表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/25

第10話 ナイスな人材ゲットです。







「ミーシェが、とんでもなく可愛い件について」





ある晴れた日の軍部の訓練場ーー。


顔面蒼白でこちらを遠巻きに見る軍人達と地面に身体を大の字にした死に体のロイゼル君を無視して、僕はそう銘打ちました。

僕と一緒にロイゼルを叩きのめしていたシゥロは、一瞬だけキョトンとし……納得したようにポンッと手を打ちました。


「わたしのククリが可愛い件について」


この言葉が、可愛い可愛い最愛の話をしようという僕達の合図で。

僕はそれを聞きつつ、両手を組みながら首を傾げました。


「どうして、僕のお姫様はあんなに可愛いんですかね?」

「ククリも可愛いですよ。素直にならないけど、たまに甘えるのがグッドです」

「ギャップ萌えってヤツですか?」

「ですね」


親指を立ててサムズアップするシゥロ。

あ、ちなみにミーシェとククリがいない僕達の会話は大体、こういう話ばかりです。

それだけ僕はミーシェに、シゥロはククリに首っ丈だと思って下さい。


そんな感じで惚気をするシゥロは、ニヤリと幼い見た目に似合わないワイルドな笑みを浮かべて……僕に聞いてきました。


「というか、早く大人になりたいと思っちゃいますよね?で、正々堂々と手を出してイチャラブ甘々ラーイフ」

「っっ‼︎思います‼︎すっごく思います‼︎ミーシェを僕にめろめろにさせて、僕でいっぱいにさせて、閉じ込めて、永遠に僕だけのミーシェにしたいと思いますもの‼︎永遠にイチャイチャしたい‼︎」

「…………いや、流石にわたしはそんなヤンデレ思考じゃありませんけどね?イチャイチャしたいというのは同意です」


僕とシゥロは互いに頷き、ガシッと握手をしました。

そんな瞬間、タイミングよくロイゼル君が意識を取り戻しました。


「うぅ……一体、何を……」

「最愛であるお姫様の話ですよ」

「………また惚気かよ……」

「文句あります?」

「…………砂糖吐きそうになる……」


そういえば……こうやって休憩時間によく話しているので、地味にロイゼル君も僕達の話を聞いているんですよね。

砂糖吐きそう……って、そんな惚気てないと思いますけど。

だって、ただただ事実を話してるに過ぎないんですから。



ミーシェと会うと、まずハグから始まって触れ合うようにキスをする。

そっから、手を繋いだまま一緒に散歩したりデートをしたり。

お膝抱っこして甘えてもらったり、膝枕をしてもらって甘えさせてもらったり。

ミーシェの可愛いケモミミをもふもふしたり、尻尾をもふもふしたり。

エッチなことはまだしませんけど、ミーシェの幼い可愛さと僅かに滲む妖艶さのハーモニーに理性の糸が断ち切られそうになりながら……婚約者ライフを送っているに過ぎないだけなのに……。



あんまりミーシェのことを話したくはないとは思うけど、それに反してこの幸せを誰かに話したい。



それは勿論、シゥロも同じで。

だから、こんな感じで話してるだけなんですけどね。

シゥロは苦虫を噛み潰したような顔をするロイゼル君を見て、「あぁ」と笑いました。


「ルーク様、これはアレです」

「なんですか?」

「ロイゼルには恋人がいませんから、独り身で寂しい思いをしてるんですよ(笑)」

「あぁ……ロイゼル君みたいなのを非リアって言うんでしたっけ?」

「間違ってはいないけど、それはそれで酷い‼︎」


ロイゼル君はゴロゴロと地面を転がります。

ふむ……まだ元気がありそうですね。

もう少し絞りますか。

僕が軽く拳を握りしめた瞬間……シゥロが「あ、待って下さい」とストップをかけました。


「どうしました?シゥロ」

「これからお嬢様とククリがお昼ご飯持ってきてくれるんですよ。流石に血塗れの汚い場面を見せるのは……」

「あぁ、じゃあ代わりに洗脳対策の精神攻撃にしときますね。精霊、殺さないように」

『はいはーい‼︎』


僕も父上達と同じように精霊達に自分の思考を読ませているので、彼らは少ない言葉で上手く精霊術を発動してくれます。

ロイゼル君は「きゅぅ……」と変な声を漏らして、気絶しました。


「なんか、見た目子供を虐めてるのはアウトっぽそうですよね」

「何言ってるんですか。ロイゼル君は見た目子供でも精神は大人ですよ?それに、僕達も子供です。所詮、子供の戯れ……問題ありませんよ」

「それもそうか」

「それに……ミーシェに悪役令嬢なんて言ってくれたんです。僕のミーシェの悪口を言って、まだ生きてるだけ有り難く思って欲しいくらいですよ」



俺のモノを傷つけようとしたんだ。


本当はスプラッタ映像にしてやりたいくらいなんだが………。



…………おっと、いけない。

ちょっと乱暴な僕が出てきちゃいそうになりましたね。

取り敢えず、そんなことをする暇があったらミーシェとイチャイチャする時間を確保した方がマシですし。

本当はこういう調教も面倒なんですけど、《精霊姫ヒロイン》&アミル姫対策のために……つまりは将来的なミーシェとのイチャラブ生活のための生贄を仕込んでいるようなモノですからね。

