第5話 大人になったらの楽しみにしておきましょう
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それだけでなく……◯◯◯シナリオを回避する‼︎シリーズの一部と二部も日間ランキング入り……‼︎
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リオンおじ様に首根っこ掴まれつつ……無事に婚約する運びになった日から、早三日。
婚約者となったからには、婚約式なるものをしなくてはいけません。
それは婚約を大々的に行うことで、互いの家がこの婚約を認めているという証明と他の奴らに手を出されないようにするための牽制という意味合いがあります。
本来なら直ぐにした方がいいんですけど……まぁ、今はそんなことを考えるのは無理ですね。
僕はミーシェを膝に抱きながら、僕の部屋のソファに座っているのですから。
「ルーク様……」
「可愛いよ、ミーシェ」
歳の割には落ち着いた優しい茶色の家具で統一されたこの僕の部屋に、ミーシェがいるという幸福感。
一応、未婚の男女ですからね。
僅かに扉は開けていますけど、余り人がこないように使用人達にはお願いしてあります。
あ、壁際に立ってイチャイチャしてるシゥロとククリは例外です。
「ふぅ……」
甘い吐息を漏らすミーシェの目は潤んでいて。
ケモミミも、へにゃりと力なく倒れています。
それだけでも充分可愛いのに……僕が彼女の頬を撫でると、それに擦り寄るように頬を寄せてくれて……。
「ミーシェ……ミーシェ……」
熱に浮かされたように彼女の名前しか言えない。
でも、それだけで幸福感が凄いです。
ミーシェも幸せそうに目を細めて、僕の首筋に額を寄せる。
……もう、脳が蕩けそう。
「ミーシェ。なるべく早く婚約式しましょうね」
「婚約、式?」
「そう。三日前に婚約しましょうって言ったでしょう?それを婚約式で行うんです。ミーシェが僕の婚約者ですよ、って皆に教えてやるんです。そうしたら、簡単に君に手を出せなくなるでしょう?」
「…………ふふっ…それ、幸せ……」
「………ミーシェ…?」
目を細めたミーシェの琥珀の瞳は、狼のように鋭くなっていて。
ぞわりっとしたと思ったら、僕はソファに押し倒されていました。
…………え?
「ルーク様は私のだよ……誰にもあげない」
「…………っ⁉︎」
ペロッと頬を舐めるミーシェは、恍惚とした表情で微笑みます。
エロっ……じゃなくて、なんで舐めっ……。
「ルーク様…いい匂い……んぅ…私の匂い……つけなきゃ……」
ペロペロと首筋やら手首やら、肌が出ているところを舐めては身体を擦り寄せるミーシェ。
………その瞬間、僕は悟りました。
これは噂に聞く獣人の求愛行動……。
マーキングだとっ‼︎
「ミーシェ……」
「好きぃ……」
目が狼のように鋭くなっていたのは、本能に従っているからなんでしょう。
つまり、ミーシェは本能から僕を好きでいてくれるということで。
………なら、僕がそれを返してあげても問題ないですよね?
「ミーシェ」
「あぅっ⁉︎」
今度は僕の番だと言わんばかりに、彼女の頬やら首筋やらを舐めてやります。
ほんのりと甘いのは気の所為でしょうか?
ついでなんで、首筋のなるべく人に見られないところにキツく吸いついておきました。
「痛ぁ……」
「ふふっ、キスマークですよ?ミーシェ」
「キス、マーク……?」
「えぇ、綺麗な赤い痕。俺のものって印」
「……嬉しい……」
あぁ、ヤバイと頭の中で警報が鳴る。
でも、こんな可愛いミーシェを放っておくなんて……。
「ここまでだぞ、ルーク君」
…………また止められましたね、はい。
「………こんにちは、リオンおじ様」
「少し目を離すと直ぐにこれだな」
ミーシェを抱き上げて僕から離れさせるおじ様は、困ったように苦笑しています。
その後ろには〝ごめーんね☆〟と両手を合わせるシゥロとククリ。
いえ、大丈夫です。
かなり腹立ちますけど、二人は仕事をしただけなので。
それに、未婚の男女があんな風に乳繰り合っていたら、止めるのが普通です。
でも、自分の娘がそんなことしてたら普通は激怒するものなんでしょうけど……あ、もしかしてリオンおじ様も父上と同じように笑いながら怒るタイプですかね?
