第13.5話 ランツ皇子とアミル姫
わたくし、アミル・エン・エディタがネッサ・ロータル侯爵夫人に淑女教育を受けるようになって数週間ーーー。
もうその時点で、わたくしは自分の愚かさを学びました。
婚約者がいる異性に近寄ることの恥ずかしさ。
それはまさに忌み嫌われる行動。
ロータル侯爵夫人は素晴らしい(いっそ恐怖)お言葉でわたくしを更生させて下さいました。
それだけではありません。
女として。
王女として。
どう振る舞うべきなのか。
どれほど強かに生きるべきなのか。
そういう手腕すら教えて下さったのです。
加えて、わたくしと同じように虎の尾を踏んでしまった方と、自分達の反省会を行うようになりました。
隣の大陸のランツ皇子。
彼もまた、わたくしと同じミスを犯した方。
そして、同じように恐怖を知った方。
ランツ皇子と交流し、少しずつ少しずつ……互いを意識するようになりましたわ。
ですが、互いに他の異性に惹かれていた事実があるから。
お互いに踏み込むことができませんでした。
だから、ルーク様にファーストダンスを申し込んだのは一種の賭けでした。
もし、彼に申し込んで……ランツ皇子がわたくしを諦めたら、わたくしもランツ皇子を諦めようと。
結果は、賭けには勝ちましたが……またやらかしましたわ。
利用した相手が悪かったのです。
わたくしは、ルーク様という方がただの侯爵子息だとしか思っていなかったのですが……
まさか、ルーク様=国家滅亡の危機の方程式が成り立っているなんて誰が考えられますの⁉︎
ギリギリセーフでしたが、わたくしはやらかしました。
そういう訳で……ランツ皇子と共に、エクリュ侯爵家に謝罪に来た今日この頃。
目の前に座るルーク様とミシェリア様は、とんでもなくどうでもよさそうな顔でこちらを見ておりました。
「まず、その一。僕達はお二人に興味がないので謝罪とかどうでもいいです」
「「………………」」
「その二。謝罪とか受けてる暇あったら、ミーシェとイチャイチャしてたい。はい、以上を踏まえた上でお二人が取るべき行動は?」
にっこりと笑っておられますけど、笑ってませんね。
「お二人には大変ご迷惑をおかけしました……失礼します」
ランツ皇子と共に頭を下げると、お二人は満足そうに笑われる。
あぁ、なんというか……このお二人は揺るぎないですわね。
「はい、さよなら」
「さよなら、ランツ皇子。アミル姫」
…………応接室を後にすると、互いに顔を見合わせて頷きました。
謝罪することはままなりませんでしたし、わたくし達は失敗しました。
なので、わたくし達はわたくし達なりのお詫びをするべきでしょう。
「取り敢えず……自分達の権力を使って、二人の関係を邪魔しようとする奴を排除するか」
「ですわね」
……………それが、わたくし達の贖罪になるでしょう。
………で、いつの日か友人になるかもしれませんね。




