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第17話 こんな斜め上過ぎるエンディングは予想外でしたね………


次話がエピローグ‼︎








幸せ新婚生活……から、早くも今日は学園の入学式。



つまりは、前にも言ったXデーです。





今日、異世界からヒロインが現れる。

彼女がもたらすのは、平穏か破滅か。

まぁ、場合によってはそのヒロインを殺しましょう。

そうすれば万事解決です。


「ルーク様」


濃紺の制服を着たミーシェは、真剣な眼差しで僕を見つめます。

僕もそんな彼女を見つめ返しました。


「大丈夫。何があっても僕が守ります」

「……信じてます、ルーク様」


二人で馬車に乗り、学園へと向かう。

今までにないような緊張感の中、互いに手を取り合ったままでいました。






そして、学園に着くなり……僕はミーシェをエスコートして入学式に彼女を送り出す。

途中で合流したロイゼルとサリュも緊張した面持ちで……これからだ、という緊張感が一気に高まり…………。





高まり………。





高まり……………?






「ロイゼル」

「…………あぁ」


入学式も、学園案内などその他細々したモノも全部終わり……普通・・に帰宅したエクリュ侯爵家の応接室。

僕はミーシェと共に冷たい視線をロイゼルに向けました。



「ヒロイン、現れなかったんですけど?」



そう……今日は運命の一日になるはずだったんです。

なのに、ヒロインが現れるどころか至って普通な入学式で終わりました。

ロイゼルは気まずそうな顔をしながら、慌てて弁明する。


「いやいやいや‼︎ゲームじゃ入学式終わった頃にヒロインが現れるはずだったんだよ‼︎」

「本当ですか?」

「本当だって‼︎おれだって驚いてるんだからな⁉︎」

『そーそー。ロイゼルを責めるのはよくないぞ‼︎』


ギョッとした僕達は悪くないと思います。

だって、いつの間にか僕達の中に参加者が増えていたんですから。

というか……何サラッとまた出現してるんですか、お祖父様。


「…………お祖父様……」

『ヒロインが現れなかったのはわたしのおかげだからな‼︎』

『え?』


過干渉禁止の件を怒ろうとした僕は、僕達はその声に固まります。

お祖父様はニヤ〜ッと笑いました。


『異世界から人が来るってことは、わたしの管理をすり抜けるってことだろう?つまり、何かしらの異常が起きていたってことだ』

「…………はぁ……」

『で、探してみたら見つけたんだ。落とし穴・・・・


落とし穴、という言葉に首を傾げる。

お祖父様はそれを見て、僕達に説明してくれました。


曰く、世界はいくつもの世界線があり……行動で分岐することもあれば、類似してたり、全く違う世界があったり。

異なる世界が近づいたり離れたりと様々な動きをしているらしい。

今回はこの世界にちょっとした穴があり、異世界から落ちたそのヒロインがこちらの世界に来てしまったのではないかということだった。


「落ちるってなんだ?」


サリュの質問にお祖父様は言いにくそうな顔をすると……覚悟を決めたように、頷きました。


『ほら、君達の世界じゃ交通事故に遭うと異世界転移したりするんだろう?衝撃を受けることで存在感が揺らいで、その世界から離れてしまうんだ。で……そんな時に他の世界が近づいてて、なおかつちょっと境界線が曖昧になってたり、穴が空いてたりすると……』

「………あぁ…その世界から存在が離れているから、境界を越えて間違って異世界転移してしまう、ということですか?」

『流石、ルーク。理解が早いな。今回は穴が空いてたから、あのまま放置していたら確かにヒロインはこの世界に来ただろう。だが、それよりも先にわたしが気づいたから補修した。存在感が揺らいでも時間が経てば安定するからヒロインも問題ないはずだ』


………あぁ…もしかして、ルイ叔父様を父上に預けた時に言っていたゴタゴタは……その修復なんですね?


『多分……乙女ゲームのわたしはルイに夢中になってその穴に気づくのが遅れたんだろうなぁ。異世界転生は魂だけの存在だから、起きやすいが……肉体ごとの異世界転移なんて簡単に起きにくいし……そこまで注意することじゃないし。今回はルーク達が積極的に動いてて、異世界から来ると分かっていたから早期発見できたが』


つまり、乙女ゲームでヒロインが来たのはお祖父様の仕事怠慢の所為ということですね。


『大変だったぞ〜。ルイの面倒みながらやれると思ってやってたら、ちょっと予想より時間かかって。アップアップして慌ててルインに預けて……』

「ちょっと待って下さい」


ミーシェがスッと目を細めながら、ストップをかける。

……ミーシェ?なんか、凄みが……。


「それ、結構前に穴に気づいてたってことですよね?」

『……………あはっ☆』


それだけでその場の空気が一気に凍りました。

シンッ……と静まり返った部屋。

ミーシェは酷く冷たい声で、問いました。



「というか、それを先に言ってくれてたらルーク様達は訓練とかしなくてよかったんじゃないんですか?」



『ギクッ』

「「「……………………」」」


無言で見つめる僕、ロイゼル、サリュにスッと目を逸らすお祖父様。

……………おい。


『……いや……その、ね?ちゃんと間に合うか分からなかったからな?別に忘れてたとかいう訳じゃ……』

「忘れてたんですね?」

『いや……』

「お祖父様」

『……………あい、忘れました‼︎てへっ☆』


ピースサインを目元に添えてあざとく、テヘペロするお祖父様。

………あぁ……父上がお祖父様を殴っていた理由が分かってしまった。

僕も殴りたい。


「………殴りたい…」

「殴っていいと思いますよ、ルーク様」

「「殴ってくれ、ルーク」」


全員の許可が出たので僕はギュッと拳を握る。

しかし、お祖父様は『ごめんなさいっ‼︎』と緊急離脱して逃げました。

チッ……‼︎後で殴ってやるっ………‼︎


「………はぁ…驚き過ぎてなんかな……」

「つーか、ヒロインが出てこないタイプって珍し過ぎるだろ……」


サリュはソファにグタッと倒れ込み、ロイゼルは呆然としながら呟きます。

ミーシェもスリスリと僕の肩に頭を預けて、甘えてくれる。

あぁ……なんなんですかね。

今までの苦労が全ての水の泡に化した感じ。

残念感溢れる結末って……。


「まぁ、ほら。同じ目標を目指した友人ができたってことでいいんじゃないんですか?それにヒロインが来ないってことは目的も達成ですから‼︎」

「ミーシェ……無理やり話をまとめようとしてますね?」

「…………じゃないと、なんか皆さんの漂う哀愁が酷くて」


ミーシェがサッと目を逸らす。

あぁ……そんだけ僕達の顔は酷いんですね。

まぁ……うん。


確かに?

僕の目標だったミーシェの悪役令嬢シナリオは回避しましたし……ロイゼル達の攻略対象ルートも回避しましたし?

うん……まぁ、良しとしないとなんか……こう、なんとも言えないですし。

でも……ですよ。

でもっっ、ですよ‼︎



「こんな斜め上過ぎるエンディングは予想外でしたね………」

「「「それは同意(します)」」」



僕らは呆れたような顔で、溜息を吐きました………。








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