「……すみません、ミーシェが可愛くて……」
「やぁっ‼︎お父様、離してっ‼︎ルーク様、ルーク様っ‼︎」
「こら、暴れるな。ミーシェ」
ミーシェはケモミミをピンッ‼︎と立たせて、唸り声さえあげています。
…………というか、またこの前のような殺気がミーシェから漏れ始める。
リオンおじ様はギョッとして、ミーシェから離れました。
「ルーク様ぁっ‼︎」
ミーシェは僕に抱きつき、またスリスリと頬を擦り寄せる。
蕩けるような目は先程の殺気を放っていた目とは思えなくて。
………殺気を放つミーシェも可愛いのですが、なんか様子が変ですよね?
「………ミーシェ?」
「うわぉ。発情期ですね?」
「………気配を殺して現れるな、ノエル」
いつの間にかリオンおじ様の背後に立っていたノエルおば様。
ノエルおば様は、ミーシェを見てクスクス笑いました。
「発情期のリオン様にそっくりです」
「………………え゛?」
「理性飛ばしてるリオン様はご存じないかもしれませんが、今のミーシェは完全に発情期のリオン様と同じ顔してますよ」
ノエルおば様の言葉に、リオンおじ様は撃沈する。
確か……発情期とは……。
「族と個体差があるようですが、周期的にくるヤツですよね?獣人は発情期になると獣性が強くなり、寿命が短いがゆえに子を残そうとする本能のことだった気が……」
「流石ですね。よくご存知です」
ノエルおば様にパチパチと拍手されます。
そして、考えるように呟かれました。
「うーん。詳しくは私も知りませんが、発情期は最愛が現れると起きるらしいです。少し早過ぎますけど……簡単に言えば、本能的にルーク君の子を産みたいと思ったんでしょうね」
「〜〜〜っ⁉︎」
それを聞いた瞬間、身体中の血が沸騰したようでした。
だって、ミーシェが僕を望んでるってことですよ?
本能的に望んで、僕の子を産みたいって……。
幸せ過ぎて死にそう……。
「……ノエル、あの……流石に、まだそれ早い……」
「発情期に理性飛ばすタイプのリオン様は黙ってて下さい」
「……………………」
再びリオンおじ様撃沈。
「うーん……ミーシェはいろんな血が混ざってますから、このままルーク君と離すのは得策じゃなさそうですね」
「………つまり、ミーシェは完全にルークを愛しい〝番〟とした、ということか……」
「………〝番〟っ…‼︎」
それは竜人の方の特徴ですが、先祖返りであるミーシェはその〝番〟に対する想いが強いのでしょう。
あぁ、もうっ‼︎
この子はなんて可愛いんだっ……‼︎
「はぁ……仕方ない。ルーク君、ミーシェの発情期が終わるまで君にミーシェを託す」
「はいっ‼︎」
「手を出したら許さないからな」
「勿論です‼︎」
ミーシェはもう周りの声なんて聞こえてなくて、ぺろぺろと僕の頬を舐めていて。
可愛い容姿に、妖艶な笑み。
うわぁ、可愛い……本当に可愛い。
「………ミーシェが暴走したら危険だから、しばらくは本当に部屋に閉じこもるといい。本当は未婚の男女が扉も開けずにいるのは駄目なんだが……他の女が見えた瞬間に殺すかもしれないからな」
「ふふふっ、ありがとうございます‼︎」
「嬉しそうだな、ルーク君」
「はい‼︎親公認ですからね‼︎」
「…………多分、甘やかしたら甘やかした分だけ早く終わると思う。頑張れ」
リオンおじ様は〝もうどうにでもなれ〟と言わんばかりの顔で、ノエルおば様とシゥロとククリは満足そうに手を振って僕の部屋を出て行きました。
ちゃんと扉も閉めて。
それを確認すると同時に僕はミーシェを抱き上げて、ベッドに寝かせました。
綺麗なプラチナブロンドが真っ白なシーツに広がる美しさ。
上気した頬と潤んだ瞳。
「ルーク、様ぁ……」
甘い声でおねだりするなんて悪い子ですね。
でも、そんな君も可愛いので。
「僕はミシェリアのものですよ、愛しい人」
思う存分、甘やかして差し上げましょう。
*****
「あぅぅぅぅぅ……」
僕のベッドの上で布団に包まって、ミノムシになっているミーシェ。
中から泣きそうな声が聞こえます。
「ミーシェ、大丈夫ですか?」
「……大丈夫じゃないですぅ……お嫁に行けない……」
「僕がお嫁にもらうから大丈夫ですよ」
「うぅぅぅぅぅっ……ルーク様ぁ……」
ちらりと覗いたミーシェは涙目で、頬を真っ赤にしていました。
リオンおじ様にミーシェを託されて、早一週間。
何があったって?
