第11話 というか、なんですかね?この乙女ゲーム関連者ホイホイみたいな感じ
今回含めて後、10話分くらいで終わります‼︎
最後までよろしくどうぞ‼︎
ズタボロにされる日々ーー。
精神攻撃でゾンビにひたすら襲われる夢を見ていたおれは……目が覚めた瞬間ーーー。
天使に出会いました。
「おはよう」
サラサラの色素の薄い金髪に、鮮やかな翡翠の瞳。
美しい美貌に微かな微笑み。
とんがった耳が特徴的な彼女は……もしかして、エルフ?
おれは無言で……いや、絶対顔を赤くしながら彼女を見つめている気がする。
ヤベェ、綺麗。
心臓がドキドキして痛い。
というか、頭の下にあるこの柔らかな感触は……憧れの膝枕⁉︎
え?
ここは天国なの?
「起きてる?寝てる?」
彼女はキョトンとしながら首を傾げて、おれの頬に触れる。
凄いスベスベしてる。
おれは恐る恐る答えた……。
「起きて、ます」
「そう。今日から君はワタシの、ね?」
「え?」
「よろしく」
そのままチュゥッと唇にキスされる。
ロイゼル・マックス。
名前も知らない天使にノックアウトされました。
*****
……………うわぉ。
流石の僕もルジア様の積極的な一面を見て、なんとも言えない顔になります。
ほら……一応、お祖母様の妹君ですからね?
ちょっと、縁が薄めな身内のイチャつきシーンってなんとも言えない感じになるじゃないですか。
というか、ロイゼル君、ヤバイくらいに顔真っ赤ですね。
「ありゃ落ちましたね」
「ルジア様ってちゃんと他人に興味あったんですね……」
シゥロとサリュ君は、二人を見ながら呟きます。
ちょっとロイゼル君がチョロ過ぎですけど、一目惚れという言葉もありますし。
まぁ、うん。
「ルーク様〜‼︎」
「シゥロ‼︎」
そんな時、黒水晶宮(ご存知の方もいるかもしれませんが、軍部の建物の名前)の方から歩いて来る二人の少女。
僕は一瞬でロイゼル君達のことを忘れ、彼女に駆け寄りました。
「ミーシェ‼︎」
ふわふわの空色のワンピースを着たミーシェはいつもと違って、その長い髪を上手く編み込んでまとめていて。
ふわりと微笑むその可愛さに、僕の頬が勝手に緩みます。
「ルーク様、ご機嫌よう。差し入れを持ってきたんです」
「こんにちは、愛しいミーシェ。今日のミーシェも可愛いですね?」
「………ありがとうございます」
恥ずかしそうに、はにかむミーシェ。
あぁ……妖艶なミーシェも多くなってきましたが、こうやって無垢な笑顔を見せてくれるミーシェも良いですね‼︎
これぞ、ギャップ萌え‼︎
「ククリ、わざわざすみません」
「構わないぞ‼︎代わりに感謝しろよ‼︎」
「じゃあ、キスしますね」
「そーいう感謝じゃない‼︎」
ギャーギャー言い合いながらも幸せそうなシゥロ&ククリカップル。
顔が真っ赤になっているロイゼル君と、ちょっと無表情(?)っぽそうながらも幸せそうなルジア様。
僕と、ミーシェ、サリュ君はそんな四人を見て、ほのぼのとした空気になりました。
「いやぁ……皆さん、仲睦まじく素晴らしいですねぇ……」
サリュ君は優しい笑顔で、中年のおっさんみたいなことを口にする。
いや、エルフだから実年齢と外見年齢が合わない可能性がありますけど………。
なんでしょうか、この感じ。
五感ならぬ第六感が騒めく感じ?
なんとなく、引っかかる気がする……。
これは……違和感?