そこそこ強くて、そこそこ紳士で、そこそこ地位があって、そこそこイケメンであれば……ロイゼル君は優良物件になりますからね。

で……それに加えて、僕とミーシェがイチャイチャしていれば……僕よりも望みがありそうな、婚約者なし(フリー)のロイゼル君の方にアプローチをかけるだろうと。

ふふふっ……我ながら良い作戦です。

………まぁ、とにかく。

この調教は、必要経費・必要な労働ということで、潰すより利用した方がお得という訳です。



はかどってる?」



そんな時、ぬるっと現れ、地面に倒れるロイゼルくんの頬を突く人物に僕達は溜息を吐きます。

色素薄めの金髪に翡翠の瞳を持つエルフ……王宮精霊術師団所属の《華姫》ルジア・ククゥール。

父上の母君……僕のお祖母様の妹がいました。


「どうされました?ルジア様」

「最近、近衛騎士団の、息子と訓練してると聞いた。だから、これも混ぜてもらおうと思って」


そう言ってルジア様が転移させたのは、これまた同じく色素が薄いエルフの少年。

彼は、そこそこな高さ……つまり、空から落ちてきました。



「うわっ⁉︎」



少年はゴツンッ‼︎と痛い音を出しながら、地面にキスをします。

そのまま顔面を押さえてゴロゴロ、ゴロゴロ。

………取り敢えず、復活するまで放置ですね。

僕は首を傾げながら、ルジア様に聞きました。


「彼は?」

「最近、エルフの里からきた。名はサリュ。相手、してあげて」


ルジア様はちょいちょいとロイゼル君の頬を突き続けながら、そう言います。

…………というか、いや、あの別に?

このサリュ君を一緒に訓練させるのはいいんですけどね?

他人に興味がないルジア様がどうしてそんなにロイゼル君の頬を突いているのでしょうか?


「…………ルジア、様?」

「ねぇ、ルーク」

「あ、はい」

「この子、欲しい」

「「ぶふっ⁉︎」」


思わず噴き出す僕とシゥロ。

いや、だって仕方ないじゃないですか‼︎

ゴーイングマイウェイ、ハイパーマイペースなルジア様が他人に興味を示すところなんて、それこそ家族である父上にほんの僅かぐらいで。

つまり、この子が欲しいと所望するところなんて初めて見ましたよ⁉︎


「………あの……どういう意味で?」

「分からない。でも、ちょっと胸がドキドキ」

「「…………………」」


これ、完全に一目惚れってヤツじゃないですか?

エルフって長寿ですから、かなりの年の差になりますけど……。

いや、でも………。


「駄目?」

「いや……駄目と言うより、ロイゼル君は将来的に僕にちょっかいかける女避けに使おうかと……」

「女避け?」

「ミーシェにベタベタ甘々な僕の側に、そこそこ強くて、そこそこ顔がよくて、そこそこ紳士で、婚約者なしのフリーのロイゼル君を置いておけば……望みゼロそうな僕より、ロイゼル君の方に女性がアプローチしそうでしょう?」

「なら、それをサリュにすればいい。サリュの方が顔が良い」


確かに。

エルフは総じて顔が中性的に美しいです。

父上も、ルジア様も……それにサリュ君だって。

ロイゼル君とどっちが顔が綺麗かと言われれば、サリュ君に決まってます。


「分かりました。調教は続けますけど、将来的にロイゼル君はルジア様のモノにして下さい」

「やった」

「ただし、無理やりは駄目ですよ。ちゃんと本人の意思を確認するんです」

「……………?」


キョトンと首を傾げるルジア様に、僕は一抹の不安を感じます。

まぁ、他人に興味がなかった方ですからね。

いきなりは無理か……。


「取り敢えず、膝枕してあげて……目が覚めたら、笑いかけてあげると良いですよ。多分、それでロイゼルは惚れます」

「分かった」


シゥロの杜撰なアドバイスに僕は思いっきり顔を背けます。

いや、強ち間違いじゃなさそうなのが……余計にツボ。

まぁ、とにかく。

攻略対象のロイゼル君が、先にルジア様にめろめろになってくれれば、その時点で乙女ゲームのシナリオとはかなり離れますし。

最終的にミーシェの悪役令嬢シナリオ回避に繋がるはず。

頑張れ、ルジア様‼︎



そんな感じで、いそいそと膝枕をし始めたルジア様を見ていたら、やっとサリュ君が復活したらしいです。

ですが、サリュ君は現状が理解できず困惑しています。

まぁ、そうですよね。

僕はサリュ君の方を向き、笑いかけました。


「初めまして。僕はルーク・エクリュ。ルイン・エクリュの息子です」

「えっと……サリュ・トゥーザです。最近、エルフの里から参りました。よろしくお願いします」


ペコッと頭を下げるサリュ君。

それを見て、僕は目を瞬かせました。


「…………傲慢じゃないんですね?」


エルフは揃って自尊心プライド高めの高慢ちきです。

父上とかルジア様が珍しいだけで、本来ならここで「エルフである私からの挨拶、感謝してもらいたい‼︎」ぐらい言いそうなんですが……。

サリュ君は困ったように笑いながら、頬を掻きました。


「あはは……ボク、エルフらしくないとよく言われるので……すみません」

「いえいえ、傲慢なモノほど力に飲まれやすかったり、愚かだったりします。謙虚過ぎるのは駄目ですけど、君の性格は素晴らしいと思いますよ?」

「………ありがとうございます、ルーク様」


うむ。

確かにこれはロイゼル君より優良物件そうですね。





ナイスな人材ゲットです。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