まぁ、本当に二人で部屋にこもってました。
あ、ちゃんと最後まではしていませんよ?
せいぜい、一緒の布団で添い寝するくらいです。
いやぁ、発情期って凄いですね。
ミーシェの可愛さが限界突破ですよ。
離れるのも嫌だったみたいで、ミーシェは駄々っ子のように僕にしがみついていて……。
食事もこの部屋で二人っきり。
お風呂も他人の手を借りられないので、二人っきり。
あはは〜、未婚なのにもう裸を見せ合った仲なんですよ。
最後まではしてないけど。
で、今日やっと理性が戻ったらしいミーシェは……恥ずかしさのあまり、ミノムシ状態と。
「ミーシェは僕と同じように精神年齢が高いんですか?」
「うっ……まぁ、いろんな血が混ざってますから……そこらの五歳児ではないかと」
まぁ、確かに竜人、獣人、魔族、精霊に好かれた人間……と、僕よりも色々混ざってますものね。
納得です。
「怖いです、か?」
ミーシェの不安げな声が聞こえて、僕は首を傾げます。
いろんな血が混ざってて、ある意味化け物だから不気味で怖いのか?と聞いているならそんな訳ないでしょうと言えますね。
「怖くないですよ。それを言ったら僕もそうじゃないですか。というか……父上なんてある意味、神と同類らしいんで……僕、神の子のようなものなんですよ?ミーシェと同じくらい……いや、それ以上に異常でしょう」
「ルインおじ様……神様だったんですか?」
「それに似たようなものらしいですけどね。それよりも、僕が怖いのはミーシェが可愛過ぎることぐらいです。あんな暴力的な可愛さを五歳児がやったら困ります」
「………あぅ…」
ミーシェは頬を赤くしています。
大胆な彼女もいいですが、恥じらうのもそれはそれで可愛い。
「さて。途中で父上に婚約式のお願いをしておいたので、三日後あたりにやりましょうね」
「えっ、いつの間に⁉︎」
「精霊に頼みました。ミーシェが僕のものだって披露しなくちゃ」
「あ、でも……」
ミーシェは恥ずかしそうに自分の身体を見ます。
そこにあるのは、無数の赤い痕。
僕はゆっくりと微笑んで彼女の頬にキスをしました。
「ちゃーんと、身体が隠れるデザインのドレスを用意するように母上にもお願いしてありますから大丈夫ですよ」
「ルーク様……準備がよすぎです……」
「ミーシェのためですからね。浮かれてるんです、気持ち悪いですか?」
「ううん、嬉しい」
甘い時間はこれでおしまい。
本当はこのままミーシェを監禁したいところなんですが、それでは両親にも申し訳ないので。
「大人になったら、もっとイチャイチャしましょうね?」
「………あぅ……」
大人になったらの楽しみにしておきましょう。