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第14話 ただこの時に酔い痴れる






はい、やってきました‼︎

今日という日がっ‼︎



「綺麗ですよ、ミーシェ」

「ありがとうございます、ルーク様」


今日はミーシェのデビュタント。

彼女は婚約者パーティーの時と同じように、カタチが違うがワインレッド色のドレスを着て、微笑んでいました。

あぁ、本当に女神です。

今日のデビュタントが終わったら、一週間後には結婚式を挙げる予定です。

え?結婚式の準備とかはどうしたかって?

別に聞いても面白くないので割愛ですよ。

語るの面倒ですし、準備することは全部一緒ですし。



成人後直ぐに結婚するのは早い、というかもしれませんが……婚約者がいるというのに、ミーシェの人気は凄まじいもので。

早く僕の妻にしないと不安で仕方ないのです。


「では、僕のお姫様?エスコートさせて頂けますか?」

「えぇ、喜んで」





リオンおじ様達と一緒に馬車に乗り、皇城のダンスホールにやってきました。

エディタ王国よりもシンプルですが、厳粛な雰囲気が満ちています。

そんな会場で、見目麗しいリオンおじ様達は勿論、その娘たるミーシェも光り輝くような美しさを放っていました。

周りにいる男達がぽわぁ……と頬を染めていますが、残念ながら彼女は僕のものです。

ザマァ見ろ‼︎とか思ってしまいます。


「うふふっ、嬉しいです。ルーク様」

「ミーシェ?」

「やっと成人ですよ?小さい頃からずっとルーク様のお嫁さんになりたかったんです」

「……………」


久しぶりに言っておきましょう。



悶えさせるような爆弾を落としやがってっ‼︎



僕は微笑んだまま、彼女の頬に手を添えます。

そのままゆっくりと顔を近づけて……。


「人前は止めろ」


リオンおじ様に止められて僕は脱力しました。

あぁ、ここが人前じゃなかったらキスしたかった……。

ミーシェは頬を赤くして、周りをキョロキョロと見てから……僕の耳元に優しく囁きます。


「後で、沢山可愛がって下さいませ」

「………ミーシェ…あんまり可愛いこと言うと、結婚前に襲いますよ」

「あぅ⁉︎」


ブワッ‼︎と彼女のケモミミが現れたので、思いっきりナデナデしてやります。

今すぐベッドに連れ去りたいのですが、リオンおじ様の目が鋭いので断念します。

どうせ後一週間の我慢ですしね‼︎


「ルーヴィット皇帝陛下、マリン皇后、並びにマイク皇子のご到着です‼︎」


その声に合わせてその場にいた人々が頭を下げる。

僕達もそれに合わせて、ゆっくりと頭を下げます。

そこにいたのは、ルーヴィット皇帝とマリン皇后……そして、皇后によく似たマイク皇子でした。

皇帝の挨拶は僕の時と同じような感じで、乾杯が終わると直ぐに王家への挨拶のために移動する感じですね。


「こんばんは、兄上」

「ご機嫌麗しゅう存じます、ルーヴィット様」

「あぁ、リオン。それにノエル夫人も。デビュタントおめでとう、ミシェリア嬢」

「ありがとうございます、ルーヴィット様」


ミーシェがにこりと笑う。

そんな彼女を見ていたら、皇帝が僕に視線を向けた。


「こんばんは、ルーク」

「お久しぶりでございます、ルーヴィット皇帝陛下」

「今夜はミシェリア嬢のエスコートを頑張ってくれたまえ。彼女は我が国の《女神》だからな」


にやりと笑った皇帝に、僕はチラリとおじ様に視線を向けました。

おじ様はゆっくりと頷いてくれるので、僕もにやりと笑い返します。


「そんな彼女を攫うことになり申し訳ありません、陛下」

「全然、申し訳なく思ってないだろう?」

「はい」

「ははっ‼︎ミシェリア嬢、令嬢として・・・・・の最初で最後の夜会だ。楽しんでくれ」

「えぇ。ミシェリアちゃん、楽しんでいってね」


皇帝と皇后にそう言われて、ミーシェは嬉しそうに微笑む。


「はい、ありがとうございます」


やっぱり皇帝はミーシェが結婚することを知っていたのでしょう。

皇后様も驚いてないところを見ると、彼女も。

ですが、皇帝のご子息マイク皇子が、驚いた顔をしていました。


「父上、ミシェリア嬢が最初で最後の夜会と言うのはどういう意味ですか?」


皇帝は何を思ったのか……少し考える素振りをしてから、微笑みました。


「…………そのままだが?」

「ミシェリア嬢はどこかに留学でもするのですか?」


留学なら最初で最後にならないでしょう。

というか、令嬢として・・・・・と言っていたでしょうに。


「さぁ、自分で聞いてみたらどうだ?」

「ミシェリア嬢……一体……」


マイク皇子の瞳が困惑で揺れています。

あ、こいつ敵ですね。

