲルは油紙の小さな包みを取り出す。

「よければどうぞ」

「何ですの?これ……」

押し付けるようにスピーゲルから渡された油紙の中を覗くと、赤く照る林檎飴が包まれていた。

(……わたくしのために……)

いなくなったアルトゥールを探しながら、空腹であろうアルトゥールのためにスピーゲルは林檎飴を買い求めてくれたらしい。

アルトゥールはすぐに感謝を述べようとしたが、思いが言葉になる前にスピーゲルが早口でまくしたてた。

「苺飴を食べるからもう要らないというなら、そこらへんの子供にでもあげてください」

そして彼は部屋の扉に向かって早足で歩き出す。

「スピーゲル!?」

アルトゥールは思わずスピーゲルの背を追いかけた。

「どこに行きますの!?」

「家に連絡してきます」

つまり、ジギスに手紙を持たせて飛ばしてくるということのようだ。

スピーゲルはそのまま部屋から出ていってしまった。鼻の先で扉が閉まり、アルトゥールは悄然と立ち尽くす。

(いつもは……)

『いい子にしているんですよ』と、決まりごとのようにアルトゥールの頭を撫でていくのに。

そうすることを忘れるほど、彼は怒っているのだろうか。 

アルトゥールは急に心細くなった。暗い森で迷子にでもなったかのようだ。

「良かったじゃないか。理解してもらえて」

笑顔を浮かべ、リュディガーがアルトゥールの肩に手を置く。

「……理解というか……」

アルトゥールは手のなかの林檎飴を見下ろした。

口では『いいんじゃないですか?』なんて言っていたが、あれは絶対に怒っていた。

「とにかく!準備を始めよう!マルガレーテ」

「そうね、リュディガー。時間が惜しいわ。まずは……」

アルトゥールを挟んで相談を始めるリュディガーとマルガレーテの声を遠くに聞きながら、アルトゥールはしょんぼり肩を落とした。

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