「……………どうされましたか、ルーク様」
「………いえ……大丈夫ですよ、ミーシェ」
ミーシェが僕の様子がおかしいことに気づいて声をかけてくれますが、微笑みを返して誤魔化します。
すると、ミーシェはちょっと頬を膨らませてしまって。
「私、そんなに信用ないですか?」
…………なんて、言われてしまったらもう無理でしたね。
僕はサリュ君に聞こえないように、彼女の耳元に唇を寄せました。
「あのエルフの青年、サリュ・トゥーザというのですが……少し変な感じ?と言いますか……違和感を感じまして」
「…………あ。そんな方、いたんですね」
ミーシェは今気づいたと言わんばかりの顔で。
僕はちょっと目を見開く。
そんな彼女は恥ずかしそうに……手の甲を口元に添えました。
「その……ルーク様に会えたのが嬉しくて……他の方なんて、見えてなかったんです」
……………おぉぉぉぉう……ミーシェが可愛いぃぃぃぃ………。
僕は鼻血が出そうになり、慌てて手で押さえます。
きっと、今は顔が真っ赤だと思います。はい。
「ルジア様が連れてきたエルフですし大丈夫だと思いますが……取り敢えず、ミーシェも警戒をしていた方がいいかもしれません。気の所為だとは思いますけど、何かあってからでは遅いので」
「はい」
互いに頷きあい、ひとまずは昼食のために移動することにしました。
まぁ、流石に訓練場でご飯は食べれないので。
この人数ですから……中庭にピクニックシートをひいて、食べるのが一番ですね。
「皆さん、取り敢えず昼食のために移動しますよ」
「もうそんな時間?ワタシ、行く。またね」
「ふぁっ⁉︎」
ルジア様はロイゼル君の頬にもう一度キスをして、立ち去ります。
というか、ルジア様……自己紹介もせずにロイゼル君をぎゅーっと抱き締めたり、キスしたりしてるだけだったんですが……名前も知らないのにいいんですかね?
………他人に関心が薄かった弊害でしょうか?
そんな僕の心配をよそに、顔を真っ赤にして呆然と立ち尽くすロイゼル君。
僕が溜息を零すと、それに気づいたシゥロとククリが……彼のその背中を思いっきり蹴りました。
「うわっ⁉︎」
「顔を真っ赤にしてないでとっとと動いて下さい」
「本当はお前の分なんて用意したくなかったけどな」
「酷くね⁉︎ちょっとぐらい、余韻に浸ってもよくない⁉︎」
「「よくない(です)。早く動(いて下さい)け」」
シゥロが首根っこを掴み、無理やりこちらに引っ張ってきます。
まぁ……僕達はミーシェ可愛がり隊で、君はそんなミーシェに悪口を言った人ですからね。
シゥロとククリが厳しくて、過激な行動を取るのは仕方ありませんよ。
そこでやっと、ロイゼル君はサリュ君に気づいたようでして。
ピキッと勢いよく固まりました。
「ロイゼル君?」
僕が声をかけると、ロイゼル君はプルプルと震えながらサリュ君を指差す。
そして、恐る恐る聞きました。
「サリュ・トゥーザ?」
「え?あ、はい……サリュ・トゥーザと申します」
「なんで、乙女ゲームのシナリオの中でも後から出てくる攻略対象が……」
『え?』
その言葉に固まる一同。
しかし、一番初めに動き出したのはサリュ君でした。
「君、もしかして‼︎この世界のことを知ってるのかいっ⁉︎」
はい、二人目の転生者でした。
道理で違和感がある訳です。
エルフなのに傲慢じゃないし、ちょっと漂う中年感が凄かったですし。
「えっ⁉︎もしかして、あんた、転生者⁉︎」
「君もなのかっ……‼︎あぁ、ずっと話を聞きたかったんだ‼︎ボクはこの世界のことを全然知らなくてっ……」
「取り敢えず、落ち着いて下さい。ここじゃ目立ちますから、中庭に行きましょう」
僕のかけ声に、サリュ君は焦れたような顔をしながらも頷きます。
ふむ……ロイゼル君の反応と全然違うタイプの転生者ですね。
というか、なんですかね?この乙女ゲーム関連者ホイホイみたいな感じ。
まぁ、事情を話して協力してもらえれば……乙女ゲームのシナリオとまた乖離することになるから、丁度いいかもしれません。
取り敢えず……ナイスな人材は転生者な人材でした。