完全にミーシェに恋慕を抱いてる気がします。

男の勘ですけど。


「私、結婚するんです」

「……………は?誰と?」

「ルーク様以外にいません‼︎そんな不誠実だと思ってるんですかっ⁉︎」

「えぇっ⁉︎」


マイク皇子の驚いた声が会場に響いて、しんっ……と静まり返ります。

ミーシェは頬を膨らませて、僕の腕をぎゅう‼︎と抱き締めました。



「マイク兄様、祝ってくれないのですか?」



背後で「ははっ、残酷だな」とリオンおじ様の声が聞こえましたが、スルーしておきましょう。

つまり、マイク皇子はミーシェが異性として好きですが……ミーシェは彼に兄として祝って欲しいと。

好きな女に男としてさえ認識されていなかった現実は、悲しいでしょうね。

そして、彼女は僕の腕の中。

なら、ついでですからトドメでも刺しておきますか。


「マイク皇子。どうか、僕のミシェリアのために祝ってあげて下さい」

「…………っ‼︎」


殺されそうなくらいに冷たい瞳。

でも、今の僕はそんなのどこ吹く風なので。


「………おめでとう…ミシェリア嬢……」

「はい‼︎ありがとうございます、マイク兄様‼︎」


満面の笑顔で言うミーシェはとても美しくて。

彼女にこんな幸せそうな顔をさせているのが僕なんだと思うと、高揚しました。



挨拶もそこそこに御前を辞すと、おじ様とおば様がクスクスと笑っていました。


「あぁ、いい気味だ。マイクはミーシェを自分の〝番〟にしたくて堪らなかったんだろうな」

「僕のミーシェをですか?」

「あぁ。〝番〟というのは本能で惹かれるものなのに……ミーシェが綺麗だからって理由で手に入れたかったんだろうな。それを恋慕と勘違いして、馬鹿な奴」


ミーシェをコレクション感覚で手に入れようとしてたんですか。

許せませんね。


「凍らせればよかったですかね……」

「うーん……今回はそれをしてもよかったかもしれないですね。私はあの子、嫌いですし」

「……お母様?」


珍しくそんなことを言うおば様は、黒い笑みを浮かべて教えてくれました。



「ミーシェがマイク皇子のお嫁さんにならなくてよかったです。あの子、表の面は厚いですけど、癇癪持ちですから……きっと結婚したら自分のものだからって理由で暴力振るわれますよ」



…………リオンおじ様は精霊という手段がありますからともかく……ノエルおば様はどこでそんな情報手に入れてきたんですか?


「ノエル……まさか……」


リオンおじ様はぎこちない顔で顔を引き攣らせています。

おば様はにこーっ‼︎と笑いました。


「えー?私は何もしてませんよー。どこかの暗殺者さんが集めた情報ですよー」


…………暗殺者(隠密ver)モードで一応、マイク皇子を探ったんですね。

で、そんな情報をゲットしたと。

え?皇城ってそんなに警備がザルなんですか?


「……普通、そう簡単に皇城に潜入できないからな?」

「元々、侍女でしたから……皇城内の隠し通路やら何やらは知ってますよ?」


リオンおじ様は眉間を押さえています。

隠密行動もできるおば様って怖いですね。


「リオン様が望むなら、皇家を脅せるようなネタを一、二個でも提供しますけど?」

「…………必要な時でいいです……」

「承りました、リオン様」


リオンおじ様が敬語になるくらいなんですね。

なるほど。

リオンおじ様よりもノエルおば様の方が上なんですね。


「ミーシェもルーク君をお尻に敷けるぐらいにしてやるといいですよ」

「……私はルーク様を支える方がいいです」

「そうですか?なら、後でルーク君を支えて喜ばせるためにいいことを教えてあげますね」

「………‼︎はいっ‼︎」


なんかちょっと嫌な予感がしたんですけど、おじ様に肩を叩かれて「諦めろ」と言われました。

なんか怖いです‼︎




そんな風に思っていたら、ちょうどダンスタイムになったようでゆったりとした音楽が流れ出しました。

僕は今すぐこの話から逃げるために、ミーシェに手を差し出します。


「ミシェリア嬢?僕と踊って下さいますか?」

「喜んで‼︎」


二人でホールの中央に向かい、微笑み合う。

流れる音楽に身を任せ、ただこの時に酔い痴れる。




こうして、ミーシェのデビューは至って何もなく終えることができたのでした。









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>「あぁ。〝番〟というのは本能で惹かれるものなのに……ミーシェが綺麗だからって理由で手に入れたかったんだろうな。それを恋慕と勘違いして、馬鹿な奴」 >「ミーシェがマイク皇子のお嫁さんにならなくてよか…
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